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あの日からずっと

成響 つか 成←響
成歩堂が弁護士やめさせられて4年後くらい。
やましいことで稼いでる成歩堂、偶然目にする響也 みたいなかんじ。
とっても下品 R15くらい

「問題は、クリスタルで出来た花瓶だね」

ぼくのつぶやきを、警官の一人は不思議そうに聞いていた。
彼はどうやら頭が鈍いらしい。それがどういう意味を持つのか、全くわかっちゃいないようだ。
まぁいいさ。そういうのは慣れている。
「そうだな、被害者は部屋に人を呼んでパーティをするのが趣味だったそうだし、部屋の中を映した映像なんかはなかったかい?」
「部屋の中…ですか、あの、それは…はい」
「歯切れが悪いね」
少しだけむっとしてみせるが…「はぁ…」とやはり彼は歯切れが悪いままだ。
それにぼくはほんの少し不審を感じた。
「なんだい?何か気になることでもあったのか?」
「気になる…というか」
彼はまた口ごもり、それから覚悟を決めたようにぼくの顔をはっきりと見た。
「結論から言えば、室内を撮影した映像はいくつかありました。ですが、その殆どは寝室で撮影されたものでして…」
「寝室で?」
なんだそれは。
なんでそんなところで…と、そこまで考え、一つの可能性に行き着く。
「まさか…」
寝室で撮影されているという映像。
そして言い出しにくそうな警官の態度…
「そんな悪趣味なことを…?」
不快感に眉を潜めると、彼は「はぁ…」といってまたちょっと困った顔をした。
「…容疑者も映っていたのかい?」
彼女と一緒に?ベッドの上で?くんずほぐれつ?
言葉には出さなかったが、ぼくはかなり嫌そうな顔をしていたのだろう、警官は気まずそうに視線をそらしながら「いえ」と言った。
「“彼”とのものはありませんでした」
「なるほどね、“そこまで親しくなかった”というのは本当らしいね」
被害者がバカにしたような顔をして言っていたのを思い出す。…が、今はそれは問題じゃない。
「それで、寝室以外の映像も同じようなものなのかい?」
「まぁ、言ってしまえばそうです」
「清楚な女優で売り出していた割りには、随分と私生活は派手だったみたいだね」
「そうですね」
警官の顔に少し影が落ちたように見えるのは、もしかしたら彼が被害者のファンだったからなのかもしれない。
「まぁいいや。とりあえず、映像を渡してほしいな」
「見るんですか?」
「もちろん。裁判で真実を明らかにするために必要な事だからね」
肩をすくめて見せると、彼は気の毒そうな顔を僕に見せた。

*

大量の書類仕事を終わらせて自室に戻ったぼくは、そこに大きなダンボールが置かれているのに気づいて眉を潜めた。
「わすれてた…」
中身は…大量のDVDだ。
すべて被害者のプライベート宅で撮られた悪趣味なものばかり。
これを今から見るのかと思うとうんざりするが、裁判までもう何日もない。
「仕方がない…か」
ぼくはダンボールの前に屈みこむと、それをあけた。
すると…
「へぇ」
透明なケースに入れられたDVDは、寝室で撮影されたものとそれ以外のものにちゃんと分けられている。
多分これをやったのは被害者…ではなく、昼間にあった警官だろう。
「なかなか気が利くじゃないか」
それに悪趣味な被害者もマメなところがあるらしく、撮影日と相手の名前はDVDの表の面にクレジットされている。(といっても、日付は全て書かれているが、相手の名前については1/4くらいは空欄になっている。おそらく一夜限りの相手なのだろう)
ぼくの狙いであるクリスタルの花瓶があるのは、おそらくリビングにあったと思われる。(あったとすれば…だが)
ぼくは寝室のもの以外をとりだし、その日付を確認。
適度に日付の感覚をあけたものをチョイスして、テレビの前に陣取りセットした。

一体この被害者は、自分の部屋にどれくらいのカメラを仕込んでいたのだろうか。
寝室はもちろん、玄関に廊下、浴室、キッチン、ダイニング、ベランダ、客室、リビング…。
そんなに自分のセックスが見たいのか。それともいざというときに脅しの種を残しておきたかったのか…。
角度も様々で、中には角度を何度も変えて編集作業を加えているものまである。
ここまで来ると完全に病気だ。
舌打ちをしたいのをこらえ、4倍速で人の情事を見ていく。
いや、情事ではない。ぼくが見ているのは、その周りにあるものだ。
クリスタルの花瓶。
かなり特徴的なものだし、映ればすぐにわかる。
しかし中々それは見つからない。
「クソ、あるはずなんだ、絶対に…」
それが強力な証拠になるはずだ。
絶対に、絶対に…。
そして…

