スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

神さまのいない街角で

DSプレイ中
セシギルってよくね!?って思ったりして書いた。
ビッチギルとか見たい。 きわどい部分あり、注意。
よみかえさん

吟遊詩人といえば響きはいいが、歌をうたい物語を語るだけで生活をしているものは少ない。
酒場などで専属で雇ってもらっている場合は別だが、旅をする吟遊詩人となればよっぽど名が売れていなければそれだけで食べていくのはかなり大変だ。
旅の費用はもちろん、新しい歌や物語を仕入れるお金、楽器の維持費等なかなかに出費がかさむ。
そんなわけで吟遊詩人たちは副業を持っているのが普通だ。
あるものは簡単な薬の調合をしたり、あるものは旅の途中で仕入れたものを売ったり、占いが出来るものもいる。そして中でも特に容姿の良い者は……。

 *

他の国ではどうかしらないが、バロンにおいて“美しい吟遊詩人”といえば男娼を指す隠語だ。(ちなみに娼婦の場合は“夜の踊り子”という言葉が用いられる)
貴族たちは特に恥じらうでもなく“美しい吟遊詩人”を邸宅に住まわせているのが普通だし、夜会などでご婦人がパートナーとして“美しい吟遊詩人”を連れて歩くという姿もまま見られる。
一般的ではないにしろ男色を高貴な趣味として嗜むものも多く、男に飼われている“美しい吟遊詩人”も数多くいる。

