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フォーリンダーリン

独×にょロマ 現代
誰も読まないってことにして読み返さない。

彼女が自分のことをひどく嫌っているのを俺は知っていた。

彼女は親友の姉で、へた…気が弱い親友とは違ってとても気の強い女性だ。
過去に何があったかは知らないが、俺のことをドイツ人だというだけで嫌っていて、初対面で「弟はバカなんだからたぶらかさないで!」と言った彼女はとにかく強烈で、今もその時のことをそっくりそのまま思い出せる。
そんなわけで彼女はことあるごとに俺につっかかってきた。
料理をつくればパンチが足りないといい、彼女の弟…つまりフェリシアーノが脱ぎ散らしたものを拾っていると細かい男と言われ、車の修理でオイルまみれになった時はお似合いだと鼻で笑われた。ランニングをすれば暇人と言われるし、本を読んでいればインテリぶってと言われる。
彼女は俺のやることなすこと全てが気に入らないらしく、彼女は俺を目の敵にした。
そしてそのくせ、何かあると…例えば雨が降ってるから迎えに来いとか、通販で買った棚が組み立てられないから来いとか…俺を頼ってくる。
完全に都合のいい男としか見られていない。
怒られて、怒鳴られて、馬鹿にされて、ケチをつけられて、言いがかりをつけられ…
しかし、それでも…俺は彼女の事が好きだった。
自分でもどうかしてると思うが、彼女の気を引きたい、彼女に気に入られたいと思ってしまう。
俺以外に向けられる笑顔、優しい言葉、甘えた仕草。そんなものが羨ましくてたまらない。
もし彼女が俺の隣で、俺だけを見てくれ微笑んでくれたならどんなに幸せだろう。
そうなれば俺はきっと空だって飛べる。

だけど。

彼女は俺が嫌いなのだ。

叶わぬ思いならば、いっそ諦めた方が利口だろう。
この先ずっと苦しい思いを抱えて、彼女だけを心に住まわせて生きていくなんて考えるだけでも辛すぎる。
きっと彼女は彼女の愛した誰かと幸せになるのだろう。
そしてそれを俺はただ指をくわえて見ているしか出来ないのだろう。
それならばいっそ…。



「どういう事なの?」

喜んでくれるだろう。
そう思って一番に報告したのだが、フェリシアーノからは思ったような反応が得られず、同席した本田からも困惑しか伝わって来ず俺は戸惑った。
「だめ…だったか?」
不安一杯に聞き返せば、「当たり前です!」と本田が珍しく声をあらげた。
そしてその隣で「お、俺、ちょっと行ってくる!」とフェリシアーノが立ち上がり、何処かへ駆けていった。
「フェリシアーノ?」
「放っておきなさい、ルートヴィヒさん」
「いや、しかし…」
「いいですからお座りなさい」
本田が…怒っている?
普段どんなことがあってもおよそ怒るということのない本田の荒々しい態度に思わず姿勢が伸びた。
「ルートヴィヒさん、私は見損ないましたよ。どうせ叶わないからって諦めて他の女性で手を打とうなんて!なんですか、それは!日本男児の風上にも置けない決断は!」
「いや、俺はドイツ人で…」
「だまらっしゃい!」
ピシャリと言われてびくっと肩が動いた。
「そんなことをして誰が幸せになると言うんです?相手の女性だって妥協でお付き合いしてもらっても嬉しくはないでしょう!」
「確かにそうだが…これ…」
「それともまさかもうロヴィーナさんのことはどうでもいいとお考えで?」
「それは無い」
「だったらなぜそんな馬鹿な考えに行き着くんですか?!信じられません!」

