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飴玉を噛み砕く 02

ゲイ専用ソープ店の世話人

就業中は壱さんと八夜さんが交互に仕事につくし、他にもナンバー無しの子もいるのでかなり忙しい。
仕事の内容は壱さんにもやった拡張はもちろんだが、仕事が始まれば掃除にケアが大きなウェイトをしめる。
こういう場所だから、ある程度汚いのは客も了解済みだろうがキレイな事に越したことはない。
男の子の仕事が終われば俺は彼らを風呂に入れ(必要なら介助し)、シーツ(吸湿性の高いものの二枚重ね)に枕、汚れたタオルなんかをかごに入れて外に出し新しいものに変え、汚れた場所をキレイに掃除する。
それが終われば、男の子のケアだ。
割りきってる子なら、“はい、次々”“あー、疲れた次はどんな人かな~?”みたいにあっけらかんとしてあるのだが、プレイでナーバスになったりする子や“もう帰りたい”なんて駄々をこねる子にはケアが必要で、これが結構大変だ。
特に壱さんは毎回毎回時間ギリギリまでごねるので、彼が休憩時間に入ると彼につきっきりになる。
それに時々ではあるが、トラブルもないことはない。
事前に禁止したプレイをやろうとした客や、料金を踏み倒そうとする客…。
後、“待ち”の客に飲み物出したりもしなきゃいけないし…
本当にこの仕事は色々と大変なのだ。



就業時間の半分が終わりタバコを吸うために外に出ると、そこには先客がいた。
タバコを吸ってるタキシード。傍らにはクマ。でも…
「あれ、クマサン、中身かわったんだ?」
タバコを吸っているのは見覚えのあるクマサンじゃなかった。
俺の言葉に振り返ったのは、俺よりも若い…高校生くらいの男の子だった。
俺よりも小柄でちょっとたよりない感じだが、素材はいい。
裏方でやるより、表にまわった方が稼げそうなタイプだ。
純朴そうな見かけでタバコを吸う姿はちょっとアンバランスで危うい魅力がある。
「あ、よろしくお願いします」
「うん。よろしく。いつから入ってんの?」
「昨日からです」
「そうなんだ。大変だろう」
笑って見せると、新しいクマサンは「そうですね」と苦笑した。
「キジサンにおしえてもらってるんですけど大変そうです」
「キジサンか」
キジサンは俺よりも前から勤めてるベテランだ。
特定の受け持ちはいないかわりに手が空けばいろんな子の面倒でも見ている。
一通りの仕事を覚えるならキジサンにつくのが一番だろう。
「なんか、こんな世界全く知らなかったから戸惑っちゃって」
そんな子がなんでこんな怪しい店にやってきたかは大いに気になるところだが、個人の事情についての詮索はタブーだ。
「だろうなぁ。俺も最初はマジびびってまともに男の子の顔も見れなかったもん」
「あ、わかります」
「仕事だって割りきれって言われても難しいよな」
俺がいうと彼ははにかむように笑った。
かわいい。
やっぱり表向きな気がする。彼のような純朴そうな子が好きな客は多い。
だけど、表だと三日ももたない気もする。
そうなったら悲惨だ。
やっぱり彼は裏方でよかったんだろうな…と俺もは思った。
それからちょっとの間、雑談とともに先輩としてのアドバイス?も偉そうにしてやった。
気むずかしい子のご機嫌の取り方とかモニター室にいればちょっとサボれるとか。
新しいクマサンは結構イイヤツでかなり気が合いそうな感じだ。
何度かしゃべって大丈夫そうならプライベートでも遊びたいなぁと俺は思った。
「でさ、すげぇえの下半身真っ裸で飛び出してきてさ~」
震度2くらいの地震があったときに客の一人が泡をくって飛び出してきた話をしていると、「ウサギ」低い声に後ろから呼ばれてギクリとする。
振り返るとそこには不機嫌マックスな壱さん。
あちゃぁ…。
ちょっとはしゃぎすぎてしまったらしい。
「クマも早く戻ったがいいぜ、キジサン探してたし」
「え、あ、はい」
壱さんのド迫力美人に飲まれていたクマサンはあわててタバコを消すと走って店内に戻っていった。
残されたのは俺と壱さん。
「あー、わざわざ呼びにきてくれたんですよね?すみません」
陽気に言ってへらりと笑い、「さ、壱さんももう一頑張りですよ」っと横を通りすぎようとしたが、腕をがしっと捕まれて立ち止まる。
「壱さん?」
怒りに燃え上がる目を見て俺は困った。
「ダイ」
「はい」
「なんで壱って呼ぶんだよ」
「なんでって…壱さんは壱さんですし」
「本名、教えてやったろ?」
「……」
黙っていると、壱さんはくやしそうに唇を噛んだ。
「壱さん、だめですよ、噛んじゃ。それにそんな顔もしちゃだめです。もっと自信満々な壱さんじゃなきゃ」
俺は他の客に見つからないように壱さんを部屋に戻すと、一生懸命彼のご機嫌をとった。



壱さんを仕事に送り出し八夜さんのところにいくと、雑誌をめくっていた彼は疲れた俺を見てにやにや笑った。
「おつかれー、うさちゃん」
「どうも、ってゆーか八夜さんもお疲れさんです。…あれ?もしかしてキャンセル出たんですか?」
部屋の中がこざっぱりとしていることに気づいて聞くと、「んーん」と八夜さんは首を横に振った。
「さっきキジサンが新人のクマの子つれて片付けてった」
「あー、そうなんすか」
キジサンにはあとでお礼いうこと…俺は頭のメモ帳にしっかりと記しておいた。
「大変だよね、壱さんのご機嫌とり」
「いやぁ…」
俺は曖昧にいって備品に不足がないかのチェックをする。
八夜さんは壱さんとちがってほとんどごねることのない扱いやすい子だ。
そんな八夜さんから見ると、壱さんのように毎度毎度スタッフを困らせてる人は許しがたいものがあるらしい。
「どうせヤることヤらせてるんだから黙って仕事すりゃいいのに」
「はは、みんなが八夜さんみたいだったらいいんですけどね」
「大体さぁ~、うさちゃんもうさちゃんだよ。甘やかすからつけあがるの」
しまった。矛先がこっちに向いてしまった。
「ビシッといえばいいんだよ。プロなんだから、貞操の一つや二つなんだっての!イチイチ傷ついた~みたいな顔してなんなんだよ!ちょっと顔がいいからって…ムカツク!」
「はは…ですかね。でも、俺、オーナーに壱さんは甘やかすようにいわれてるし…」
俺の言葉に八夜さんはものすごく怖い顔をして俺を睨んだ。
「だから余計にむかつくんじゃない!」
……左様で。

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