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人魚姫の足が秘めるもの

SFサイキックものが何度かチャレンジしたが上手くいかないので、
別のアプローチの方法を考える実験。
気が向いたら続く
 読み返してない

カタカタカタっとキーボードをすごい速さで打つ男の白衣を睨みつけ、ため息をつく。
そして「まだかよ」と聞けば、彼は「もう少しだ」と言った。

白いボクサーパンツ一枚の俺の体には無数のパッドが貼り付けられていて、そこから伸びる線はたくさんの機器につながっている。
心電図や脳波、筋電図?えーっとそれから…よくわからないが、俺の状態を監視しチェックしている。
これは別に俺の体が弱いとか、病気を持っているとかじゃなくて…、俺が所謂デザインチャイルドというやつで、超能力を持っているからだ。
“超能力”と一言に言っても、やれることはそれぞれ違う。
例えば触れてもいないものを動かしたり、壊したりする能力。これはかなり一般的で、力に目覚めたデザインチャイルドの半数くらいは力の強弱はあるものこの能力を持つ。
他にも魔法のように炎を自在に操るものや、怪力を持つものなんかがよく知られている。
その中でも俺の能力はかなり特殊な部類に入っていて、“心眼” と呼ばれている。
能力を一言で言うのは難しいが、建物に遮られて見えないはずの向こう側が見えたり、特定の誰かが見ているものをジャックしたりできる。
…といっても、俺の能力はかなり不安定で、狙って発現させることはまだ出来ないし、そもそも発現した回数すら数えるほどしかない。

「ロヴィーノ?」

名を呼ばれてはっと顔を上げると、いつの間にかルートヴィヒ…俺の担当医が手を止めてこちらを見ていた。
「どうした?」
「…別に。それよりまだ?」
「いや、もう終わったところだ」
それを聞いて俺は体に手を伸ばしたケーブルに手を伸ばしたが、それは寸前でルートヴィヒに止められ、彼の手によって丁寧に剥がされていった。
パッドが剥がされても、クリームが塗られていたせいで気持ちが悪い、
「どうだった?」
「問題ない。SAI値も安定している」
ルートヴィヒが丁寧に計器を外しながら言う。
SAI値とは、俺達デザインチャイルドが能力を使う際に必要なもの…らしい。
ゲームでいうMPみたいなもんだと考えてもらえばわかりやすい。
そのSAI値も人によって多いとか少ないとかあって、俺はまぁ真ん中くらいって所だ。
「シャワーを浴びたら、もう一度訓練をしてみよう」
ルートヴィヒの言葉に俺はため息をつく。
「またかよ?」
「あぁ、毎日少しずつでもやっていったほうがいい。今日は共振を試してみる」
「あんたと?」
「いやなら他を呼ぶが?」
彼の言葉に俺は弱く首を横にふってルートヴィヒで構わない事を告げる。
前に一度、ルートヴィヒの変わりにきた男と訓練をしていて、俺は酷い目にあったことがある。変な具合に力が混じりあい…何があったかは言わないが、俺は精神的に酷いショックを受けるはめになった。
それからはいくら堅物で面白味のない男だろうと、ルートヴィヒ以外を相手にはしたくなくなった。
「ではシャワーを浴びてこい」
すべての計器が外され、俺はベッドから立ち上がった。

俺たちデザインチャイルドは一般的には“三代目”と呼ばれている。
能力が飛び抜けて高いものは輩出していないが力も能力も一番安定していて、扱いやすい世代といわれている。
最初期に“量産タイプ”となるだろうと言われていたのはそのせいだ。
だがそうならなかったのは、もっと優秀な第四世代が生まれたから…ではない。(第四世代と呼ばれるやつらもいるにはいるが、彼らは実質的には俺たちと同じでマイナーチェンジにも満たない微調整が施されただけの子供たちだった)
結局俺たちは量産タイプと呼ばれず、また影では“ラストチルドレン”と呼ばれているのは、世論が能力者=遺伝子を意図的にいじった“デザインチャイルド”に突然NOを突き付け、“超自然主義”なるものが世界的に大きく取り上げられたからだ。(超自然主義とは…まぁ簡単にいうと、デザインチャイルドは神の領域を犯しているから、遺伝子をいじったりするのは良くないという考え方だ)
これによりあらゆる国にあったデザインチャイルドの研究機関(中にはえぐい施設も数多くあり、こいつらのせいで世論からの攻撃が激化した)は閉鎖や封鎖された。
そして残ったのは、俺たちが所属するAPH総合研究所のようにでかいところがいくつかと、後はヤミでやってるやつらしかいない。
俺たちのところだって大々的な研究は行われておらず、もう何年も新しい子供は生まれていない。
デザインチャイルド、“能力者”は世間では迫害対象であり、力の弱いものは“浄化”の名のもとに一般人によって狩られ殺される運命だ。
それに反発した能力者集団によるテロ(蜂起?)が時々起こっているが、これは焼け石に水どころか事態をいっそう悪いものにしているに過ぎない。
それがいまの現状だ。

シャワーでクリームを落とし、さっぱりした俺が白いTシャツにジーンズという格好で部屋に戻ると、ルートヴィヒがバインダーとファイルを持って待っていた。
「じゃぁ行くか」
俺はルートヴィヒに頷き、彼の後を追って部屋を出た。
ちなみに俺の担当医であルートヴィヒもまた俺と同じ能力者だ。
ただし彼は第三世代ではなく第一世代。
実験体の半数が胎児のまま死に、生まれでたものの半分もまもなく死に、育ったものの半分が発狂し、まともだった内の半数が能力が開花せず…そして、たった一握りだけ残ったデザインチャイルド。
第二世代、第三世代の基礎になった能力者の一人だ。

