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君が為に嗚呼眠る 05

続かないと言いつつ、ちょっと書きたくなったので続けてみた。
読み返してないです

改めてロヴィーノから外の様子を聞いたルートヴィヒは難しい顔をして黙り込んでしまった。
「せめてどんなコードが吐き出され、何が実行されたかわかればいいんだが…いや、わかったとしてもこちらでやれる事は限られているか…」
眉間に小さな皺を作って唸るルートヴィヒ。
フランシスが幼き日のルートヴィヒを再現したという彼の姿は、確かにルートヴィヒの面影がある。
しかし普段見慣れた彼よりもずっと小さく微弱な彼は、そうやって難しい顔をしたところで…
「な?超かわいいだろ?」
「……」
フランシスの言う通り。
子供がせいっぱい背伸びして大人の真似をしているといった風で、なんとなく微笑ましい。
「今でこそこいつ、ガチガチムキムキしてるけど、子供の時はそりゃーかわいかったんだぜ~。幼児だった頃なんかこのお兄さんと張ったね!特に幼稚園でのお遊戯で天使の役をやった時なんて…「フランシス!」」
「人が真剣に話しているときに茶化すな!」
「はぁい」
怒鳴られてもフランシスがニヨニヨしているのは、声変わりをしていない高い声で怒られたところで全く怖くないからだろう。普段ならすくみ上がっている所なのに…。
ロヴィーノは二人を交互にみつめ、はぁとため息をついた。
「っつか、お前らの格好がふざけすぎてて事態の深刻さを忘れるぞ、コノヤロウ」
そしてボソッと呟かれた言葉にルートヴィヒはウッと詰まり、フランシスはニヨニヨしながら肩をすくめた。
「くそ…フランシスなんかにデザインを任せなければ…」
「なーんだよ、チェックだけだからどんな姿でも構わん…って言ったのはお前だろ?」
「だからと言って、まさかこんな姿をさせられるとは思わないだろう!」
「いいじゃん、可愛いんだし。本田が言ってたぜ、可愛いは正義だって」
「くっ!」
言い負かされる形でだまりこむルートヴィヒ。
ロヴィーノはもう一度ため息をつき、「で、どうすんだよ」と聞いた。
「救助待ちって事でいいのか?」
「む…そうだな」
腕を組み難しい顔で頷く姿は、元のルートヴィヒにはしっくりとくるが、“紅顔の美少年”には似合わない。
アンバランス過ぎて愛嬌がある。
それを見てフランシスが「キュン死するぅ!」と叫ぶ横で、ロヴィーノは脱力してカクッと頭を下げた。



とりあえず三人はギルドから出て宿をとることにした。
ギルドから出たロヴィーノは左右を見渡し、驚いたように目を見開いた。
「すげ」
そこはまるきり中世のヨーロッパとファンタジーの世界が融合したような町が広がっていた。
石造りの三階建ての建物や、煉瓦でできた四角い建物。小さな窓とそこに飾られた花。細い路地。遠くに見える時計塔。石畳。空を飛ぶ鳩。
通りに敷物を敷きガラクタのようなものを売る大きなネズミのような人(?)、荷車を押す人、長い棒の先に紙を張り付けたものを掲げ声を張り上げる蜥蜴人間、立ち止まって話をする猫耳にウサギ耳。
喧騒、荷馬車がゆく音、馬のいななき、どこからか漂ってくるパンの匂い…。
「すごい、本当に本物みたいだ」
ロヴィーノは素直に感動したが、少し下から「本当だな」と無感動に言われ彼は少しむっとした。
「なんだよ、お前が作ったゲームだろう?」
褒めているのだから素直に喜べとブチブチ言うと、ルートヴィヒは相変わらずの難しい顔(可愛い顔ともいう)で小さく首を振った。
「確かに俺が…いや、俺達のチームがプログラムしていったゲームではあるが、しかしここまででは無かったはずだ。お前も知っているだろう?」
そう話を振られたのはフランシスで、今は絶世の美女になっている彼女は同意するように頷いた。
「確かにね。俺は現行のゲームもちょこちょこやってるし、もちろんこの新しいバージョンもテストで何回かやってるけど…ここまでリアルじゃなかったよ」
「あぁ。ここまでリアルに再現することなんて今の技術じゃ到底ムリだ。脳の働きだって全てが解明されているわけではないし…」
「もちろん実際のゲームだって、ちゃんと違和感なく動けるしものの感触とか匂いとか感じる事はできたけどさ、どこかに自分は今マシンに横になってるなって感じがわかってたんだよなぁ…」
それが全くない。
怪訝な顔をするフランシスにルートヴィヒは頷き、「あの宿にしよう」と少し離れた建物を指して言った。
「…それに先ほど少し試してみたんだが、NPCたちの様子もおかしい」
「あ、それは俺も思った」
NPCとはノンプレイヤーキャラクターの事。つまり、普通のRPGで言う所の宿屋の親父や、道具屋の販売員、町でいうなら「ここは○○の町です」なんてこと繰り返すキャラクターのことだ。
それが妙に人間臭いとルートヴィヒは言った。
「一応、ゲームでもネットからあらゆるHPやブログ、ソーシャルネットから言葉を集めてキャラクタそれぞれに個性を持たせ、簡単なAIを組んではいたが…ここまでじゃなかったはずだ。それがまるで本当に生きた者であるかのような…」
渋い顔をしながらルートヴィヒは率先して宿の中に入った。
中は1階が食堂と受付になっており、2階・3階が宿泊施設になっているようだった。
ルートヴィヒはつかつかと受付に歩き、それからフランシスを振り返った。
「俺はまだ子どもだからな」
そういってフランシスに受付を任せるとロヴィーノのそばに立った。
フランシスが受付をしている間、ルートヴィヒは居心地悪そうに下を向いていたが、やがて決心したように顔をあげるとロヴィーノに「すまなかった」と謝った。
「随分待っただろう」
ロヴィーノはルートヴィヒの言いたい事に気づき、唇をきゅっと噛み締めた。
「どうしてもログアウト出来ないと気づいてから、ずっと気にかけていた。…まさかお前が追いかけてくるとは思わなかったが…。だが、あえて嬉しい」
少年の姿になったルートヴィヒがはにかむと「…うるせぇよ」と唸るように言ってロヴィーノはそっぽを向いた。
だがそれが照れ隠しと知っているルートヴィヒは、小さくなった手をロヴィーノの握りしめられた手にそっと重ねた。
手は…振り払われなかった。

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