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吐息さえも聞こえない

フルスロットル系。
さらっとキャッスルヴァニアとコラボ。
知らなくても全然おk だと思う?

この世界はとても不安定で、あちこちに穴が空いている。
そこからはあらゆるものが溢れだし、そしてこの世界からも色んなものが消えている。
なのに住んでいる彼らは殆どそれを意識していない。…いや、意識出来ないらしい。
俺のいる世界だって安定はしていなかったが(だからこそ人の手でアマラへの道が開けたのだ)ここまでじゃない。
何しろある日突然に娘がまったく別人の息子に変わっていたり、歯医者が弁護士をやりだしたり、はたまた神父が悪魔に変わっていてアンチキリストの宗教団体に変わっていたりするのだ。
それに加えて時間の逆行やスキップ、加速なども頻繁に起こっている。
そして時々ではあるが、この世界を意識的に“ショートカット”に使ったりしているものまである。
これでよく世界が潰されたり、かき消えたりしないものだと不思議でたまらない。
とにかくこの世界は摩訶不思議だ。
悪魔の俺だって、なかなかこんな面白い世界は見つけられない。

今もまた幽霊のようにある世界から現れた幽霊が、この世界で一瞬だけ具現化してまたすぐに何処かへ消えていった。
亡霊…生き霊?をぼんやりと目で追いかけといると、「どうした?」と声をかけられた。
いつの間にかすぐ後ろにいたダンテだ。
彼は手にケチャップがいやになるほどのったホットドッグを持っている。
日本人の…元日本人の感覚からすると、ダンテの手の中のそれはあまり旨そうには見えないのだが、彼はいつだってそんなものばかりを好んで食べている。
一口どうだとすすめてくるのを断り、俺は先ほど見た光景を話して聞かせた。
誰かがこの世界を通りすぎたと。
「この世界ってほんと変だよね。それってあんたは意識できてる?」
「意識?」
「そう。あるはずのものがふいに消えたり、いないはずの者があらわれたり」
俺の言葉にダンテは少し考え、肩をすくめた。
「ある程度…としかいいようがねぇな。意識してれば気づく、そうでなきゃ気づかない」
「でも変なのはわかる?」
俺が聞くと、彼はまた肩をすくめて見せた。
「どうかな。俺にとっちゃこの世界が普通なんだ」
「なるほど。だからあんたみたいなのが生活していけるわけだ」
普通かどうかはわからないが。
「だろうな。それにもしかしたら逆かもしれないぜ?」
「逆って?」
「つまり、俺たちみたいなのが歪ませてる。もしくは、お前が歪ませた」
ダンテの指摘に俺は目を見開きなるほどと思う。
「その可能性は否定できないね。でもだとしたらもう一つ可能性がある」
「ん?」
「歪んだ世界を支えてるのがあんたや俺って可能性さ」
「なら、両方って事もありうるな」
ダンテはにやりとしたあと手に持っていたそれにかぶりついた。
口の回りにはべったりとケチャップ。
仕方のない男だ。
睨むと、彼は指でそれをすくってベロリと舐める。
本当に仕方のない男だ。
呆れてため息をつく俺に、彼は何が楽しいのか自慢げにフフンと鼻を鳴らした。
「やんねーぞ」
「いらねーよ」
顎に手をおき通りを見ていると…
「あ」
またいた。
しかしあれは…
「すごいな」
あぁいう服装をなんと言うのだろう。
中世の貴族風とでも言おうか、立て襟の豪奢な上着にヒラヒラとしたスカーフにブラウス、そしてきっちりと着込まれたベスト。
ポケットの金時計に繋がっていると思われる金の鎖がボタンに繋がっていおり、ベルトは洒落て二重に締められている。
腰にはサーベルと思わしき鞘に入った長物を下げており、黒い細身のパンツに、膝のあたりまでの長いブーツを合わせている。
それだけでも十分に目立つのだが…
「なんて顔だ」
その顔は美しいなんてもんじゃない。
白磁の肌に、まるで美の神様が自分に似せて作ったかのように美しい。
背筋が凍るような美しさというのは彼のような男の事を言うのだろう。
「人間離れしてるっつか」
「むしろ人間じゃないんじゃないか」
独り言にダンテが口をつっこんできた。
ちらとそちらを見ると、彼もまた的確にその男を捉えていた。
意識さえしていれば変化や異物に気づけるのは本当らしい。
ダンテの横顔は微笑んでいるように見えるが、それは楽しんでいるというより、ひどく神経質になって警戒してきるように見えた。
そんな必要はないのに。
あれはただの通行人だ。
「おい」
ダンテの声に視線を戻すと、あの美しい男の後ろをおって女が飛び出してきたのが見えた。
これまた時代がかった服装だ。
ヴィクトリア風?フォークロア風?それともまったく違うものだろうか。
服飾に関してはほとんど知識がないが、中世ヨーロッパ風の服装だ。
うねる金の髪を持った二十歳前後に見える美しい女だ。
前を行く男はまったく人間離れした人形にすら見える男だが、彼女の方は人間らしいはつらつとした健康的な美しさがあった。
「いい女だ」
「たしかに。でも妙な組み合わせだね」
「あぁ。でも、頭は良くないみたいだぜ。あんな怖そうな兄ちゃんと一緒にいても不幸になるばかりなのに」
「さぁどうかな」
俺はダンテのその意見には賛成できない。
「不幸の基準なんて人それぞれだろう」
言っている内に男は霞のように身体を薄れさせると消えてしまう。
彼女もまたその内消えてしまうだろう。
「彼女は不幸そうには見えなかったな」
「あの男に惚れてるから?」
「さぁ。それは」
彼女は男を追って消えていった。
彼らが消えたあたりはしばらく空間がたわんでいたが、やがて修復された。
まぁこの世界のことだから、一つがふさがった途端に別の穴が空いたとしてもおかしくはないが。
「いなくなったな」
「うん」
「他のやつらはまるで気づいちゃいなかったな」
「まぁそうだね」
そんなものだ。いつだって。
「お前も似たような事ができるのか?」
「うぅん。似てるといえば似てる」
俺は首をひねった。
「ただし…まぁ例のごとく色々と制約はあるよね」
悪魔を万能だと思っている人間もいるようだが、もちろんそんなことはない。
万能ならば、そもそも人間と取引しようなんて考えるわけがないのだから。
「そんなもんか」
「あぁ、自由だというなら、あんたや人間の方がよっぽとだ」
何しろ悪魔なんてものは、死ぬことすらままならないのだから。

