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赤色夜行 02

随分久しぶり 1年以上たったのか。
よみかえさない

「うめぇ」

唇からたらりと流れた血を腕で拭い、ニタリと笑うギルベルト。
“食事”を用意してやったアーサーはその姿を見てなんとも言えない気分になった。
「やっぱり食事は新鮮なものに限るよな」
「そうかよ」
「いっつもいっつも冷凍でカチカチになった血液ばっかり送ってきやがって」
「…仕方ねぇだろうが。そういう契約だったんだ」
アーサーの言葉につまらなそうに鼻を鳴らしたギルベルトは、“食事”を床に置くと自分の力を確かめるように左手を握ったり開いたりという動作を繰り返した。
「どうだよ」
「…あぁ、まぁ、少しずつだな」
ギルベルトは隠居生活が長かったせいで、口から入れたエネルギーを全て力に取り込む事が出来ないのだ。
実際に自分の力として取り込むことができるのは、口にした分のだいたい半分といったところか。
全盛期の頃は、全てを…いやそれ以上の力を取り込む事が出来たのだが、なかなかそうはいかない。
仕方がないこととはいえ、ギルベルトは少しじれったかった。
「7割ちょっとってところか」
「まだその程度か」
「…あぁ。まだまだだな、それより、ルッツのほうは大丈夫なんだろうな?」
「もちろんだ」
アーサーがそう言ってパチンと指を鳴らすと、空中に鏡のようなものが現れ、そこにルートヴィヒの眠る琥珀が映った。
それを見た途端、冷徹そうな顔をしていたギルベルトがほんの少し表情を柔らかくする。
真っ白な顔で眠るルートヴィヒ。そこから映像が少し引くと、琥珀を取り囲むように数人の吸血鬼たちが立っているのが見えた。
彼らは片手を琥珀に向かって伸ばし、力を送っている。
「血は与えてないんだよな」
「あぁ、力だけだ」
本当は血を与えた方が力の吸収はいい。
しかしそれまでギルベルトの血のみで生きながらえてきたルートヴィヒのひ弱な体質を心配しているギルベルトはそれを嫌がった。
それ故、力を送るのもかなり加減させている。
「お前の弟の方はもっと大変だ。そもそも器が小さいからな」
「あぁ…」
器が小さすぎてすぐに溢れてしまう。そしてその溢れたもののせいで体調を崩す。しかし、ある程度は溢れさせないと、今度は器の成長を促す事が出来ない…。
故に、琥珀を囲む吸血鬼たちは、力を与え、溢れすぎた分は他の吸血鬼が回収し…、そしてまた他の吸血鬼は器の成長を促し…と、かなり細かな仕事を要求されている。
「まだまだかかりそうだ」
「だろうな。…それよりイヴァンの方はどうなんだ?」
ギルベルトが話を変えると、アーサーは渋い顔をしまた唐突にパチンと指を鳴らした。
すると二人の姿がフッと霞み、次の瞬間には二人は先程居た場所とは違う場所…ギルベルトの巣である古い墓地の地下へと移動していた。
ギルベルトはそれに気づくとすぐに視線をルートヴィヒの琥珀が安置されている方へと向ける。
白く薄いカーテンの向こう、先ほど鏡の中で見た吸血鬼たちが琥珀へと手を伸ばしている。
その姿に一瞬凶悪な表情を見せるギルベルト。
アーサーは兄バカ過ぎると少し呆れながら「イヴァンの方は…」と話を続けた。
「どうもよくわからねぇ」
「というと?」
「とりあえず、わかっているのは対吸血鬼機関への無差別な攻撃は辞めたらしいってこと。それから爆発的に増やした同族をどうやら処分しているらしいてことだ」
「なんだと?」
不審げな顔のギルベルトに、わからないというようにアーサーは首を横に振った。
「全くわからねぇよ」
そして眉間の辺りを指で強く押した。
「あいつは昔からよくわからねぇところがあったが、今回は特別だな。全くわからねぇ」
「吸血鬼ハンターを狩って仲間を増やしていたかと思えば、それを急に辞めて今度は増やした仲間を処分しはじめた…か」
「そうだ」
「人間の方は、向こうの方はどう思っているんだ?」
「向こうも混乱しているな。ただ、一応、権力争いのようなものが起こったんじゃないかと予測しているらしい」
「ふん。誰かが“あのイヴァン”に逆らったと?」
「そういうことだ。いわばクーデターだな。それに対吸血鬼機関が利用されたのではないかと考えているらしい」
「だが、それは失敗に終わり、そして身内に大量に処分された吸血鬼というのは、イヴァンの後片付けってわけか」
言葉を引き継いだギルベルトの推測にアーサーは頷いた。
「一見筋は通る」
そしてギルベルトは笑う。
それに釣られるようにアーサーも笑ったが、
「だが違うな」
それはとても軽薄な笑みだ。
「あいつがそんなに甘いもんかよ」
その言葉にギルベルトも合意するように頷いた。
「だな。クーデター?ありえないな。そんなもん考えた時点でイヴァンに殺されてる」
「それによしんば彼がそれを許したところで、増えすぎた吸血鬼をわざわざ自分の手で処分するだ?」
それこそありえねぇぜ。
イヴァンなら、人間側にけしかけるくらいのことはやりかねないとアーサー。
「だが、向こうの落とし所としてはそれが妥当なところじゃねぇか?」
「まぁそうだな。イヴァンがこちらに要求したものについては全く知らないわけだからな」
そう言って二人はまた琥珀の方へと視線を向ける。
琥珀の中で蒼白な顔をして眠るひ弱な子供。
アーサーは忌々しげに、そしてギルベルトは愛おしげに目を細める。

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