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いらない親切

学生 火村とアリス ほのぼの日常

アリスが図書館の日本の小説・エッセイのところで立ち止まり、綺麗に並んだ本を睨み付けていた。
よほど気にくわない本があるのか、それとも読みたかった本が抜けていたのか。
しばらく火村は怒りに震えているようにも見えるアリスの背中を見つめといたが、そっと唇を指でなぞるとすぐに小さく口角を上げた。

「随分気が早いことだな」

火村が声を掛けると、アリスはびくんと肩を震わせ、ばつが悪そうな顔で振り返った。
「みとったん」
決まり悪そうに頭を掻く。
「あぁ」
「なんや君、いまの時間は授業やなかったか?」
「抜き打ちの試験だ。さっさと終わらせて出てきたよ。それより俺の言葉は無視か?」
「…君、意地が悪いわ」
唸るアリスに火村は軽く肩をすくめた。
「やけに忌々しそうだったからな。今に本の並び替えでもやらかすかと思って」
「あほぅ、さすがにそこまではせぇへんわ」
そういいつつ、アリスはまた先ほど睨んでいた本棚を見た。
本棚の一番下の列。丁度作家の“有川”と“有吉”のあたりを。
「…いや、やっぱり」
「ばかだろう、お前」
ポカリとアリスの頭を叩き、火村は呆れた。
「いや、しかしな、火村。並べられる位置というんは、案外馬鹿にできひんで。いくらええ作品でも、人の目に入らんかったら手にもとってもらわれへん。特に一番下は最悪や。目のえぇ人ならえぇけど、普通ちゃんと題名と作者を読んでもらうには腰を屈めてもらわなあかん。これはほんまに痛い。わかるか?」
真剣に語るアリス。
火村は「まぁそれは正しいな」とアリスの意見を認めた上で、「しかし、それはまず本棚に著書が並ぶようになってから言ってくれ」と言った。
アリスはその言葉に一瞬きょとんとした顔をし、それからカッと頬を朱に染め、最後にまた本棚の一番下の欄を睨んだ。
「それに心配しなくても、司書の人たちは一年に一度くらいは本棚の並び方を少しずつずらしてるんだよ」
どの本にも平等に人の目が触れるように。
アリスは火村の言葉にうぅっと唸り、「あぁもう!今日の昼は君のおごりやで!」と全く筋の通らぬことを言った。

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