スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ジキタリス

駄文

「どうした?」

移動中、しきりに周りを気にする玲治に気づ、声を掛けると、彼は廃ビルを睨みつけて「あぁ」と気のない返事をした。
「なんだよ」
彼の視線を追っても、別に面白いものなんてない。
ひび割れたコンクリートに、割れたガラス。その向こうに悪魔の気配がわずかに感じられるものの…別に異常はない。
「玲治?」
もう一度声を掛けると、彼は難しい顔をして頭を掻いた。
「視線…」
「視線?」
「近頃、よく感じるんだよ」
誰の視線か…なんてのは愚問か。
「あの金髪の坊やか?」
「…だろうね」
かなりイライラしているらしい。
「一方的に見られるってむかつく。俺の事をおもちゃとしか思ってないんだから」
「…それを言うなら俺も一緒じゃねぇか?」
俺の言葉に玲治はちらっと俺を見、「ふん」と鼻を鳴らす。
「なんだよ」
「…別に…っていうか」
「ていうか?」
「あんたの役割…っていうか役どころも色々と謎だなと思ってね」
「ん?」
聞き返した瞬間に、砂漠の中からチンが五羽も六羽も飛び出してきて、俺達はさっと戦闘態勢をとった。
チンなんて…今の俺達じゃ全く相手にならない。
俺は背中の愛剣に手を伸ばし、玲治は軽く腕を振る。
そして一匹目を俺が仕留めた時…
「あんたの存在は“彼”にとってどういう存在なんだろうなってね」
玲治はチンを殴りつけながら言った。
「あんたの存在はそもそもはイレギュラーだったとは思わないか?」
「イレギュラー?ゲストっていえよ」
少しばかりむっとしていうと「そうか」と彼は簡単に納得した。
「確かにゲストだな。向こうがあんたを此処に招いたわけだし」
「そうだ」
チンの体を二つに割り、羽毛をかき分け近くにいた一羽に襲いかかる。
そいつは果敢にも俺に鋭いくちばしを向けてきたが…残念ながらそいつの首はは俺に届く前に堕ちた。
「でもさ」
戦闘が始まっても、終わっても玲治の話し方は全く変わらない。
彼は腕についた血しぶきをぺろりと舐め、すぐに不味そうにペッと吐いた。
「あんたの存在は、“彼”にとっては不確定要素だろう?」
「…完全にコントロール出来ないって意味じゃ、お前やお前の友人だって一緒だろう?」
「だけど、あんたは世界ごと違うじゃねぇか」
「かもしれないが、“彼”にそれは関係あるのか?」
俺の疑問は玲治が考えていないものだったらしく、彼はふと黙りこむと「そうか」と唸った。
そしてしばらく何か考えるように間を置いた後、「…ホントと、気に食わねぇ」と吐き出す。
彼が苛ついているのは、どれだけあがいても彼の手の中で遊ばれているという感覚が拭えないからだろう。
俺だってそれは感じてはいる。
だが、どこか…いや、所詮他人ごとというか。
ここは自分のステージではないという感覚が強くて、それをリアルに感じることが出来ていない。
それはまだ出会ってそれほど時間が経っていない玲治の事についても然りだ。
彼が“彼”の予想の範囲外に出ることを期待はしている。しかしそれも“まだ”どちらでもいいという感じだ。
先ほど自分でも言ったように、俺は“ゲスト”だ。
そして“彼”はホスト。
楽しませてくれさえすれば文句はない。
「何、ニタニタしてんだよ」
「ん?してたか?」
「あぁ」
気に入らない。
噛み付きそうな目で睨まれ、俺は大いに煽られた。
しかしそれを寸ででこらえる。
「でもまぁ、それくらいでへこたれるお前じゃないだろう?」
玲治はスッと目を細め「当たり前だ」と言う。
「いいねぇ」
玲治の黒くて短くて…とても触り心地の良い頭に手を伸ばそうとしたが、それは残念ながら届く前にはたき落とされる。
可愛くない野郎だ。
「まぁ、せいぜいあがけよ。俺は協力は惜しまないぜ」
そう言うと、彼は「期待はしない」と言ってさっさと歩き出した。
俺はその背中を数歩分見送り、すぐに後を追って足を進めた。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。