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飴玉を噛み砕く 04

ゲイ専用ソープ店の世話人

「クラッチ!」

手を大きく振る女の子は舞子。
高校の時から俺は彼女とくっついたり別れたりしている。
恋愛感情は…まぁ昔はあったのだが今は友達の感覚に近く、それは彼女も同じだろう。
お互いに好きな子や気になる子ができれば別れ、お互いにフリーならとりあえず付き合うような関係だ。
友人たちからは“似た者夫婦”なんていわれるが、ただの“似た者同士”が正しい。
ちなみに今は別れている状態だったりする。
「聞いたよ」
「なにを?」
彼女はかなりの美人で、付き合いだした頃はかなりやっかまれたし、今も羨ましく思われることが多い。
「昨日、すっごい美人と一緒だったんでしょ?」
「アツシか…」
あいつはおしゃべりだ。
壱さんをつれていったのは間違いだったかもしれない。
「金髪のものすごいいい男って聞いたけど!ねぇ紹介してよ」
「は?お前いま彼氏いんだろ」
「いるけどー」
不機嫌そうな顔。
「あいつ束縛きついんだもん。しょっちゅうメールに電話。で、どこにいる?だれといる?だよ?まじうっざいの」
「愛されてる証拠だろ?」
それは付き合い始めた頃に彼女自身が言っていた言葉だ。
しかし月日はその認識を歪めてしまうものらしく「でもさぁ」と舞子は口を尖らせた。
「あ、ほらまた」
そして赤いランプかピコピコしながら震える携帯をとりだし、「はいはい、あたしだよ」と耳にあてて言うと、手を振って離れていった。

舞子と別れたあとあったのは、国見という男だ。
大学まできて熱心にテニスをやっている爽やかイケメン。
俺を見つけると、彼は白い歯をみせて笑った。
「クラッチ、○○教授のレポート終わらした?」
どうでもいいけど、俺のあだ名の発音は“くらっち”じゃなくてあくまで“クラッチ”。
発音が全くかわいくない方だ。
「え?あれ今日提出だっけ?」
「いや、明後日だけど。ってことはやってない?」
期待を込めたような言い方に俺は苦笑する。
国見はスポーツ万能のイケメンではあるが、学力はさほどでもない。
ってか俺よりバカだ。
「半分は終わってるし」
「まじ?俺、資料すら集めてないわ」
国見は大袈裟に頭を抱えた。
「はは、それはまずいだろ」
「まずいなんてもんじゃないって…!やべぇ」
「家にいけば資料あるし貸そうか?」
「いや、むしろ手伝え!」
「わ~かったよ。じゃぁ、夕飯はおごりな」
「あ、今日は休み?バイト」
「おぅ」
俺の言葉に国見は嬉しそうに笑った。
女の子がみんな“かわい~っ”と母性本能をくすぐられるような笑顔だ。
俺には逆立ちしたってこんな爽やかな笑顔は出来ない。



夕方俺が住んでいるアパートにやってきた国見は大きな買い物袋を二つも持ってきた。
「カレー作ろうと思って!」
という、彼は一体何人分こしらえるつもりなのだろうか。
彼は俺の家の鍋が小さすぎると文句をいい、近くのホームセンターから大きなフライパンと鍋まで買ってきた。
貧乏学生の俺には考えられない大出費を彼はこともなくやり、「カレーはやっぱり大人数分を作るのが旨いんだよな」とレポートのことなんかまるで忘れてジャガイモをひたすらむいていた。

そして出来上がったのは具が山ほど入ったカレー。多分10人前くらい。だ。
「多すぎだよ」
と、どつくと、彼は自分だけで五人前は食うし余裕だと笑った。
そういえば彼は痩せの大食いでも有名だった。その見事な食いっぷりを見たアツシは国見の腹には“サナダ虫”がいると本気でいっていた事もある。
そして今日のカレーの食いっぷりもなかなか見ごたえがあった。
スプーンで山にすくって大口に入れ、咀嚼する間にまたすくってそれを口に入れ。
「すごいなぁ」
感心する俺に、彼はまた爽やかに微笑む。
「クラッチもいっぱい食ってよ」
「あぁまぁ」
俺だってカレーは好きだけど、食べ盛りの男子大学生だけど…それでも国見ほどは食えない。
「お前さ、そんだけ幸せそうにものが食えんなら、レストランのシェフとか食堂のおばちゃんとかにモテそうだよな」
「ん?ん~そうだな。割と可愛がられてるかも。行きつけのラーメン屋じゃスペシャル出してくれるし」
「あ、ラーメンすきなんだ」
「好き好き、いつも三杯とチャーハン食うし」
「食いすぎ」
「だけど、俺、すぐお腹へるし」
普通ならピザ一直線なんだろうが、国見はスポーツマンだ。
朝から近所を走りまくり、地元の社会人野球やサッカーで汗を流し、大学ではテニスをし、また助っ人を頼まれりゃバレーやバスケットをするというから贅肉とは無縁であるらしい。
「それで酒もタバコもやんないって何が楽しいの?ってか今、彼女もいないんだっけ?」
「彼女は高校の時に1人いたきりだよ」
「もったいねぇ」
国見はアホほどもてるし、いつだって女の子に囲まれている。
しかしいまだに小学六年生みたいなところが抜けきらないらしく、「なんか男友達と遊んでる方が楽しい」っと、けろっとした顔でいう。
爽やかでスポーツマンでイケメンで女にもてるのに全く嫌みがない。
「そりゃ男にももてるわ」
ポロッと口にすると、国見は珍しく焦ったような顔を見せた。
「な、なんだよそれ。誰に聞いたの?」
「誰っていうか…有名だろ。お前の追っかけには男もまじってんじゃん」
かわいい系の男の子が。
言うと、国見はますます困ったような可愛い顔をした。
「なに、コクられた?」
「あー、うん」
「で?」
「でって…断ったけど」
「けど気になるって?誰?」
「そういうんじゃなくて」
国見は言いづらそうにもじもじした。
なにこいつ。
俺よりでかいくせに超かわいいんですけど。
「そいつの事は普通に断ったけど、女の子の交際を断るのとちょっとちがうっていうか…」
「あー、そんなもん?」
「時々一緒にサッカーやってるやつだから」
あー。
「きまずいな、そりゃ」
「そうなんだよね」
国見はしょぼくれた犬みたいな顔をした。
「普通に接して欲しいとか言われても、なんか普通がわかんないっていうか」
あー。確かに。
「お前、そーゆーの苦手そうだもんな」
「そうそう」
ボールやラケットならいくらでも器用に扱えそうだが、人間の扱い方なんて国見ができるわけない。
「で、ぎこちなくなって、なんか困ってる。気まずいのは友達にコクられたからであって、男にコクられて引いてるんじゃないんだけど、意識すればするほど態度がおかしくなるし!」
だーっといって仰向けに寝転がる国見。
ほんと不器用だ。こいつ。
うりうりと撫でてやると、国見は困ったように笑った。

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