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バラ色の檻

不幸な美形とその親友
読み返しません。

俺の幼馴染み兼親友は小さな頃は本物の天使のようにあいらしく、中性的な美しさを保ったまま成長し、高校生になって突如として色気のある男前に進化した男の敵だ。
俺は昔から付き合いがあるから馴れたもんだが、そりゃもう誇張でなく老若男女がハッとして振り返る男前だ。
登校するだけでアイドル張りの黄色い声援はもちろん、下駄箱ではラブレターが雪崩を起こし、廊下でぶつかった相手が目をハートにし、バスケットで点を入れれば失神者が出る。いや、マジで。
モデルや芸能人へのスカウトは数知れず、本当に芸能人と間違ったのかそれとも確信犯なのかサインを求めてくるやつも多い。
顔もよけりゃ頭もいい。手足は長いしスポーツは万能といって差し支えない。性格もいいし悪いとこあげる方が難しいし、よしんば上げたところで『嫉妬おつwww』とか言われんのが関の山。
ほんと男の敵。
親友ポジの俺は何度その煽りを食らったかわからない(付き合ってた彼女が実は親友目当てだったとか、親友を妬んだ奴に因縁つけられたりだとか…。)
だがそれでも親友をやめないのは、それだけ奴に魅力があるから…でもあるし、近頃は親友の煽りの対応のおかげで心身ともに無駄に逞しくなり、あまり喧嘩を売られなくなったから…でもある。
だが一番の理由は、親友がその完璧さを補ってあまりある程に不幸だからだろう。
つまり見捨てられないのだ。あんまりにも不憫具合が酷すぎて。
どれだけ悲惨かと言うと軽く思いつくだけでも、幼稚園児時代からの誘拐が両手の指の数より多いこと、薬を盛られてレイプされそうになった数がこれまた両手の指の数より多いこと、ヤンデレと化したストーカーに刺されること三回、もらったプレゼントに口に出すのもおぞましいものが入っていたこと数知れず…などが挙げられる。
お陰で親友は、望めばハーレムどころか“世界の女は俺のもの”発言しても許される立場にありながら極度の女性恐怖症…ではなく、男にも数多襲われた経験から人間恐怖症に陥っている。(近頃は、寄ってくる生き物 …犬・猫等… も怖いらしい)
最初の頃はざまぁ~なんて思っていた俺だが、中学あたりからはマジに同情している。
だって奴が素のままに会話できる相手なんて、奴の両親と俺だけだぞ?あいつには兄が一人いるんだが、その兄にすら襲われかけて兄は勘当されてんだぜ?
きったねーおっさんに公園の茂みにひっぱり込まれそうになるんだぜ?
盗撮写真や婚姻届(あとは親友が欄を埋めるだけ)が毎日山ほど届くんだぜ?
ネットにファンサイト(際どい合成写真やおぞましい妄想小説なんかが掲載されてる)が知ってるだけで10サイトくらいあるんだぜ?
いや、同情すんなって方が無理。
恨まれるの承知で番犬化するのも無理ないって。ほんとに。

そんな俺の親友は、つい先程ちょっと俺が目を離した隙に痴女に襲われかけたらしく、今は俺のベッドで布団被っている。
ベッドを背もたれに座っている俺の手を布団の中に引き込み、それをギュウギュウ握りしめて。
その手が湿気っているのは…彼が泣いているからだ。
俺はため息をつきたくなるのを必死にこらえた。
身長が180近くあるでかいのがメソメソしていると思えば、げっそりするがそれが親友だと思うと許される気がするし、近ごろは本当に精神的に参っているから、ため息一つが決定的な何かになりかねないと思ったからだ。
あぁもう、本当にしかたのないやつ。
つかいい加減泣き止んでほしい…。
俺、今夜そのベッドで寝るんだけど…確実マットまでべちゃべちゃだよな…。
「リュウ…」
「んぁ?」
名前を呼ばれて投げやりに答えると、ギュウギュウと手を締め付けられた。痛い痛い、痛いからマジで。
「俺、も、もう学校行きたくない」
それは彼が小学生から言い続けている言葉だったりする。そのたびに俺は慰め、励まし、時に叱って折れそうな彼をセロハンテームやガムテープ、包帯に接着剤などを使って彼を奮い立たせてきたのだが…どうも今回はいつもと違うような気がした。
いつもは折れそうで折れなかった彼の気骨が…どうやら今回はポッキリと折れてしまったように感じたのだ。…俺がため息をつくまでもなく。
仕方ないやつだとかいいつつ…実際彼は本当によく頑張ってきたからな…。
前はもっと普通のやつだったのに近頃では極度のビビリでヘタレ、ついでに泣き虫。生まれたての赤ん坊よりもか弱い彼…だが、それを表立って見せてしまうと彼の貞操を虎視眈々と狙っている狼どもに美味しくいただかれてしまうと、そんじょそこらの庶民様は相手にしないぜオーラでもって孤高で気高い王様を演じてきた彼だが…どうやら限界が来たらしい。
高校生活もあと1年を切ったし…まぁよく持った方…だろうか。
いや、良く持ったと褒めるべきかもしれない。
なにせここまで命があるだけでも奇跡だ。学校もほとんど欠席がなくまじめに通ったし、ひきつりながらではあるがファンの処理も的確に行なってきた。恐ろしい誘拐犯やレイプ魔にも悠然とした態度を崩さず相手を説得し、半分くらいは自分の力だけで逃げて来たし(残りの半分は俺が処理してきた)、何よりこの年まで童貞と処女を守りきったというのがスゴイと思う。(ネットの妄想小説じゃ、彼はヤりまくりのヤられまくりだ。ちなみにその中で俺も時折被害者や加害者になっていたりする)
「限界か?」
あえて聞くと、彼はまたギュウギュウと俺の手を握りしめた。
返事はないが、そのとおりということだろう。
俺はこらえていたため息をついた。
それでビクリと彼が動くのがわかったが、もう限界ならば仕方がない。俺だってそろそろ限界を感じていたのだ。
いつ彼がポッキリいくか、時間の問題だったなんてこと気づいていたさ。
「そっか」
俺が言うと、また手が湿った気がした。今更…それは気にしないけれど。
「まぁ…仕方ないよな。お前はよくやったよ」
「リュウ…」
ぐずりと鼻をすする音。親友の手に閉じ込められている手を、ぎゅっと握り返してやるとまた新たに塩水が…。
うん。仕方がない。よくやった。
というわけで…俺は、彼に一つの提案をしたのだ。
つまり、

「お前、俺の囲われ者になってみる?」

と。

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