「待ってくれ本田」
少しでも彼の興奮を沈めようと、俺は彼に手をかざした。
「確かに俺の態度はあまり誉められたものじゃない。いや、いっそ責められても仕方がないとおもう。しかし、俺の気持ちもわかってくれ」
俺の訴えに、彼は小さく口を開けたが言葉は出てこなかった。
「知っての通り、俺は彼女にひどく嫌われている。何をやっても彼女は“俺”が絡んでいるというそれだけで不快になる。俺が姿を見せれば嫌な顔をし、俺が帰るといえばせいせいしたとでも言いたげな顔を見せる」
はじめはあまり気にしていなかった事が、近頃ではいちいち胸に突き刺さる。
本当に辛いのだ。
本田は俺の言葉に眉を寄せ、小さく息をついた。
「ルートヴィヒさん、私はロヴィーナさんが貴方を嫌っているとは思っていませんよ。ただ彼女は素直になれないだけなんです」
それは何とも寛大な言葉だ。
俺は力の無い微笑みを返すのが精一杯だった。
「ありがとう。本当にそうだったらよかったんだがな」
いつだったか、彼女に俺は何か嫌われるようなことをしただろうかとフランシスに相談した時も確か同じような気休めを言われた。
気休め。
本当にただの気休めだ。
今の俺にはその言葉すらひりつくが。
「そんな悲しい顔をなさらないでください。…困りましたね。貴方はとてもさとい人のはずなのに、事が恋愛となると途端に鈍くなられる」
彼ははかない微笑みを浮かべると「ですが、それも仕方がないのかもしれません」と言う。
「彼女はとても意地っ張りで、本当に素直じゃありませんから」
「どういう意味だ?」
「それこそルートヴィヒさんが考えなくては意味がありません…と、言いたいところですが、考え尽くした結果が今回のような事になったのでしょうからヒントをお出ししましょう」
「ヒント?」
「えぇ。知ってしまえばもう逃げられないとは思いますが」
くつくつと笑う本田にほんの少し恐ろしいものを感じながらも俺は頷いた。
俺だって自分の出した答えがベストだと思っているわけではないのだ。
ならば本田の話は聞く価値がある。
結果がどのように転ぶかはわからないが。

「ロヴィーナさんは、貴方がやってきて嫌な顔をすることはありますが、だからと言って席を立ち帰ることはありません」

「ロヴィーナさんは貴方の料理にケチをつけることはありますが、毎回きちんと完食しています」

「ロヴィーナさんは貴方をこきつかっているのは本当ですが、でもちゃんと貴方のスケジュールを確認してやってるんですよ」

それにね。

「ロヴィーナさんは貴方がフェリシアーノ君の家に行くと聞くと、必ずお菓子を焼くそうですよ。何度も口にしてらっしゃるでしょう?」

色々と裏返しなんですよ。そして複雑なんですね。乙女心というものは。
何も返せないでいる俺に、本田は最後にそういって微笑んだ。
裏返し?
ちょっと待ってくれ。
答えを要求しても本田は得意のアルカイックスマイルを浮かべるばかり。
こうなってしまえばもう彼は何も言ってはくれないだろう。

気づくと俺は熱に浮かされたようにぼーっとしながら道を歩いていた。
本田から言われた言葉をどう処理したらいいのかさっぱりわからなかった。
最大限都合よく解釈するなら、俺は大馬鹿者で、そして世界一の幸福者かもしれない。
だけどまさかそんなはずがあるわけはない。
きっと本田が勘違いしているだけだというのが一番冷静な判断だ。
しかし、本田に限っていい加減な憶測を口にするはずはないし…。
いや、待て。のぼせ上がるなルートヴィヒ。あとでバカを見るのは自分だぞ。
だが本田の言葉は…
同じ事をぐるぐると考えて、喜んだり、落ち込んだり、悩んだり、自嘲したり…。

と、その時だ。

「このジャガイモ野郎!」

聞きなれた罵声が後ろから浴びせられたのは。
こんな事を言うのは、“彼女”しかいない。
ドキッとしながら、後を振り返ると、すごい形相で走ってくる彼女が目に入った。
顔を真っ赤にして、涙で頬を濡らして…
「ロヴィーナ?!」
俺はぎょっとしてしまった。
そしてどうかしたのかと聞こうとして、彼女の後を走るフェリシアーノに気付き、ふと視線をそらした。
一瞬の事とはいえ、それが悪かった。
彼女はその一瞬で持っていたハンドバッグを振り上げていたのだ。
なんというバッグなのかは知らないが、小さな固いバッグで持ち手がかなり長いものだった。
それが振り上げられた事により、大きく勢いがつき…

「この浮気者!!!!」

ガンッという衝撃とともに視界に火花が飛び、ついで近くにあった街頭に後頭部を打ち付けハレーションを起こした。

それからどうなったかはご想像にお任せするが…、救急車で病院に運ばれ七針縫うだけの価値はあったとだけ言っておこう。

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