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にっちもさっちも 07

短い フランシスとアントーニョ

青いバケツを頭に被って、自分の声を聞く練習をしていたギルベルトだったが、それを真面目にやっていたのはほんの五分ほど。
いまは飽きたといって、頭にバケツを被ったまま眠っている。
近くにいたフランシスは軽くイビキをかく彼に近づくと、バケツのとっての部分をギルベルトの顎にそっとかけてやった。
フランシスがもとの場所に戻ると、一つ一つ指を確認しながらベースを弾くアントーニョが「音楽って難しいんやなぁ」と真面目な顔をして言った。
「指できっちり押さんとあかんし、そんなすぐに指移動できひんわ」
指痛い…と言ってギターを放し、弦の後がきっちりとついた指を見つめた。
「しかもその音であでとんか、いまいちわからんし」
アントーニョのぼやきにうんうんと頷いたフランシスはギターを抱えなおし、「あ、ねぇねぇ」と友人の注意をひくとピックを構えた。
「これわかんね?」
そういってジャジャジャジャン!ジャジャジャジャン!と簡単なコードを繰り返した。
アントーニョは「ん?」と首を傾いだが、すぐに「あ、You Really Got Me の出だしや!」と笑顔を見せた。
「かっこええやん!」
「だろ、だろ?昨日、家で練習してたとき気づいたわけよ~」
「すごいわ、ギタリストみたいやん」
「ギタリストなんだよ」
「で、その先は?」
「えー…」
「えー…」
「やっぱ音楽って難しいよな」
「やなぁ~」
二人はへらへらと力なく笑いあい、ため息をついた。
「あ、そうだ。聞いた?文化祭のステージ」
「あぁ、ライブな。もうすぐ、出演者の応募受付はじまるんやろ?」
「そうそう。ギルベルトのやつ張り切ってるけど…ぶっちゃけ間に合うと思う?」
「一組三曲までやっけ?」
「そう」
フランシスが頷くと、アントーニョはうーんと唸り「一曲間に合うかどうかやない?」と正直な言葉を口にした。
「だーよーなぁ~」
「ルーちゃんはやたら頑張っとるから、余裕かもしれへんけど、俺があかんわ」
「っつかさ、アーサーのやつも出るらしいんだよ」
「へぇ?」
「菊ちゃんとアルフレッドでスリーピースバンドやってんだって!」
「そいやベルも女の子ばっかでガールズバンドやるいうてたで」
「えー、まじかよ!ライバル多いなぁ」
「はは、一方的なライバルやけどな」
「それをいうなって」
フランシスはいいながら、物悲しげにギターをジャーンと鳴らした。
「けど、北欧のやつらもだろ?」
「そう、あとギルやんの従兄弟はピアノ弾くいうてた」
「クラシックかぁ~、負けらんないなぁ」
「えー」
「いやいや、だってよ。バンドでライブとか女の子がキャーっよ?かっこいいわ!フランシスさまぁ~ちゅーしてぇ!ってなもんよ?」
裏声で体をくねくねさせながら言うフランシスをアントーニョはケタケタ笑う。
「それになぁ、お前だってあれよ。あのツンツンしたロヴィーノが“なんだよ、やるじゃねーか、アントーニョ、このやろう”ってなもんよ?」
台詞部分で腕を組みそっぽを向いてぶっきらぼうに言ったのはロヴィーノの真似だろうか。
アントーニョは嬉しそうに「ほんまかぁ~?」と頭をかく。
「ほんと、ほんと、ただしこけるとひどいけどな」
女の子に見向きもされないどころか、男子生徒には失笑される。しかもアーサーからは“は、所詮そんなものかよ”と見下され、“元気を出してくださいね”と本田に慰められ、“次があるよ~”とフェリシアーノはヴェーと鳴き、“見損なったぜ、もう話しかけんなよ”とロヴィーノは去っていき、“まともに一曲も演奏できんのか!”とルートヴィヒに絞められる。
「どうよこれ」
「うわぁ」
それは想像するだけで恐ろしかった。
「あかん、それだけはあかん、阻止せな」
「おぅ、真面目にやろうぜ」
二人は若干青い顔でそれぞれの楽器を抱えなおすと、弦を確認しながらしっかりと指でおさえた。
「でもさ、いざとなったらアカペラで許してもらおうぜ」
「せやなぁ」
二人は入念に確認してそれぞれの楽器をかき鳴らしたが、それは間の抜けた音を散らして虚しく空に消えていった。

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