「それにしても遅いね」
後ろにあるデパートを振り返ると、ダンテはうんざりした顔であぁと同意した。
現在後ろのデパートの特設会場では、“詫びと寂、日本の芸術展”なるものが行われていて、ダンテの兄であるバージルさんがそちらにむかってまだ出てこないのだ。
「もう四時間だよ」
「なにがそんなに面白いんだかな」
芸者もいない。天ぷらも寿司も食えねぇ。…と、30分で会場を飛び出したダンテが言う。
「そんなものを期待している方がどうかしてるよ」
今回の展示は、戦国時代の武具や茶の道具、それから掛け軸や浮世絵といったものだ。
「あんたももうちょっと教養ってのを身に着けたほうがいいんじゃない?」
ダンテと違って、バージルさんは日本に造形が深いらしく、一つの展示会場の人を傍に呼んで色々と説明を聞いていた。
「一度、お前の通路とやらを使って、バージルのやつを日本に連れてってやれよ」
ダンテの提案はやぶさかではないが、バージルさんの中の日本のイメージというのは、侍や殿様の辺りのようでオススメはできない。
それに何より…
「飛行機で行くほうが安上がりだよ」
「ん?」
「だから、俺に頼むと高く付くよって話」
まぁ多少なら友情価格で負けてやらないこともないけれど…。
ニヤリとそう笑うと、彼は肩をすくめて首を横に振った。
そして…
「喉が渇いたからコーク買ってくるわ」
と、デパートの方に身を翻した。
全く…本当にこの男は。
これで家に帰ったら帰ったで、アホみたいに食うのだから燃費悪すぎだろう。
「ダンテ!俺にも何か買ってきてくれ」
そう思いつつ、彼の背中に呼びかけると「ショウユを買ってきてやるよ!」とダンテは背中を向けたまま右手を上げた。
それは調味料だ。

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