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勝利の女神が微笑む時

ヒムアリヒム
もう、どっちでもいいんじゃないかな。 エロとかどーせ書かないし。
駄文の上によみかえさんよ。

『あいつの何処がいいんだ?』

昔、アリスと付き合っていた女に聞いたことがある。
学食で、アリスが先輩に呼ばれて席をはずした時の事だ。
別に真剣にそんな事が知りたかった訳じゃない。好奇心でもない。
ただ黙っているのもなんだと思ったので聞いたのだ。
特に意味はなかった。
目の前の女は、俺に話しかけられるとは思っていなかったようで、ハッと驚いたように顔をあげ『優しいところかなぁ~』と甘えるように語尾を伸ばして言った。
優しい所。
よくある答えだ。
10人の女に同じ質問をしたなら、その半分くらいは同じ答えをするんじゃないかというほどにありふれた言葉。
彼女は照れたように、しかし誇らしげに笑った。
俺は何故だか、その顔がとても憎らしく感じた。
それこそ目の前の彼女をボクシングでならした右腕で殴り付けてやりたいと思うほどには。
しかしもちろん現実にはそんなことはしない。
俺は彼女を殴り付けない変わりに席を立った。
アリスが後でブーブー不平を言うだろうが、それを気にできる状態じゃなかった。
とにかく俺は腹をたてていたのだ。
無性に。
その意味もわからぬままに。



あれからいくつかの季節が通りすぎ、俺はいまだにアリスの側にいた。
卒業して一度は離れかけた俺たちだが、それを引き留めたのは俺だった。
アリスは自分が愛想のない友人をずっと引っ張り回していると勘違いしているようだがそれは違う。
俺が望んで彼の側にいるのだ。
俺がアリスを離さないのだ。
多分、この先もずっと。

「背中にゴボウでも生えとる?」

俺が背中をじっと見ているのに気づいてアリスがもそもそと身動ぎした。
「いや、ゴボウは生えてない」
真面目に答えると、彼は振り返ってははっと笑い、またテーブルの上のノートパソコンに向き直った。
なんだ。つまらん。
言葉に出さずに口をとがらせ、シガレットケースに手を伸ばした。
此処で吸っても彼は何も言わないだろう。
だけど近頃は吸うときにはベランダに出る事にしているから、少し気がとがめる。
肺にニコチンが足りない。
だが立ち上がるのも億劫だ。
天井付近をふらふらとさ迷った視線は、やはりアリスの背中で落ち着いた。
何故背中なんだ。
少し自分が哀れになる。
どうせなら…どうせなら…。

「昔を思い出した」
「ん?」
パチパチとキーを弾きながらアリスが返事をした。
「昔のお前の女の事だ」
俺が言うと一瞬キーの音が途切れた気がしたが、それが俺の言葉のせいか、それともただ漢字の変換に戸惑っただけなのかは判断がつかない。
「大学の時、一度話した」
「誰やろ」
「名前はしらない」
「それで?」
「お前のどこがいいんだって聞いたんだ」
またキーのリズムが乱れた。
俺はじっとアリスの背中を見つめた。
あの頃よりも少し広くなった肩。厚みを持った背中。
「その女は、優しい所と答えた」
ふふっと笑う気配。
「俺は頭にきたから、黙って席を立った」
アリスは何も言わなかった。
しばらく待ったが、何も言わなかった。
俺はなんだかとてもむなしい気持ちになった。
俺は、何かをアリスに期待して、そして裏切られたのだ。
いや、裏切られたというのは言い過ぎだろう。
俺が勝手に期待して、勝手に裏切られた気持ちになっただけだ。
ベランダに行こう。
そう思ってアリスの背中から目をそらした時、「学食」とアリスがぽつんと言った。
「学食やろ」
いつの間にかキーの音が止まっていた。
「戻ってみたら君はおらんし、彼女は機嫌悪いし。大変やったわ」
「よく覚えているな」
腰を半分浮かせた体勢で聞くと、彼は半分腰を上げて「まぁ」と肩越しに振り返っていった。
そしてすぐにノートパソコンに向き直り「あれで色々と気づかされたからなぁ」と意味ありげにいう。
それを聞いた俺は、きっと鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしていたにちがいない。
色々気付かされた?
それはこちらの台詞のはずだった。
俺こそがあの事で色んな事に気付かされたのだ。
苛立ちの意味やアリスとの関係、俺が望むものについて。
ではアリスは何に気づいたというのだろう。
俺は浮かしていた腰をソファに戻すと、そっと唇を指でなぞった。
ヒントは、あの学食の件のあとアリスがすぐに女と別れたあたりにありそうだった。

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