ギルバートはダムシアンの王子であるし資金も充実していたはずだから、もちろん“そう”ではないだろう。
しかしセシルとしてはどうしても彼を見るとき“美しい吟遊詩人”というものが頭をちらついて仕方がない。
バロンにいた時、彼はしばしば貴族たちにつれられた“美しい吟遊詩人”を目にしたことがあった。
彼らはいずれも10代半ばから20代半ばくらいと若く、女性のように美しくたおやかだった。
そこらの礼状よりもずっと白い肌、剣など持ったこともないような細い腕、そして紅を引いたような赤い唇。男女を誘い慣れた色気のある眼差し。
騎士の中には本気で“美しい吟遊詩人”に熱を上げるものもいたし、一夜の恋にと“美しい吟遊詩人”を誘い出したり、金で買ったりするものもいた。
セシルは彼らに心を惹かれたことさえなかったが、何度か“美しい吟遊詩人”に声をかけられたことはあった。
誰もがやはりとても美しく彼らに誘われた時には …暗黒騎士ということであまり女性から誘われた経験のないセシルは… 断るのにかなり苦心した覚えがある。
だがそのいずれも…ギルバートと比べれば霞んで見える。
美しさだけでいうならばギルバートと張る者もいるだろう。
しかし本物の王族にしか持つことの出来ない高貴な雰囲気がその追随を許さない。
もし彼が吟遊詩人としてふらりとバロンに立ち寄ったならば、さぞかし…
「失礼な事を考えているな…」
そこまで考えて頭をふると、「どうかしたのかい?」と声をかけられセシルは内心ひどく驚いて振り返った。
「ごめん。なかなか帰ってこないからどうしたのかと思って」
砂漠に結界を施して張ったテント。見回りに出たセシルがいつまでも戻ってこないのを心配してくれたらしい。
セシルは心配をかけたことを詫び、ギルバートからそっと視線を外した。
「リディアは?」
「すっかり夢の中。横になったと思ったらもう眠っていたよ。やっぱりまだ子どもだね」
「あぁ、無理をさせないように気をつけているつもりなんだが…」
「しかたがないよ。昼間の砂漠は立っているだけでも体力を奪うから」
彼はそういうと、バオバブに似た砂漠に立つ一見枯れ木のような木のそばに座るセシルの隣に腰を下ろした。
セシルは先程やましい事を考えたこともあって居心地が悪い。
黙り込んだセシルをギルバートが心配そうに伺う。
「やっぱり、何かあったの?」
「…いや、なんでもないんだ」
顔を伏せたまま視線を避けるセシルにギルバートは怪訝な顔をした。
これでなんでもないわけがない。
「セシル?」
「本当に、大丈夫だから」
覗きこんだセシルの横顔が、月明かりの下赤く染まって見えギルバートは驚いた。
セシルはそんなギルバートの様子に気づき、ますますいたたまれなくなった。
なにか適当ないいわけがあればいいのだが、とっさには何も出てこない。だからと言って本当の事…バロンには“美しい吟遊詩人”という言葉には男娼という意味があって…なんてますます言えるわけがない。
あぁ、本当にごめん。ギルバート。
心の中で謝罪の言葉を呟いたとき「もしかして」とギルバートが呟き、セシルはギクリと肩をこわばらせた。
「“吟遊詩人”のことを気にしてる?」
答えられないセシルにギルバートはくすりと笑った。
「旅をしている時に、馬車で一緒だった人から“もしかしてバロンからやってきたのか?”って何度か聞かれたことがあってさ」
クスクスと笑うギルバートにセシルはどう反応していいものかわからない。
「ええっと、なんだっけ。そう、美しい吟遊詩人だ」
「あの…ギルバート、僕は…」
「そんなに気を使わなくても大丈夫だよ。バロンだけじゃなくて、他の国でも多かれ少なかれそういうことはあるんだから」
「…そう、なのか?」
「うん。だから別に気を悪くしたりはしないよ」
「いや、そうじゃなくて僕は……ごめん」
「まじめだね」
うなだれてセシルが謝るとギルバートはまたクスクスと笑った。
「これでも旅をしているときには色々と下品なことを言われたり、あからさまな誘いを受けたりしてたんだけど」
「それなら尚更謝らなくては…。すまない。不快な思いをさせた」
「あぁ、そうじゃなくて…気にしないでってことなんだけど」
それでも尚セシルは謝ろうとしたが、その言葉を途中で飲み込みコクリと頷いた。
「ありがとう、ギルバート」
そして顔を上げたセシルは、思ったよりもずっと近くにあったギルバートの顔にハッと動きを止めた。
これまでも綺麗だとは思っていたが、しかし意識したことはなかった。
だが、こんなに間近、月の下、先ほどの話の直後とくれば意識せずにはいられない。
カァッと顔を赤くするセシル。それを間近でみたギルバートは目を丸くし、それから年下の…いつもはパーティの戦闘に立って禍々しい剣を振るっている男の以外な純朴さにざわっと胸が騒ぐのを感じた。
彼は曖昧に、人に体を買われたことはないと否定したが、しかし実際にはそうではない。
酔わされて無理矢理に関係を結ばされた時を入れ、いくつか“美しい吟遊詩人”としての経験があった。
もちろんアンナという人ができてからはそんなことは一切なかったのだが…
この時、ギルバートはふいにセシルがとても愛おしく感じられ戸惑っていた。
その感情はたった一人で旅をしていた時に時折訪れていたものに酷似していた。
そういう時ギルバートはいけないと思いつつ、優しい手を差し伸べられるとついついそれに甘えてしまったものだ。
その時のそれと、セシルに感じている今の感情は別のものである。…別のものではあるが、しかし…

「ギルバート…?」

セシルはギルバートの様子が突然ガラリと変わったことに気づき驚いた。
先ほどから変わらず今もギルバートはとても美しい顔をしていたが、雰囲気が違う。
潤んだ目でセシルを見つめるギルバートは、セシルが思わず唾をゴクリと飲み込む程に妖艶だった。
ずいと体を近づけるギルバート。
セシルは慌てて後退ろうとしたが、それよりも早くギルバートの両手が伸びセシルの首にかかった。
「ちょっと…まって、どうしたの?」
平静を繕うとするセシルだが、それは今のギルバートの前にはなんとも無力だった。
「セシル」
とろけるような声で名を呼ばれ、セシルは強張りながらもギルバートと目を合わせる。
それが悪手であったと気づいた時にはもう遅い。
セシルはまるで魂を握られたかのようにギルバートの顔をただ見つめた。
ゆっくりと顔を近づけてくるギルバート。
それが何を意味するものかわかっていても、セシルは動くことは出来なかった。
「いい…よね?」
鼻先が触れるほどの距離でギルバートがつぶやくと、セシルは自らその最期の距離を詰め答えとした。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。