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ミッキーとマイキー

とりあえず短編

名前にミキという言葉がついていたから、昔から“ミッキー”と呼ばれていた。
だけど高校二年の時に、名字に“ミキ”とつく色男が転入してきて、自己紹介で「前の学校ではミッキーと呼ばれていました」何て言ったものだから、ミッキーというあだ名は取り上げられてしまった。
そしてミッキーではなくなった俺は“マイキー”になった。

「なぁ、もしもうひとりミキというやつがいて、そいつがマイキーってあだ名だったら、つぎの俺のあだ名はジャッキーかな?」

俺が言うと、前の席に横向きに座って雑誌を呼んでいた灘は「その前にマイコーじゃね」と紙面から顔もあげずに言った。
「マイコーか、マイコー…マイコーはやだなぁ」
灘から返事はかえってこなかった。
冷たいヤツ。
教室を見渡すと、女子に囲まれているミッキーが目にはいった。
背は俺と同じか少し低いくらい。だけど顔の出来は彼の方が数倍いい。
ありきたりな例えだが、ジャニーズにいてもおかしくないような、ちょっと甘めの顔立ちだ。
「ちぇ」
イケメンは滅べ。
むしろ俺以外の男はみんな滅べばいいのに。
恨みがましくにらんでいると、ミッキーの視線がふとこちらに流れた。
「お」
と思ったのも一瞬。それは勢いよくそらされた。
「なんだ、あいつ…」
「ん?どうした?」
「灘~、むかつくんだけど!あいつ!めっちゃ目ぇそらされたし!」
「えー?誰」
「新ミッキー」
俺が言うと、プッと灘は吹き出しようやく顔を上げた。
「なに、お前なんかやったの?」
そう言って灘は女に囲まれてるやつの方を見た。
「してねーし」
「っつか、ミッキー顔赤くね?」
俺?と顔を撫でると、「お前はマイキーだろ」とつっこまれた。
あぁそうか。
俺は手をおろした。
ミッキーは…と見ると、残念。彼は教室を出ていくところで、顔色を確認することはできなかった。



数日後の放課後、俺は教室で一人ぼけーっとしていた。
授業中寝てたせいで取り残された上に、帰るのもだるいからだ。
くそ、灘のヤツ、起こしていけっての。あいつ、本当に冷たい。コールド・ブラッドだ。
むすっとしながら、黒板(誰が描いたのか現国の教師の似顔絵がある)をにらんでいると、ガラッと教室の扉が開いた。
教師か?と思ったが、入ってきたのはミッキー。
放課後だからか取り巻きはおらず一人だ。
彼は俺と目があうと、以前と同じように勢いよく顔ごと視線をそらした。
なんなんだよ。
俺が何かしたか?
同じクラスにいるだけじゃねぇか。
それともなにか?名前に“ミキ”って入ってるのが気に入らないって?
俺がじーっと見ている中で、ミッキーは鞄に教科書を詰め、帰ろうとして何故か引き返しこちらに向かってきた。
いつも爽やかに微笑んでいる顔が、何故か今は凍りつき強ばっている。
本当になんなんだ?
俺は尋常ではない彼の様子に戸惑った。
もしかしたら気づかぬ内に何かやっちまってたとか?
先程までのくさくさとした思いが急激に萎み、変わりに不安が膨れ上がった。
きっと彼の顔が悪いのだ。
無駄に整った顔で、無駄に緊張した表情をつくるから。
すぐ横で立ち止まったミッキーは、今にもぶっ倒れそうな顔をしている。
「あ、あの」
そして掛けられた声は上ずってジャンプしていた。
何を言い出すかと身構えていると…
「おれ…同じクラスに転入してきた…」
自己紹介だった。
俺は一瞬あっけにとられた。
「いや、知ってるし」
前にいた高校の名前あたりの紹介でボソッと突っ込みを入れると、ミッキーの顔はじわじわと赤くなり、しまいには耳と言わず首までもピンクに染まってしまった。
なんだなんだ、なんなんだ?
「えぇっとミッキーだったよな、俺は…」
自己紹介するならこちらの方かと思うのだが。
ってゆーか、マジ、なによこのやり取り。
「マイキーって呼んでくれていいから」
「マイキー?」
「そう、前はお前と一緒のミッキーだったんだけどさ、お前と被るからマイキーになったんだ」
「そ、そう。なんか…悪い」
「や、別に」
確かにミッキーというあだ名に愛着はあったが、とられて惜しいというものでもない。
実をいえば高校生にもなってあだ名ってのもなぁ~とも思っていたりもするのだ。
「じゃ、じゃぁ、俺もマイキーって呼んでもいい?」
「あぁ、全然。俺もミッキーでいい?」
「う、うん!」
ミッキー、お前、顔が真っ赤だぜ。色男が残念なことになってるぜ。
「っつか、風邪?熱でもあんの?」
「ううん!元気!元気だし!死ぬほど元気だし!」
しかもテンションもおかしいし。
こいつ何処から転入してきたんだっけ。とか考えてると、彼はもじもじと体を動かし、「あの」っと言った。
「ん?」
「あ、あの」
「うん」
「お、俺、ずっと…その」
「ん?」
「転入したときから…」
「あぁ」
舌に油をさしたくなるような要領を得ないしゃべり方でもごもごいう。
おかしいな。
こいつは顔だけじゃなくて頭の出来もよかったはずなんだが。
ちょっといらっとするが、なんか必死そうだし我慢強く聞いてやる。
そうして脈絡のないやりとりを何度か繰り返し、そろそろ用件を言えっと思っていると、彼は言葉をとめた。
そしてゴクリと唾を飲み込み、
「まずはお友だちから、お願いします!お友だちになってください!」
と、頭を下げた。
お友だち?
「それはいいけど」
「まじで!」
「あぁ。友達くらい」
なんで友達OKしただけでこんなに嬉しそうなんだ?
あ、そういやミッキーは転入してからずっと女に囲まれてて、男友達がまだできてないのか?それなら納得。
だけど…
「まずはお友だちから…ってのはなに?」
お前は友達から発展してなにになりたいわけ?
ストレートにとらえると…いやいや、それはないか。
男同士だしな。
普通に考えると親友になりたいってとこ?
でもなんで俺?
「あ、あぁあ!あのそれはただの希望っていうか、俺の一方的な願望っていうか!」
それにしても、イケメンミッキーのイメージがこの十分ほどで崩れまくりだ。
もしかしたら前の学校でも、女にばっか囲まれて男友達がいなかったのかもしれない。
そう考えるとなんかちょっと哀れというか…
「いいよ、わかった。じゃぁ“まずは友達から”な」
親友になれるかどうかはわからないが、よろしくやっていけたらなぁと思った。
イケメン滅べなんていってごめん。
なんかすげぇいいやつぽいし。
顔を真っ赤にして頷くのも、同性になれていないからかもしれない。
そうだとするとちょっとほほえましいじゃないか。
「よろしく」
手を差し出すと、彼は慌てたように手汗をズボンでぬぐってはにかみながら俺の手をとった。

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