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シガレット 06

ホテルでそのまま朝まで眠るつもりだった。
だがいざ眠ろうとするとどうにもイライラして眠れない。
体だってすっきりとしたはずなのに、どうにも澱が溜まっているような感じが抜けない。
と、そうなると途端に俺という男はジュリアが憎らしくてたまらなくなるのだ。
本当にどうしようもない性分だと思うが…前にも言ったようにこれはお互い様だ。
俺が今こうしてジュリアを殴りつけたい衝動に駆られているように、以前俺は何もしてないにも関わらず彼女にベッドから蹴り落とされた事がある。
俺は頭を掻きながらベッドから降りると、脱ぎ散らした服を拾いつつシャワールームへ向かった。
少し頭を冷やす。
それでもダメならもう帰ったほうがいい。

 *

結局ジュリアを残してホテルを出た俺は、バイクにまたがり携帯をいじっていた。
新八に連絡を取ろうとしてやめた俺は、つい先日無理やりアドレスに登録したばかりの斎藤の番号をプッシュした。
特に意味はない。
…嘘だ。
意味をもたせるのを避けているだけ。
プップップッという発信音の後、呼び出し音がなる。
一回、二回、三回…
長いコール。
六回、七回…
出ろ。
そう口の中で呟いた瞬間、それを待っていたかのようにコール音が途切れ、『はい…』と少しだけくぐもった声が聞こえた。
斎藤の声だ。
そう自覚した途端、俺は胸が高鳴るのを感じた。
「寝てたのか?」
興奮を悟られぬように意識して声を低めると、少しの間を置いて『何時だと思ってるんですか』と不機嫌な声が返ってきた。
それがまた不思議と俺の心を浮つかせる。
「さぁ、何時だ?」
『二時過ぎ…』
ぶすっとしたような声に思わず笑いが溢れる。
「そりゃ悪かったな」
『切りま』「今から迎えに行くから準備しとけ」
ムッとしたような声を遮るように言って俺は携帯を切る。
ついでに電源も。
これが相手が総司なら完全に無視を決め込むだろう。
平助ならば、半分寝た状態ではあるだろうが外に出てくるだろう。
だが斎藤はどういう反応をするかイマイチ不明だ。
もしかしたら不機嫌な顔で俺を待っていてくれるかもしれないし、総司と同じように無視を決め込むかもしれない。
出来れば待っていてほしいと思うが、そうなったらなったで…ちょっと困る。
イロイロと。
「にしても、こないだ住んでるとこ聞いといてよかったぜ」
俺はヘルメットをかぶると、スロットルを回した。

 *

走りだしてすぐに俺の頭からジュリアの事は消えていた。

バイクをかっ飛ばして、斎藤のすむあたりに向かう。
彼の住んでいる場所は、新興住宅街の中でもちょっと高いランクの家が並ぶ辺りにあった。
しんと静まり返った住宅街に俺はバイクを降りてエンジンを切り、ころころと転がす。
**公園を通り過ぎて、2つ目の角を右折…
「と、このへんのはずなんだが」
一軒一軒表札みていくのか?
それは勘弁…と、数軒先の家から誰かが出てきた。
小柄な男。
「斎藤!」
声とともに手を上げて合図を送ると、斎藤は街灯の下、無表情ながらもものすごく機嫌が悪そうに見えた。
黒いパーカーにジーンズ。髪の一房がぴょんと跳ねている。
「まずいなぁ…」
思わず内心を吐露すると、「なにがですか?」とすぐ傍までやってきた斎藤が不機嫌な顔のまま言う。
俺はそれを適当にごまかし、ここから100キロ以上離れた場所の海を見に行こうと誘った。

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