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出ちゃいましたPt.2-act.06

読み返してません。変かも
誕生日がいつだったか具体的に覚えてないorz

俺は女になった時、自分の部屋のクローゼットを見て、えらく衣装持ちだなと呆れたものだった。
男だった頃にはスーツを数着、適当に着回していただけだったというのに、“彼女”のクローゼットにはスーツだけでずらりと十数着並べられており、下はパンツやタイトなスカートとバリエーション豊か。シャツも白は勿論、薄いピンクやブルー、ストライプなどたくさん…しかも几帳面に収納されていた。
こんなに揃えてどうすんだ?…と呆れたのを確かに覚えている。
なのに、現在俺は着る服がない…と真剣に悩んでいる。
いや、性格に言うなら着る服ならあるのだ。
だが男の時と違って、女性となると季節感を気にしたり、同じ服を続けて着ていく事に抵抗があったりとどうにも衣装に不足が生じている。
まさかこんなことを思うようになるなんて。
「買いに行くか」
シャツを何枚かと下、それから靴。あと化粧水がそろそろ切れる。
仕方がない、面倒くさいという気持ちとともに、よしやるぞっと気力が沸いているのを感じて俺はこれが女性の心理かと妙に納得してしまった。
そうして自分の部屋にしてしまったアリスの空き部屋で出かける準備をしていると、部屋の扉がノックされた。
『火村~?』
「あぁ」
顔を出したアリスは寝ぼけ眼で俺を見て「出かけるん?」と聞いた。
朝の10時過ぎ。彼は明け方に布団に入ったはずだから、まだまだ眠い時間帯のはずだが…。
「君、今日は休みやなかった?」
「休みだよ、だから買い物に行く」
「どこに?」
聞かれてここからそう遠くないデパートの名をあげると、彼も行くといいだした。
「あそこの地下にあるパン屋さんのメロンパンが絶品やって、こないだテレビでいうてたんや!」
彼はそれで目が覚めたらしく、「待ってて!」と言うと準備のために部屋を出ていった。

そして二人で出かけることになったわけだが…
「アリス、お前、そのシャツ、何時買ったやつだよ」
「え?これか?えーっと、これは勤めてた時に買ったやつやから…」
女というやつは、自分だけでなく他人の、特には連れの服装まで気になるらしい。
男だった時は、アリスが高校時代に買ったジャージ着てようが、縮んだセーター着てようが、毛玉だらけのカーディガンを着てようが全く気にならなかったというのに…。
「お前も新しい服を買った方がいいぜ、アリス。数少ないファンに幻滅されるぞ」
「え?そんなひどいか?」
「ひどくはない」
むしろアリスは一般的な男性よりお洒落な方だと思う。しかし…
「だからといって、その服、もう何年着てるんだ。そろそろ新しいのにしろよ。有栖川先生はこないだも同じ服を着てた…なんて言われるぜ」
女の目は男が思っている以上に厳しい。
男だったころ、同じネクタイを2日続けて巻いていただけで揶揄するような視線を向けられた事を思い出す。
男なら“だからどうした”というようなものが、女になってから目につくようになってしまった。
「そやなぁ、うん、折角やし買うわ」
「そうしたほうがいいだろう」

