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何もかもを壊してやる

ウル織からのグリウル
よみかえさん!

一年もの間付き合っていた女と別れた。
我ながらよく持ったものだと思うが、それは向こうも同じだろう。
彼女の事はそれなりに気に入ってはいたが、けして恋愛が絡むようなものではなかったし、向こうに至っては無意識とはいえ俺を“当て馬”に仕立てようとしていたのだ。
お互いにずれを自覚しながらも、本当によく持ったものだと思う。
だがごっこ遊びとはいえ、一年も一緒にいたのだ。それなりに情は沸いていた。
それでも結局彼女は戻ることを望み、俺はそれを引き留めなかった。
仮に俺が引き留めていたとしたら恐らく結果は変わっていたのだろう。
しかし結果として俺はそれを望まなかった。彼女の裏腹な期待を裏切って。
これで正解なのだと胸を張って言えはしないが、だからといって後悔するほどでもない。
多分、いい落としどころがこういうことだったのだろう。

「ウルキオラ」

名前を呼ばれ振り返ると、しばらく見ていなかった男が険しい顔をして立っていた。
一体なんの用があるのか。
じっと見ていると、彼はぎゅっと眉間に皺を寄せた。
足早に近づいてくると、俺の腕をとり人の少ない場所へと連れていき、そして「あの女と別れたのか」と聞いた。
なんだそのセリフは。
俺がもっと感情表現の豊かな男だったなら、きっと腹を抱えて笑っていただろう。
それくらい彼の言葉は奇妙で、陳腐で、馬鹿げていた。しかもそれを彼は真剣な顔でいうのだ。
一体どういうつもりなんだ?
「どうなんだよ」
黙っていると、彼はしびれを切らしたように続けて言った。
「…誰に聞いたんだ?」
「別に誰だっていいだろうが!」
なんだって彼はいちいち怒鳴るんだろう。
呆れた目を向けると彼は舌打ちをした。
「ウルキオラ」
「五月蝿い男だな。相変わらず」
「てめっ…」
「別れた。これで満足か?」
ギリッと奥歯を鳴らし悔しげな顔。
何がそんなに気に入らないのかさっぱりわからない。
…まさか、この男、あの女に惚れてでもいたのか?
彼は爪先で土を弾き俺の腕を握ると、その腕を引き
「…っ」
建物の壁に俺を叩きつけた。
背中をしたたかに打ち付けた俺は一瞬息を詰めた。
そして文句を言おうと口を開きかけたが、それはすぐに塞がれた。
グリムジョーの口によって。
思わず動きを止めたのは受け入れたからではない。ただ驚き、動けなくなっただけだ。
それなのにグリムジョーは何を勘違いしたのか、俺の口を開かせぬるりと舌を入れてきた。
カッときた俺はグリムジョーの舌に歯を立て、彼を突き飛ばした。
グリムジョーは口許を抑えうめき声をあげたが、俺の怒った顔を見ると愉快そうに目を細めた。
「なんのつもりだ」
「なんだと思う?」
「質問に質問を返すな、バカが」
背をつけた壁に拳をあてる。
前から気にくわない男で、嫌われていることも承知していたが、こんな屈辱を受けたのははじめてだ。
唇を乱暴に拭うと、彼は口角を上げた。
「お前があの女と付き合い出して俺は死ぬほど後悔したんだぜ」
やはり、そういうことか。
彼の言葉を聞き、ヒートアップしていた気持ちがわずかに静まる。
「お前らが一緒にいるところを見るたびに腸が煮えかえるようだったぜ」
彼はその時のことを思い出したのか、非常に険しい表情を浮かべる。
「いくら喧嘩をして相手を痛め付けてもまったく気が晴れねぇ、毎日むしゃくしゃして気が狂うほどだ。わかるか?この気持ち」
わかるわけがない。…が、彼が一時非常に荒れていたのを俺は知っている。
詳細は知らないが、女遊びが激しいとか、警察沙汰になったとか…イールフォルトが手がつけられないと愚痴っていた。
「それでも我慢したんだぜ?まったく、俺も大人になったもんだよな?」
どこが。
手負いの獣だ。
そうイールフォルトが言った時には軽く無視したが、今はそんな彼に同情する。
血走った目が狂気を如実に伝えている。
こんな男、さっさと精神病院にでもぶち込んでやるべきだ。
「おい、聞いているのかよ」
胸ぐらを掴まれて舌打ちが出る。
「なんなんだ。一体…。いちいちつっかかるな」
「あぁ?」
「あの女が目当てだったのなら、さっさとそっちにいけばいいだろう。いまさらこっちに突っかかってこられても、お門違いもいいところだろう」
バシッと手をはたいて言うと、グリムジョーは「あぁ?」と何処のチンピラかというような声を出した。
「なんであの女が出てくるんだよ」
不思議そうなグリムジョーに、俺はふとズレを感じた。
なんだ?
そういう意味じゃなかったのか?
コイツは惚れた女に手を出されたから怒っていたわけじゃない…のか?
「あぁ…そうか」
俺の疑問を読み取ったのか、グリムジョーは鼻を鳴らして笑った。
だが、嘲笑するという感じではない。
何かが…
「あぁ、そうか」
ずれている?
「お前、勘違いしてるぜ」
ニヤリと笑ったグリムジョーに、寒気がした。
なにか、ひどく嫌な予感がする。
ぐっと体を近づけてくる男から逃げ出したくてたまらない。
しかし…体は動かない。猫に追い詰められたネズミの気分。
「グリム…「ウルキオラ」
被せられた声にまたひとつ追い詰められたことを悟る。
その目が笑っている。
獲物の首元に食らいつこうとする猛獣の目だ。
そして悟る。
「お前…」
「あぁ、そうだ」
こいつが惚れていたのはあの女じゃない。俺だ。
そのことに気づいた俺は、なんとも言えない気分になった。
驚いたといえば驚いた。嫌われていると思っていた相手から、まさかそんな感情が向けられるなんて思ってもみない。…だが、本当に思っても見なかったかと問われると、俺はすぐにうなずけるだろうか?
本当に知らなかったか?
全く気づいていなかったか?
いつかこうなると思っていなかったか?
「本当、お前、ギリギリのタイミングだぜ、ウルキオラ」
思考にしずみかけていた俺はグリムジョーの言葉に大げさに肩を跳ねさせた。
ニヤニヤとするグリムジョーの顔が憎らしい。
グリムジョーはそんな俺の内心を無視してぐっと体を近づけると、俺の耳元で言った。

「あの女…明日にでも殺してやるつもりだったんだからな」

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