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猫は叱るよりも囲うべし 01

少し恋愛にはいってみようかと…思って章を分けたけどど…。
多分ほのぼののままだと思います。
読み返さない

その日、ドイツは仕事のついでにとイタリアの家に足を伸ばしていた。
手にはカフェで買った焼き菓子。
特に連絡はしていないが、こうやってふらっと足を運ぶことはよくあること。
彼が家にいるかどうかは半々くらいの確率だが、もし居なくても特には気にしない。
その時には持っていた菓子をメモとともに郵便受け、もしくは玄関ポーチのそばにとめてある自転車のカゴに入れて帰るだけだ。
だが…今日はその必要はなさそうである。
玄関ポーチにたち、左を向くと家の窓が開けられており中からカーテンが外に向かってひらひらとそよいでいるのが見えたからだ。
イタリアの家は、ドイツの家と同じくらいの敷地を持ちながら、その殆どを庭に当てており家自体はこじんまりとしていて小さい。だが、とてもあたたかみのある家で、誰もが住み心地がよさそうだと感じさせる家である。
ドイツは玄関先で一度足を止め、広い庭に目を向けた。
程よく手入れされ、そして程よく雑然とした庭は、きれいな季節の花とともに茄子やトマトといった野菜の苗も植えられており蝶がきままに踊っている。玄関からは見えないが、裏には温室もある。植えられている二本の木にはハンモックが吊るされており、時々イタリアはそこで昼寝をしている。
ドイツは犬を三頭も飼っているので庭にはほとんど手を入れていないのだが、できるならばイタリアの家のような暖かみのある庭が欲しいと思っていた。
彼は一時イタリアの家で目と心を和ませると、玄関のチャイムを鳴らした。
玄関チャイムもブザーのような無粋なものではなく、押すと中につけられた鐘がカラコロと心地よい音を奏でる。
『はぁ~い』
気の抜けた声が中から響くのに「俺だ、ドイツだ」と言うと扉はすぐに開きイタリアが笑顔を見せた。