アリスの運転でやって来たデパートは、不況の最中とはいえ客で溢れていた。
俺は時間を決めてあとは別々に買い物をしようと思っていたのだが、アリスがついていくと言ったので一緒に歩く事にした。
普通、女の買い物に付き合うのを男は嫌がるものだが、アリスはかなりたのしそうだ。
そして、
「うは、なんでこんなトコにリボンやねん、ありえへんわ」
「見てや、火村、あのヒョウ柄!うちのおかんに似合うと思わへん?」
「おー、デニムのミニスカート!な、火村、あんなん履かへん?君、足長いから絶対似合うわ」
よく喋る。
そして、
「うわー、おしゃれな生地やなぁ~、これかっこええわ、なぁ店員さん、これ新作?」
「お、見てや、火村。このデザイン!これは着る人を選ぶなぁ。さすがの君でも似合わへんっていうか、誰が似合うねんやろ?」
「この服、ええんやけどもうちょっと明るいピンクの方が好みやなぁ~」
本当に、呆れるほどよく喋る。
ついでに販売員も巻き込んで喋る。
どうせ女体化するなら、俺じゃなくてアリスがすればよかったのだ。
そうすればアリスは立派な大阪のおばちゃんになれたに違いない。
彼はのべつ幕なしにしゃべりまくり、あれはどうだ、これはどうだと販売員と一緒になって勧めてくる。
なんというコンボ攻撃だろう。
一度は必ず断るようにするのだが、俺も気に入るものも混じっていて、俺が気に留めた表情をすると波状攻撃がやってくる。
お陰で俺は余計なものを随分と買わされてしまった。
それでアリスの買い物の時にはその復讐をせねばと思ったのだが、俺は彼ほど口が上手いわけではなく、しかも彼のほうが趣味がいいときては完敗だった。
ふてくされながらデパートに入っている中華レストランで食事し、地下に下ってメロンパンを購入し、さて帰ろうかといった時「こっちや」とアリスが俺の手を引いた。
いい加減荷物も重いし(といっても半分以上はアリスが持っているが)帰りたい。
そうは思ったが、アリスがやけに楽しそうな顔をしているので黙ってついていく…と、なんと彼は宝飾店に入って俺を驚かせた。
ブランドものの黒いスーツをパリッ着て、髪をビシッと後ろにまとめた女が俺達にニッコリと微笑む。
「あ、アリス」
「ぷっ、君、何おびえてん」
「怯えるわけはないだろう!しかし…」
なんでこんなとこに。
困惑する俺に、「やって君、アクセサリー、あんま持ってへんやろ?」と言った。
それは確かで、俺は洋服や化粧品などは女になった時には一通り持っていたのだが、なぜかアクセサリーだけは持っていなかった。
女の俺は、アクセサリーには興味がないらしい。その程度の認識だったが、アリスの方はそれを気にしていたようだ。
「ほら、せっかくやし」
「だからってわざわざ宝飾店に入るか?」
今ならイミテーションなどで安いネックレスやブレスレットは色んな場所で売られているというのに。
わざわざなぜ宝飾店なのだ。
「やって君、もうすぐ誕生日やろ?俺からのプレゼントや。あ、おねぇさん、彼女に何か見繕ってくれる?」
「アリス?!」
これまで彼に誕生日を祝ってもらった事なら何度もある。
学生の頃なら、飲み代がプレゼントになったし、社会に出てからは少し値の張る専門書やネクタイピンをもらったことがある。
しかし、こういう事は今までになく、俺は戸惑いとともに妙に恥ずかしくてたまらなくなった。
「ちょ、ちょっと待て、アリス。いくら誕生日だからといって…というか、それなら、お前だって誕生日がすぐじゃないか」
「はは、確かにな、けど折角やし」
「そんな…俺はお前にそんなものを貰う謂れは…」
「うっさいなぁ、やるって言うんやから、ありがたくもろうたらええやん」
「いやしかし…」
「しかしもヘチマもないわい」
アリスは少し機嫌を損ねたように言った。
「誕生日や言うだけやない。君がこうなってしもたんは俺の責任かもしれんし…、それに君が来てから家事は殆ど任せきりやし、あとな、俺が単純に君に贈りたいと思うてるだけや、素直に受け取ってほしい」
それともまだ何かあるか?と言われ、俺は首を横に振った。そこまで言われて断るのは野暮だし、それでも気が咎めるなら俺からも彼に贈り物をすればいいのだ。
「よし、決まりやな」
アリスが笑顔を見せると、先程からこちらの様子を伺っていた店員が張り切って近づいてきた。
彼はにこやかに対応をし、それから彼女が席を外した隙にこちらを振り返り、
「といっても、あんまり高いものはやめてや」
と情けない笑みを見せた。
俺はもちろんだとうなずきながら計算高い目で彼を見返した。
アリスは俺の視線を受けてブルリと体を震わせたが、当然同情する気にはならなかった。

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