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ピエタ 10

シバ=主人公(一応、多分、きっと)
シュウジ=無口で大柄、喧嘩半端ない  クロ=切れ長の美形、頭のネジが緩い
ヒロ=美人系、割りとまとも?  カナ=バカナ シュウジが好き
ユウキ=新人 チャラい。  ナンゴウ=赤毛 不良。
ミヒカ=大学生でバンドリーダー  間宮=ヒロのバイト先の先輩

ライブは最高に盛り上がった。
ミヒカさんという人は、色々とスゴい人なんだが、観客を煽るのもまた上手い。
俺たちを見に来てくれた人も、初見の人も、そして他のバンドが目当てだった人も一気に引き込んで夢中にさせる魅力を持っている。
もちろんそれには演奏をしている俺たちだって引きずられる。
練習の時よりもずっとずっとのってるし、ずっとずっと気持ちいい。
“ヤバい”
その言葉を何度呟いたかわからない。
それくらい最高に最高に最高だ。
曲にあわせて体を揺する観客。それは建物も巻き込み、天井に吊られたライトがゆらゆらと揺れている。
押し寄せる観客の手がミヒカさんに差しのべられ、ミヒカさんの声に合わせて歌う。観客から水蒸気が立ち上り、俺たちは熱く蒸されていく。
ミヒカさんが俺を振り返り、ニヤリとして“まだまだもっと”と煽る。
ゾクゾクする。


※ヒロ※

やっぱりスゴい。

ヒロは何度もシバの出るライブに足を運んだ事があるのだが、その度に圧倒される。
観客との一体感。
使いふるされた言葉だが、それが一番しっくりとくる。
のりやすい曲、そして分かりやすくて一度聞いただけですぐに合わせて歌えるサビ。
走るギター、腹に響くベース、色気のある声、そして鼓動を高めるドラム。
シバ。
隣から不機嫌そうな視線が送られている事には気づいていたが、それを確かめようとは思わない。
観客のほとんどは一番目立つヴォーカルや、ステージを歩き回るメンバーを見ていたが、ヒロはシバを、シバだけを見つめ続ていた。
普段の方がよほど近くにいるし、また体を合わせてすらいるが、こんな風に思いを込めて見つめることはこの時にしか出来ないから。

最後の曲が終わり、バンドの退場を惜しんで観客が悲鳴にもにた声を上げ、アンコールが起こる。
だが次のバンドも控えている。アンコールは無しだ。
それは観客だってわかってはいる。
ステージの上のメンバーは嬉しそうに苦笑を交わし、簡単な片付けに入る。
最初にベースとギターが袖に引け、ヴォーカルはシバを待つ。
シバが立ち上がるとヴォーカルも大きく手を振って袖に引け、そして…
「あ」
シバの視線がふとヒロに流れる。
咄嗟に手を振るヒロ。
答えるようにシバも軽く手を上げる…が、それも一瞬。
だがヒロはそれで満足だった。
この大勢の人の中から自分を見つけてくれた。
それだけで満足なはずだった。
シバが袖に引っ込む寸前で足を止めなければ。
シバは観客の中に誰かを見つけて足を止めた。
そして口角を上げ人差し指をそちらにさして、軽く振った。
それが“待っていろ”“まだ帰るなよ”というような意味合いのことだと、ヒロはすぐに気づいた。
それを見た瞬間、血の気が引いたような気がした。
あれは自分への合図じゃない。
では誰?
誰への合図だ?
ヒロは素早くシバが指差したあたりを振り返ったが、人混みの中にその相手を見つけることは出来なかった。


※シバ※

ライブの後はいつだって皆で飯を食いにいく。
安い値段で食い放題の焼き肉店か、駅前の安い居酒屋が定番。
ミヒカさんは割と真面目な人だから酒は飲めないが、ライブの話だけで2、3時間は軽く潰せる。
今日もまた誘われはしたのだが、今日は用事があると断りを入れた。

彼女か、見せろ、美人か…
そんなんではないというのにバンドメンバーに散々からかわれ後ようやく外に出る。
まだまだ宵の口というところでたくさんの人が出歩いている。
さて、どこにいるかとキョロキョロとあたりを見回していると、
「シバ!」
向こうからこちらを見つけてくれた。
「ナンゴウ」
なんとなくホッとしたような気持ちで近寄る。
「もういいのか?」
「あぁ、まさか本当に来てくれるとは思わなかったから嬉しい」
「行くって言ったんだから行くさ」
そしてとても良かったとかなんとか興奮したとか、恥ずかしい事を言う。
ついこないだまで、相づち打つくらいしかしなかったくせに。
「あぁもういいって照れるから。それより腹減ってるんだよ、飯食いにいかないか?」
「それはいいけど…バンドのやつらとかいいのか?」
「いいのいいの」
俺は手を振った。
「お客さんの方が大事」
またライブチケット買ってもらわなきゃいけないし。
冗談めかしていうとナンゴウは目を細めて笑った。
本当に今日は愛想がいい。
それが今夜のライブのお陰だとしたら、めちゃくちゃ気分がいい。

俺達が向かったのは、近場にある24時間営業のファミレスだ。
和洋中、ある程度なんでもあるし味もそこそこ値段も手頃、入り浸ってもあまり文句は言われない…と、言わずもがな金のない高校生の強い味方だ。
ライブで体力をつかった俺は肉系が食べたかったので、ハンバーグプレート。ナンゴウは先にちょっと食っていたらしくカルボナーラを注文した。
もちろん二人ともドリンクバー付きだ。
ナンゴウがトイレに席をたった間に携帯を確認すると、ミヒカさん、ユウキ、ヒロ、カナ、その他からメールが来ていたが、特に今すぐに返信する必要は無いものばかりだったので後回しにした。
そんなことよりも、ナンゴウと何を話そうかと考える方が重要だったのだ。

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