「なんだ、日本も来ていたのか」
通された部屋に小柄な東洋人の姿を見つけたドイツは嬉しい驚きに目を細めた。
「はい、お久しぶりです、ドイツさん」
ペコリと頭を下げた日本は、仕事でちょうどイタリアを訪ねたついでであるらしい。
「時間がとれるかわかりませんでしたので、どちらにもご連絡はいたしておりませんでしたが…まさか二人ともに逢えるなんて…私はとても幸運ですね」
「もう堅苦しいなぁ」
可笑しそうにイタリアは笑い、二人に甘いカフェラテを勧め、ドイツも持ってきた菓子を二人に振る舞った。日本もフルーツを使った焼き菓子を土産として持ってきており、席は思いがけなく豪華になる。
そして三人はくつろいだ空気の中、おしゃべりを始めた。
日本とドイツだけならついついかたい話に流れがちだが、そこにイタリアが加わると会話の流れはどこにゆくが予想がつかない。
迷子の子犬を一週間保護した話から近頃イギリスで行われたオリンピックの話、かと思えば大戦中の訓練の話にサーカスの話題。
大戦中とは違い、今ではそれほど頻繁に顔を会わせる機会のない三人だが会話は途切れない。
と、日本が昨日はシチリアにも足を伸ばしたという話題を持ち出した時、イタリアが急に寂しげな顔をしたのに気付き、日本は驚いた。
「どうしたんですか?イタリア君」
「うん」
「元気がないな」
「うん」
イタリアはうつむき、両手でもったカップを遊びながら「実はね」と話始めた。
「うちの兄ちゃんの話なんだ」
「お兄さんというとロマーノ君ですね。そういえば今日は姿が見えませんね」
「うん。兄ちゃんは大体あんまり家にはいないんだけど、近頃は本当に帰ってこないんだ」
悲しげに言うイタリアの姿には、見ている方の胸がいたくなる。
日本は困惑しドイツの方を見ると、彼は彼で困惑したような顔をしていた。
「えっと、スペインさんの所にいらっしゃるんじゃないですか?」
日本がきくと、イタリアはふるふると首を横に振った。
「ううん。スペイン兄ちゃんのとこにも、オーストラリアさんのとこにも、フランス兄ちゃんのとこにもいないって」
うるるっと目を潤ませるイタリアに日本は焦った。
「上司の方は…」
「しらないって。聞いたら『あいつは何をしてるんだ。まぁいたところで大した役には立たんが、書類をホッチキスで止めるくらいなら出来るんだからちゃんと出勤するように言っとけ』って」
「それは…」
「兄ちゃん、どうしちゃったんだろう」
二人がしんみりとしていると、「いや、ちょっと待て二人とも」とドイツが声を上げ、二人は彼の方を見た。
「どうしたの?ドイツ」
「もしかして行方をご存知なんですか?」
「ヴェ!本当!」
顔を輝かせるイタリアに、ドイツは困惑した表情のまま落ち着けというように手を上げた。
「行方を知ってるも何も…。日本はとにかくイタリアは知らなかったのか?」
「ヴェ?なにが?」
「ロマーノ君、何処にいらっしゃるんですか?」
ドイツは二人を見比べ額に指を当てると言った。
「うちだ」
「「え!?」」
驚く二人。
ドイツは額に当てていた手を下ろしため息をつく。
「だから、ロマーノはうちにいるんだ」
「…え!えー!」
「…な、なんでですか!」
驚きに目を丸くする二人を見ながら「何故といわれても」とドイツは肩をすくめた。
「それはこちらが知りたい。だが、もうずいぶん前から入り浸っているぞ」
なんと言っていいのかわからずに口をパクパクと動かすイタリア。その気持ちは日本もよくわかった。
いうまでもないが、彼の兄であるロマーノと目の前に座るドイツとは非常に相性が悪かった。
ドイツは別にロマーノを嫌っているようではなかったが、しかしロマーノの方は彼を目の敵にしていた。
顔を合わせれば『ムキムキ野郎』『ジャガイモ野郎』とドイツを罵り、またトマトがあれば熟れすぎたものから投げつける始末。
その関係は大戦後も変わらず、世界会議ではドイツの悪口をいっぱいに書いた紙を飛行機にして飛ばしたり、ドイツのスーツにはいちいちケチをつけたりしていたロマーノが、何故よりによってその宿敵とも言える相手の家にいるのか。
イタリアにも日本にもさっぱり理解が出来なかった。
「兄ちゃんがあまりにも素直じゃないから、ドイツが閉じ込めたとかじゃないよね」
顔を青ざめさせぷるぷる震えるイタリアの言葉をドイツは「バカな」と一蹴する。
「そんなことをしてなんになる。あくまで本人の意思だ」
「ヴェ。…あ!じゃぁ、プロイセンが…」
「なにもしていない」
「え、でも…」
「確かにあの二人はあまり仲はよくないな」
プロイセンは仲良くしたい気がものすごくあるようだが、ロマーノはその気がゼロどころかマイナスだ。
「だが、近頃は兄さんも我慢を覚えてきてるし…、そのうち何とかなるだろう」
「なんとかって…」
なんだ。
そう聞きたいのはイタリアだけではなく日本も同じだ。
まるで当たり前にこれからも暮らしていくような態度に、イタリアは怒っていいいのか喜んでいいのか全くわからなかった。
日本も日本で、ドイツが本気で言っているのか、それともこれがドイツジョークというやつなのだろうかと探るように彼を見た…と…
「あの…」
日本はドイツの首元に大きなガーゼが当てられているのに気づき首をかしいだ。
「それ、どうしたんですか?」
首の。
そういって日本はドイツではなく自分の首のあたりを指さした。
日本の言葉にイタリアは「あ、ほんと」と言ってドイツの首元を見つめ、張本人は手で首元のガーゼに触れた。
そして
「あぁ、これか。これはこの間ロマーノに噛まれたんだ」
猫に引っ掻かれた。
そんなことを言うように軽い口調で爆弾を投げ込んだ。
今度こそ二人はその言葉に大きく口を開け何も言えなくなった。
ドイツはそんなふたりに気づかぬ様子でカフェラテを飲み、それから動かない二人を見て「どうしたんだ?」とさも不思議そうに首を傾いだ。

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