まるで宇宙ステーションみたいな綺麗で傷ひとつない廊下を歩き、俺達はエレベーターに乗って地下へと向かう。
地下には特別中も外も頑丈に作られた施設があり、能力を使った訓練や実験はその施設で行うことになっており、また能力の制御が未熟で、暴走の危険があるものの住居もこちらになる。
廊下の壁や天井にはあちこちに通気孔があいていて中の空気を清浄にすると共に、孔につけられた監視装置によって異常がないかチェックされている。
ポーとリトという仲良しの二人組が、俺に気付いて小さく手をふり廊下を走って何処かへ去っていった。
能力はなんだったかまでは覚えていないが、彼らもまた第三世代だ。
「向こうの部屋を使おう」
俺達は奥へと進み、A206と書かれた部屋に入った。
部屋は2つにわけられていて、奥側の部屋が訓練スペースになっている。
手前の部屋と奥の部屋の間にははめ込み式の大きな窓があり、手前からは奥の部屋がよくみえるようになっているが、それはマジックミラーになっているので向こう側からは手前の部屋は見えないようになっている。
俺達が部屋に入ると、ルートヴィヒは部屋を施錠し、内線電話で管理室の職員に今から部屋を使う旨を伝えた。
奥の部屋の中にはパイプ椅子に長机の他、積み木や知恵の輪、ぬいぐるみなどが入った道具箱にホワイトボードがある。他の訓練施設も大体全部こんな感じだ。
ルートヴィヒは長机の上に持っていたバインダーなどを置くと、パイプ椅子を二つ並べて片方に俺を座らせた。
そして自分もそれに座る
と「早速だが始めるぞ」と両手を出す。
俺は少しうんざりしながらその大きな手に一回りは小さな自分の手を重ねた。
「まずは心を落ち着け、自分の中にあるSAIを感じるところからだ」
ルートヴィヒの言葉に俺は目を瞑って深呼吸をいくつかしながら体をリラックスさせていった。
そうして自分の中を覗き込むと、仄かに暖かな力の流れを感じる。
「力を感じたらそれをかき回すイメージで少しずつ胸の中心に集めろ」
今やっているのは準備運動のようなもので、SAIを自在に操るための基本的な訓練だ。
「ゆっくりと散らばったSAIを絡めとるように集めて」
慣れれば意識しなくてもSAIを自由自在に操れるらしいが、俺はまだその段階にはない。
「集めたら、それをゆっくり右側、左側に揺らしてみろ」
ちなみにSAIは力を使えばその分だけ減り、力を使いすぎると俺たち能力者は酷い倦怠感を覚え、ひどくすると倒れて昏睡状態に陥ってしまう。
「よし、次は集めたSAIを全身にまんめんなく広げるんだ」
SAIは人によって容量が決まっており、訓練によって容量がふえるなんて事はない。
またSAIの回復も人によってまちまちだ。
「全身に行き渡ったら、今度は血液のように体内を巡回させるんだ」
俺の場合は、寝れば大抵は回復するし、普通に暮らしていても減っていれば少しずつ回復するらしい。
ただ中には一週間かかって半分回復するとか、他人に分けてもらわないと回復できない人もいる。
「よし」
全身がじんわりと温まって目を開けると、満足そうなルートヴィヒと目があった。
「随分よくなったな」
彼は言う。
「昔は今の半分もうまく力を集められなかった上に倍の時間がかかっていた。まだ100点はつけられないが、70点はつけられる」
褒めてんだか貶してるんだか。
「次は共振…の前に、“受け渡し”をためすぞ」
受け渡し。
俺はこれが苦手だ。
いや、たいていの能力者は苦手だと思う。
受け渡しというのは言葉そのまま。自分のもっているSAIを相手に渡し、そして相手のものを受け取るというものだ。
何故苦手か…というと、SAIには個性がある。個性というか…それぞれに持っているSAIにはその人の特徴というか、匂いというか…そんなものが染み付いていて、受け渡す分にはまだいいが、受け取るのはかなりキツイ。
相手にもよるが、ビリビリとしびれのようなものを感じたり、冷たさを感じたりする。
相性が悪い同士の上に、受け渡す量の調整がきいていないと、結構大変な事になるらしい。
俺とルートヴィヒは相性がいい方だけれど、それでも相手のものを受け取るのは苦手だ。
それほど痛いわけでもないのに、嫌な静電気みたいなかんじ。
「まずはお前から俺に渡してくれ。ほんの少しでいい」
仕方がない。
俺はまた目を閉じ、少しだけ力を手のひらからつながったルートヴィヒに渡した。
これは簡単だ。
目を開くと、コクンとルートヴィヒは一つ頷いた。
「じゃぁ次は俺からだ」
もう一度目を閉じて、受け止める準備…いや覚悟をしていると、「あまり硬くなるな」とルートヴィヒに言われ力を抜く。
その途端、ルートヴィヒから力が送られ俺はビクンと体を竦ませた。
「大丈夫か?」
「……あぁ」
「隔離はするなよ。少しずつでいいから吸収しろ」
出来れば吐き出しちまいたい。
だがしかたがないので俺はそれを飲み下し、ゆっくりと消化する。
15秒くらいかかってゆっくりとそれを自分のものにすると「大丈夫か?」ともう一度声を掛けられた。
「あぁ。大丈夫だ」
頷くと、ルートヴィヒは少しほっとしたように頷いた。
「具合はわるくなっていないな?」
「大丈夫だって言ってんだろ」
しつこい。
ムッとしていうと、彼は逆に安心したようだ。
「元気みたいだな。じゃぁ、次だ」
ぎゅっと手を握られて俺はため息をついた。

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