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人魚姫の足が秘めるもの 02

ちょっとだけ続ける実験
やっぱだめだった。 なんでサイキックものはかけないんだろう。
もう一度くらいもがくかも。

一通りの訓練を終えぐったりとしている俺の側で、ルートヴィヒはファイルに何やら熱心に書き込んでいる。
俺は長椅子にべったりと寝そべってそれを見ていた。
訓練のお陰で俺のSAI値は半分近くまで減っている。
能力を発現したわけではないが、訓練の間に少しずつ削られていくのだ。
体は全く動かしていないが、疲労感は濃い。
訓練に付き合っていたルートヴィヒだって負担は大きかったと思うのだが、彼からは疲れた様子が見られない。これは彼のSAIの最大値が俺よりも大きいということもあるが、力の使い方がとても効率的で理にかなっているからだ。
俺は力の使い方にかなりの無駄があり、SAIにロスが出ているが、彼くらいになるとそれを最小限に抑えることが出来るらしい。
彼自身の能力について、俺が知っていることは少ない。
第一世代の生き残りである数少ない成功例には、俺たち第三世代とは桁外れの力があるというから、さぞすごいものなのだろうとは思うが、彼がそれを行使しているのを見たことがない。
雷…いや、電気一般に通じる能力らしいのだが、聞いても曖昧にはぐらかされる。
「ロヴイーノ」
「あんだよ」
「明後日だが、本田の所にいくからそのつもりでいろよ」
「本田のところに?」
彼はこの研究所の出身で、外で暮らしている能力者の一人だ。
能力者は迫害対象で、無差別殺人も黙認されている存在ではあるが、その能力を隠して…または、その力故に黙認されて市井で暮らしているものも中に入る…ということだ。
「ふぅん」
能力者の中には研究所の中に半ば閉じ込められている立場からそれを望むものも多い。
俺にはそんな生き方恐ろしくて出来ないが。
「大丈夫か?」
「別に。俺に用事なんて…ねぇし」
俺の言葉に彼は少し複雑な顔をし、すぐに書類に向き直った。

また暇になった俺はぼんやりとルートヴィヒの横顔を見つめ、それから目を閉じた。
このところ俺の本来の力…心眼についてはまったく発現の訓練はしていない。
というか、禁止されている。
今は基礎を体に叩きこむ段階だ…とかいわれて。
でも、ちょっとくらい。
どうせやれないし。
居眠りをするふりで目を閉じて、SAIを練る。
この力は俺にしかないから、誰かの見本とかアドバイスは聞けない。
だけど、少しずつ何かをつかめているのは本当なのだ。
俺だけのSAI、俺だけの能力、心眼。
すべてを見通す、神の目…。
閉じられたそれを開き、すべてを…
と、その途端頭に衝撃を受けた。
「イテッ」
目を開けると、バインダを構えたルートヴィヒの姿。
どうやら俺はそれで叩かれたらしい。
「何するんだよ!」
「何…じゃない。“心眼”はまだやるなと言っただろう」
「べ、別にやろうなんて…」
「思ってないわけはないよな」
ごまかそうとしたが、彼には無駄であるらしく、黙りこむとルートヴィヒははぁとため息を付いた。
「焦る気持ちがあるのはわかるが…別に発現しなくても…」
「別にそういうんじゃねぇよ」
これまでに能力を使ったのは、数回しかないが、そのどれにもいい思い出はない。
「だったらおとなしくしていろ」
「…でも、発現しねーと、あんたは困るんじゃねぇの?」
「何故だ?」
「何故って…研究すすまねぇんだろう?」
「あぁ、そんなことか」
「そんなことって…」
それがお前の仕事だろうに、彼は全く興味が無いというように言った。
「別に俺はどっちでもいいんだ」
呆れていると、彼は小さく笑って口を開く。
「確かに研究が進まないとちょっとはどやされるかもしれない。しかしこの時世だからな。能力が発現しないならしない方がいいのかもしれないと俺は考えているんだ。この世界は、能力者には生きづらいからな」
「…あんたは、外に出たいとか考えないのか?」
「考えない…といったら嘘になるが、ここにいる能力者たちがそれぞれ独立するまでは此処にいたいとは思っている」
「なんだそれ」
保護者気分?それとも教師のつもりだろうか。
「それに…外で生まれた能力者たちを保護する必要もあるしな」
「色々考えてるわけだ」
「いや、考えるのは他にまかせている」
出来れば能力者と一般の人々が仲良く暮らせる世界がいいのだとルートヴィヒは言った。
しかしそれは現状では本当に難しいらしい。
過激派の超自然主義集団、同じく過激派の能力者集団…その他色々。
「本田あたりは色々考えているようだから…興味があるなら、今度聞いてみるといい」
「興味なんてねぇし」
「そうも言っていられないだろう。お前は当事者なんだからな」
「お前は違うっていうのかよ」
「俺は…」
俺の問いに彼は苦い表情をしただけで答えなかった。

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