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君が為に嗚呼眠る 12

満足したといいつつ、他にネタもなかったので続けてみた。

さて、ギルドについた。
ギルドの建物はボアの襲撃で被害を受けたらしく、壁の一部が修理中ではあったが、業務は通常通りに行われているようで、いかにも冒険者といった姿をしたものたちで賑わっていた。
彼らの話題の中心は先日のボア襲撃と、グレート=ボアを打ち倒した勇者について。だが三人は自分達の事に気をとられており、その事には気づいていない。
そんな三人はまっすぐに進み、職員の座っているカウンターの前に揃って腰をおろした。
職員…猫耳の少女は、フランシスの美貌に驚いたように目を見張り、ついでルートヴィヒとロヴィーノに目を移し不思議そうに首を傾いだ。
「こんにちは、今日はどのようなご用ですか?」
「あー、冒険者ギルドへの登録とパーティとしての新規ギルドの開設を頼む」
ニッコリキラキラと微笑むフランシスに少女は飲まれたように一瞬動きを止め、それからわたわたと書類やファイルをとりだしテーブルに並べ出した。
「え、ええっと、では登録は三人でよろしいですか?」
「あぁ、三人じゃなく二人ね、俺…じゃなかった、私はもう済んでいるから。規約なんかの説明はいいわ。後で私がやっておくから」
「え、えー、はい。わかりました」
フランシスの美貌は同性にも十分通用するのだろう。少女は首まで真っ赤にしてうろたえている。
ロヴィーノとルートヴィヒは顔を見合わせ肩をすくめた。
「えっと、えっと、では登録には一人400リルド、初年度分の会費350リルドが…」
「あ、待ってくれ」
途中で口を挟んだのはルートヴィヒで、少女は戸惑ったように少年に目を合わせた。
「年会費の350リルドで受けられるサービスは最低限度だったはずだが?」
「あ、はい。簡単な怪我の治療や、依頼主との簡単なトラブルの補償がついてきます」
「できればもっと高額な会費を頼みたいのだが」
少年らしからぬ威圧感に少女は一旦たじろいだようだが、すぐに「でしたら、パーティプランはいかがでしょう」と職員らしくきれいな受け答えをした。
「個人ではなくそのパーティのメンバー全員を対象としたプランになります。三人様パーティギルドの場合ですと割高になりますが、これから人数が増える事などを、こちらの方がお得になる可能性が高いですよ」
「対応表はあるか?」
「はい、こちらになります」
金額と保証内容、クエスト失敗時の罰則、規約などをいちいち確認していくルートヴィヒ。そんな彼はフランシスやロヴィーノにとっては馴れたものだが、少女にとっては驚きであるらしく、鋭い質問を振ってくるルートヴィヒに彼女は最初はたじたじとしていたが、すぐに面接試験に挑む生徒のような態度で対応をしていった。
その間に…と、フランシスはロヴィーノに登録用紙を渡し欄を埋めるように言った。
「分かる範囲でいいから」
「あぁ」
エントリーシートには、名前や年齢性別といった欄の他、出身地に種族や得物、信仰する神、攻撃魔法が使えるか、またその属性は…など事細かに書く欄があった。
ロヴィーノが困惑しペンを止めると、「あぁ、そのへんは書かなくていいから」とフランシスは言った。
「そういうのは取り敢えずの登録データだし」
ゲームらしく冒険を進めていくと、必要に応じて勝手に書き換えられるシステムになっているらしい。そのフランシスは、勝手にルートヴィヒのエントリーシートを埋めている。
といっても、名前の欄を埋めただけで放り出したが。
「おい、そんなんでいいのかよ」
「あぁ、いいの、いいの。ルートヴィヒの場合は多分書いても無駄だし」
「無駄?」
「そ、前に言ったろ?ルートヴィヒはカンストチートキャラなんだよ、そういう最上級キャラってのはさ情報公開に制限が自動的にかかるんだよね」
「へぇ?」
よくわからないが、まぁいいと納得したところでちょうどルートヴィヒもプランが決まったらしい。
2人が空欄ばかりのエントリーシートを出すと、彼女はあっさりそれを受け取り、つぎに占いに使われる水晶のようなものを取り出した。
そして名刺サイズの透明なカードをその上に置く。
「ではまずロヴィーノさんの方から始めましょう。カードの上に手を置いて私がいいというまでのせておいてください。少しピリッ電気が走りますが心配ありませんよ」
さぁどうぞ。
と言われたはいいが、痛いのは嫌だ。
ロヴィーノがじっと水晶を睨んでいると、「俺からでいいか?」とルートヴィヒが声を上げた。
「え?はい、いいですけど…」
「では俺からやろう」
そういってルートヴィヒは水晶とカードの上に手を置いた。
その瞬間、パリッという小さな音共に水晶の中で紫色のプラズマが弾ける。
と、まもなく「はい、いいですよ」と猫耳の職員は言った。そしてルートヴィヒの手が離れるとカードを回収し、新しいカードを水晶へと載せる。
「痛かったか?」
ボソリとロヴィーノが聞くと、ルートヴィヒは「全く」と笑顔で首を横に振った。
「少しピリっとするだけだ。静電気ほども感じない」
「本当だろうな」
「あぁ、信用していい」
ロヴィーノは、ルートヴィヒの青い目をじっと見つめ、それから水晶にゆっくりと手を伸ばした。
そしてカードに触れた瞬間パリッという音とともに、今度は黄色味を帯びたプラズマが水晶の中で弾ける。ロヴィーノは一瞬手を引きそうになるが、なんとかこらえ…「はい、結構ですよ」という少女の声に急いで手を引いた。
「痛い!痛かったぞ!コノヤロウ!」
「そんなではなかっただろう」
「いいや!痛かった!」
「まぁまぁ、もう終わったんだし」
ルートヴィヒに噛み付くロヴィーノをフランシスがなだめ、少女の方に注意を向けさせた。
少女は一枚のカードを取ると、それを二枚に分けた。
ロヴィーノは気づいていなかったが、カードは二枚重ねられたものだったのだ。
少女はそのカードの片割れの一枚をテーブルにおき、もう片方をルートヴィヒに渡す。
そしてもう一組も二つに分けると、一つを手元に、もう一つをロヴィーノに渡した。
「そのカードを両手で挟んで持ってくださいね。そのカードは、魔法でできているのでそうしていると体内に取り込まれる仕組みになっています。もちろん人体に有害な事はひとつもありませんから安心してくださいね」
そう言われて、二人は両手でカードを挟むように持った。
「そのカードが、あなた方のデータを収集し、もう片方…このギルドで保存されているカードの方へと情報を発信する仕組みになっています」
それをつかって、彼らのデータベース上のステータスを更新するのは勿論、クエストの進捗などもギルドで把握できるようになるのだという。
「といってもとてもプライベートなものですから、職員が全てを知っているというわけではありません。ただし、罰則事項を犯した場合は、情報が開示されることを承知してください」
そんな説明を受けているうちに、はさんでいたカードの感触が消え、ロヴィーノがそっと手を開くとカードは跡形もなく消えていた。
「さて、これで冒険者としての登録は済みました。ギルドのシステム、クエストのフローなどは…」
「うん、こっちで説明しておくよ」
フランシスが請け負うと、彼女はコクリと大きく頷き、「では次にパーティギルドの開設に進みますね」と言った。

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