「え?」

ぼくはそれを見て思わず映像を止めた。
映ったのはクリスタルの花瓶…ではない。
絡み合う男女。その男の横顔が映った所…でだ。
「なんで…」
薄暗い室内。あまり鮮明とはいえない映像。そこに映っていた男は…
「なんで…」
それは、僕が法界から追放した男だった。
「嘘だ」
違う。そんなわけはない。ありえない。
不鮮明な映像だ。顔立ちだって曖昧だ。それに大体ぼくは彼にはあの時以来会っていない。…なのに。
「嘘だ」
胸がドキドキと早鐘のように打つ。握りしめられていたぼくの手は、汗でびっしょりと濡れていた。
違う違うと否定すればするほどに、“彼だ、間違いない”とぼくの本能がつげる。
どれくらい止めたままの映像を唖然と見ていただろうか。
俺はふと気づいて映像を進めてみることにした。
女性の上にのしかかる男。わりとがっしりとした体格の男。筋張った男らしい手。黒い髪はかなり硬そうだ。
女がなにか言う…が、映像では何をいっているかわからない。
男はそれに何か答える…と、女は少し不機嫌そうな顔をした。そして一度二人は離れ、女は傍らに放り出したハンドバッグを引き寄せた。中から財布を取り出す女。彼女は中から数枚お金を取り出すと、男に渡した。
そういう契約なのだろう。
これまで見たビデオにも何度かそういう光景が映っていた。
だが、その時は何も思わなかったその行為に、ぼくはなぜか非常にショックを受けていた。
そして行為が再開される。
女は先程の不機嫌もどこへやら、ねっとりとした視線を男に向けている。男の首に細い腕を巻き付け…

気づけば俺は真剣に彼らの行為を見ていた。
もちろん男子中学生が初めて見るアダルトビデオに対する熱心さではない。
ただ、ぼくは女性には全く魅力を感じていないかわりに、時折映る男性…つまり“彼”の姿には奇妙な興奮を覚えていた。
彼が映るたびに、甘い痺れが体を走り、ジンと腰がしびれるような感じがした。
女性ばかりをメインに映された映像だが、それでも時折映る胸を揉む男の手だとか、広い背中だとかが移ると妙な事にぼくは自分自身を高ぶらせてしまうのだ。
自分でもおかしいと思うが、俺は“彼”に欲情を覚えていた。
視線がどうしても彼を追ってしまう。
それにしてなぜ、彼がこんなことをしているのだろうか…。
法界を追い出されたからといって、他に幾つでも職はあるはずなのに。
なぜ身を売るようなことを…。
これが兄なら落ちたものだと言って鼻で彼を笑うだろう。
しかしぼくはそう感じることは出来なかった。変わりにぼくはただ愕然とし、怒り、悲しみ、そしてショックをうけていた。そしてその一方で萎えること無く起立する自身…。
ぼくはゲイではない。至ってノーマルなはずだ。それなに…なぜそんなふうに感じなくてはならないのか、なぜこんなに反応してしまうのか全くわからなかった。
あの日以来、喉に棘が引っかかったような感じを覚えていたのは本当だ。
だが、実際には今の今まで忘れていたといっても過言ではなかった相手だ。
それなになぜこんなにも自分を熱くさせるのか。
ぼくはぼく自身の感情を持て余していた。
そして今すぐ映像に映る彼を見ながら、自分を慰めてしまいたい欲望に駆られ頭がどうにかなってしまいそうだった。
「成歩堂龍一…」
忌々しく呟いはずの言葉は、全く逆の哀れっぽく拗ねたように響き舌打ちしたい気分にみまわれる。
リモコンでDVDを止め、モニターの電源も落とすと、これ以上は何も口に出すまいと区ビルを噛み締めてぼくは立ち上がった。
もうクリスタルの花瓶なんてどうでもいい。
あんなものなくたって、あの犯人…いや、今はまだ容疑者だが…を有罪に持ち込むことはできる。
とにかくもう、あの大量のDVDは見たくない。
あれをまた見てしまえば…きっと手遅れになってしまう。
いやもうだめかもしれない。
もう芽吹いて閉まっているのだから…。
チクショウ。
俺は口の中だけで悪態をつき、着衣のまま浴室に入るとシャワーを全開に冷水を浴びた。浴び続けた。
体の熱が全てとれてしまうまで。
しかしそれがただの一時しのぎに過ぎないことを、ぼくは気づいていた。

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