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君が為に嗚呼眠る 07

続かないと言いつつ、ちょっと書きたくなったので続けてみた。
迷ったけど…やっぱりちょっと余計なエピソードだった気がする。
読み返してないです

キャーッ!

絹を裂くような甲高い女の悲鳴に、眠っていたロヴィーノはハッと目を覚まし顔をあげた。するととぼけたような顔をしたフランシスと目が合う。
どうやら彼も居眠りをしていてちょうど目を覚ました所らしい。
「今のは?」
「わからない」
二人が耳をすますと、外から人々の騒ぐ声が聞こえてきた。
言葉としてはわからないが、悲鳴や怒号が飛び交っている。
と、寝室に引っ込んでいたルートヴィヒがやってきて窓に飛び付いた。ルートヴィヒの髪が一房ぴょんと跳ねていたのはご愛嬌だ。
二人もまた立ち上がると、ルートヴィヒを挟む形でに窓から通りを見下ろした。
通りでは人々が窓から見て左手の方に我先にと走っているのが見える。若い男や、赤ん坊を抱えた若い女、年寄りを背負った男、荷車を引いているもの…皆必死に走りながら時折背後を振り返っている。
「なんだ?」
怪訝な顔をするロヴィーノに「見ろ!」とルートヴィヒが声を上げ、人々が走る先とは逆の方を指差した。するとその先…200メートルほど先で赤い土煙がもうもうと上がっているのが見えた。
「あっちは門の方向だな」
「モンスターの襲撃か?」
「…いや…」
ルートヴィヒは渋い顔をし、一つ首を横に振る。
「そんなはずはないんだが…」
その次の瞬間、一際大きな悲鳴が上がったかと思うと、逃げ惑う人々を追って牛ほども大きさのある猪が四足で走るのが見えた。
それは三人があっと言う間もなく人々に追い付くと、人々を跳ね上げ、薙ぎ払い、押し潰し、そして視界から消えて走り抜てしまう。
まるで暴走した自動車のようだ。
ぽーんと高くに放り投げられた人が、しばしの空中遊泳ののちぐしゃりと地面に叩きつけられる。ロヴィーノはその光景を見て、顔を真っ青にして体を震わせた。
「なんてこった」
フランシスが呻く。
街のあちこちから緊急事態を知らせる鐘がカンカンと鳴らされ、ジャイアント=ボア(先ほどのモンスター)討伐の緊急クエストが発令されたと拡声器から男が怒鳴っているのが聞こえた。
「どうする」
フランシスが聞くと、「行ってくる」とルートヴィヒは憮然として言った。

 ※

「門だ!門を閉めろ!」
「ケーニッヒ!門だ!」
「無理だ!今閉めても破られるのが落ちだ!」
「魔術師はどうしたのよ!」
「人手が足りない!」
「おい!そっちにいくな!やられるぞ!」
「誰か!こっちに手を貸してくれ!」

