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夢の続き 02

120802改稿

毎朝の習慣としているランニング。
長袖長ズボンのトレーニングウェア。彼は、頭に深くフードを被ったまま、無心に走っていた。
明け方の大気は、しっとりと湿って冷たい。住宅街はまるでゴーストタウンのように人気がない。
淡々と自分のペースで走っていく。上がる息と、早鐘のように弾む鼓動。
深くフードをかぶっているので視界は狭い。
コンクリートの道をじっと見ながら走る。ひたすらに走る。頭には何も無い。

川べりをぐるっと走って、住宅街へ入る…と、ふと、誰かが咳き込むような音がした。
コホン…ケホケホ……ッ
苦しそうに激しく咳き込む音。彼は何となく立ち止まり、辺りを見ながら耳をすませた。
しかししばらく待っても声は聞こえない。気のせいだったのだろうか?走り出そうとした時、またもや聞こえた。
ゲホ…う…ケホケホ
咳にまぎれて小さく女の声がし、彼はドキッとした。
もう一度、辺りをみまわし小さな路地からだろうかと、そちらを覗きこむ。
すると家の塀と塀の間、青く影になった場所に誰かが丸くなってかがみこんでいるのを見つけた。
小さく細い肩が咳き込むたびに、震える。必死に咳を、声を抑えようとしているようだが、彼女の意思に反して苦しい咳は収まらないらしい。長い髪が咳をするたびに跳ね、ゆっくりと前の方に滑り落ちていく。
「大丈夫ですか?」
迷った末に静かに尋ねると、一旦咳を収めた彼女は背中をビクリと跳ねさせ息を詰めた。
「あの、あやしいものじゃないです。具合でもわるいのですか?病院にいきますか?」
尋ねると彼女はまた咳き込み、しばらくしてそっと彼女は顔だけをこちらに向けた。
その瞬間、彼は全身にしびれるような衝撃を感じた。
雷が落ちるような衝撃…。
雪のように白い肌に、この所では珍しいような清楚な顔。苦しそうに寄せられた眉間の下にある大きく、茶色っぽい瞳には涙が浮いている。
「あなたは…」
掠れた声をかけると、彼女はくるりと顔をそらし先程の格好に戻ってしまった。
「あの…あっ」
不審者と思われたのかもしれない。
彼は慌てて、フードを取り彼女の傍に跪いた。

***

まさか、こんなとこで出会ってしまうなんて…。
環奈はひどく狼狽し、自分の口元をハンカチできつく押さえた。
どうしてこの人がいるの?何故…?こんな早朝に、なぜ?
環奈は男に背を向けたまま、早く彼が去ってくれるようにと祈った。
どうして。
体が小刻みに震える。
早く、早く行ってしまって。こんな愛想の悪い女なんか放っておいて、行ってしまって。
だが、環奈の願いに反して彼はおろおろとしたようすで環奈の様子を伺っており、立ち去る気配はない。
お願いだから…早くいってしまって…
咳のせいかそれとも頭が混乱しているからか、彼女の瞳からは涙がほろりと流れ出た。
そのとき、背中に彼の手がそっと置かれた。
瞬間的に肩をピクンと跳ねさせた環奈に男の声をかける。
「大丈夫?家まで送ろうか」
優しい声。
それは遠く忘れていた人のそれにそっくりで、彼女は咳も相まって声をだすことが出来なくなった。
そんな彼女を彼はよほど心配したのだろう、気遣いながら彼女を立たせ家まで送ると申し出た。
「家、どっち?」
環奈はしばらく悩んだ後、静かに路地の先を指差した。

***

音がする。

小さな子が、何かキラキラ光るもので遊んでいる・・・。

シャラシャラと、

ネックレスの鎖が、指から零れ落ちる音ににて、

シャラシャラと。

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