場は混乱を極めていた。
あちこちで冒険者たちが散発的に戦闘を開始しているようだが、あまり芳しい状況ではない。と、いうのは何もジャイアント=ボアが強敵だからというのが理由ではない。
ジャイアント=ボアは大きさも力もあるが、弱点が目と目の間にある紅玉と分かりやすく、中級ランクの冒険者なら軽く狩れる相手だ。
しかしそれでも苦戦を強いられているのは、不意討ちで戦う体勢が整っていなかったこと、ボアの数の多さに加え、完全にジャイアント=ボアが理性を失っている事が大きい。
「一体なんだってんだ!」
「どっかのあほが子供のボアに手を出したにちがいねぇ!」
「くそ!だれだ!そのアホは!」
「う、うわぁぁあぁぁあ!」
「な、おい!どうした!」
「あれ…あれを見て!!!」
「グ!グレート、ボアだ!!」
「なに!!」
門の近くて街に入ろうとするモンスターたちを片付けていた冒険者たちは一斉に門の向こうに目を向け、驚きに顎を落とした。
グレート=ボア。
その名通り、ジャイアント=ボアよりもずっと大きいボアの王だ。
高さは三階建ての建物ほどもありジャイアント=ボアの比ではない。
弱点の紅玉も、巨大な頭のあちこちに複数散らばっており、上級の冒険者達ですら手こずるような大物だ。
「なんでグレート=ボアまで…ッ!」
「おい!街の中に入ったジャイアント=ボアは後回しだ!冒険者をこっちに集めろ!」
「む、無理よ!間に合わないわ!」
「に、逃げるか?」
「ばか野郎!てめーにゃ冒険者のプライドはねぇのか!」
「だったら…お、おい!」
見る間に近づいてくるグレート=ボア。
それを愕然と見ているしかできなかった冒険者たちの横をするりと抜けて前に出た小柄な影。
「なにやってる!坊主!さがれ!」
「危ないぞ!遊びじゃないんだ!」
男たちをうるさそうに振り返ったのは、まだ小柄な少年。そう、ルートヴィヒだ。
彼は一同を見渡すと、巨大な戦斧を持った男に目を止めると「それを貸してくれ」と言った。
男はなにを言われたのかきょとんとし、ついで馬鹿にされたと思ったのか顔を赤くして怒った。
「ばか野郎!これはお前みたいなガキが扱える代物じゃねぇ!おとなしくさがれ!」
「見た目で人を判断するな。さっさとそいつを寄越せ」
「貴様ッ!!!ガキのくせにッ!」
「ベルガス!仲間同士で争っている場合か!落ち着け!!」
「しかし!!!あんなガキに好き勝手言われて…!」
「落ち着け!あいつは、おそらく魔族なんだろう」
男を引き止めた男は言って、ちらとルートヴィヒを見る。
見た目は普通の子ども。だが、冒険で腕をならしたその男はルートヴィヒの落ち着いた態度はただものではない。
魔族は見た目がいくら子どもでも、弱そうでも油断は出来ない種族だ。
子供のなりをしながら、実は1000年以上を生きる者だって珍しくはない。
男の言葉にルートヴィヒは不快そうに顔を歪めたが、後ろを振り返りグレート=ボアがもうすぐそこまで近づいているのに気づくと、「早く寄越せ!」と手を伸ばした。
男はそれを了解し、未だ憤っているベルガスから戦斧を奪うとルートヴィヒに投げ渡した。
普通の男でも持つのに苦労する巨大な戦斧。
柄の部分を入れれば長さは160センチを超え、重さは60キロ以上ある。それをルートヴィヒは軽々と片手で受け取り構えた。
冒険者たちにどよめきが走るが、今はそれに圧倒されている場合ではない。
冒険者たちはすぐに立ち直ると、ルートヴィヒが突破された時の事を考え戦闘態勢を整える。
「ぼさっとしてんな!皆!来るぞ!
「いいか、足だ!足を狙え!いくらあのデカブツでも足が動かなやこっちのもんだ!」
「弓や魔法を使える奴は弱点を狙え!」
「突破されれば街は半壊どころじゃすまないわよ!」
ブギィイイイイィィィィイイ!!!
グレート=ボアが怒りの声を上げ、わずかに頭を引くと何本もの生えた角を彼らに向ける。
「来る!!!」
誰もが覚悟を決めた次の瞬間…

ドオオオオオオォオオオオォオン!!!!

特大の雷が1メートル先に落ちたようなものすごい音とともに土煙が舞い上がり、ゴォツと吹いた。突然の突風。戦うどころではない。魔術を嗜む冒険者達は慌てて防壁を張ろうとするが間に合わず、他の冒険者たちと同様手で目をかばいながら、グレート=ボアの突貫を避ける為に動く。
そしてしばらく。
妙に静かだった。
人々の騒ぎ声も、ボアたちの声も何も聞こえない。
示し合わせたかのような静寂。
冒険者達は何が起こったのかともうもうと立ち上る土煙の中で困惑した。
「なんだ、何が起こった?」
「雷?」
「グレート=ボアは?!」
冒険者たちは恐る恐る顔を上げ、そして見た。
あのグレート=ボアが、消えゆく砂塵の中で真っ二つに裂かれ、その断面を見せるように倒れているのを。そしてその姿で尚、走ろうと足を動かしているのを。
鼻の先から尻尾の先まで完全に二つに裂かれたピンク色の断面は、生きたままに筋肉を震わせている。
いまだに死を知らぬグレート=ボアとその身体。それは唖然としていた冒険者の一人が悲鳴を上げた事により均衡を崩し、赤い飛沫を噴水のごとく空に巻き上げた。

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