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胡蝶の夢

プーの頭の上の小鳥が神ロだったら…ってネタが降って湧いたので、
それを勢いのままにかく。
特にヤマもオチもない。
読み返さない

俺はたった今、自我を持った。
いや、自我を取り戻したという方が正しいのか。気がつくと俺は黄色いふわふわの小鳥で、そしてプロイセンの白金の髪の上に座っていた。
そう、プロイセンだ。
今は夜…か?窓の外は暗い。
彼は“いつものように”日記を書いている。
だが何故だ?
俺は首を傾いだ。
何故俺は彼がプロイセンだとわかるのだろう。
何故俺は彼が几帳面に毎日日記をつけていることを知っているのだろう。
…何故かひどく懐かしい気持ちになるが、それが何故なのかもわからない。
はてと考え、そして俺は自分自身が何者なのかもさっぱりわからないことに気づいた。
俺は…一体何だ?
小鳥?
いや、違う。
俺はそんなものではなかったはずだ。
だが、思い出せない。
一体俺はなんだった?誰だった?何者だった?

じっと考えていると、足場にしていたプロイセンの頭が揺れた。
「よーし出来上がったぜ!」
どうやら今日の文の日記も書き終わったらしい。
書き出しは見なくてもわかる。“今日も俺様はカッコ良かった”だろう。彼の日記は、大抵そんな書き出しで、自分がどれほどかっこよく優れているかを嘘9割で書き上げているものばかりだ。
ケセセっという特徴的な笑い声にもやはり聞き覚えがある。
だが…やっぱり分からない。
なぜ…。
プロイセンは日記帳をパタンと閉じると、椅子から立ち上がり機嫌良さそうな鼻歌を歌いながら軽い足取りで部屋を出た。
まったく、相変わらずだな…と思い、そしてまた疑問に首をかしげる。
しかしきっとこの問いに答えは出てこないのだろうという予感があった。
俺はプロイセンの頭の上にのったまま自体を傍観することにした。
それにしても…この男、俺が頭の上にいるということに気づいていないのだろうか。それとも、頭の上俺がのっていたところで何とも思っていないのだろうか。
「おーいヴェストー!」
彼は廊下から階下へ下る階段についた手すりから見を乗り出し、下に向かってそう叫ぶと耳を済まし、すぐに階段をトントントンと降りていった。
「ヴェストー?どこだー?」
西(ヴェスト)?その言葉に心当たりはないが、彼の声の具合から言ってかなり親しい人間ではないかと俺は思う。
しかし“西”というあだ名は解せない。
一体どういう意味か。
いや、考える必要はないだろう。
一階にその答えはあるのだろうから。
「ヴェストどこだ?」
彼は階段を降りると、左側の部屋を開けた。
どうやらそこは執務室らしい、と、考えた時にはもう扉は閉じられている。
明かりが落とされたその部屋には誰もいなかったのだ。
彼は次に階段から降りて右側の部屋にはいった。
そこは広々としたリビングルームになっていた。
明かりが眩しいくらいにともされていて、俺は目眩を覚えた。
これは…火の光ではないようだ。なんだろう。明るい割に温度を感じない。
入って左手には大きなガラス窓があり、今はカーテンが閉められているが、その向こうは庭が広がっているだろうと予想がつく。その前にゆったりとつくられた応接セットに…なんだろう、壁には大きな黒い板が貼り付けられている。
絵画ではない。
真っ暗で信じられないくらいになめらかなそれは、うっすらと部屋の中を反射させて移している。
右手にはダイングだ。そしてその向こうに台所があるらしい。奇妙なレイアウトだが、おそらくこれが“今の”スタンダードなのだろうと俺は1人で納得した。
台所からは良い香りが漂ってくる。
甘く、香ばしい香りだと俺が思った時には、プロイセンはそれにつられて歩きだしている。
まったく節操のない。男は台所には入るものではないというのに。
「ヴェスト?」
台所を覗くと、そこには誰もいなかった。
ただ台所の奥にある廊下の方に面した引き戸が空いていた。
それを見て「なんだ、便所かよ」とプロイセンはいい台にもたれ掛かった。
どうやらそこで“西”という男を待つことにしたらしい。
俺はそう了解し、台所を見渡した。
なんだか奇妙なものがたくさんある。
なめらかに磨かれた金属、粘土…?のような材質で出来たボール。大理石を綺麗に磨き上げたようなシンク。甘い匂いは…シンクの下の方からしている。
よくわからないが…ガラス越しに赤い光が漏れているのが見えた。
と、その時、廊下からコチラの方に近づいてくる足音に気づいた。
プロイセンはパッと寄りかかっていた体を起こし、やって来るであろう人を迎えるように立つ。
そして半開きになっていた扉から姿を表したのは…

「ヴェスト!」
「兄さん…夜なんだから騒ぐのはやめてくれ。それにまだ焼きあがるまで…」

弾んだプロイセンの声に、それを宥めるような“西”と呼ばれた男。
しかし、俺はそれをほとんど聞いていなかった。
なぜなら…そこにいたのは…
プロイセンに“西”と呼ばれている男は…

“俺”?

現れたのは金の髪を後ろに撫で付けた体格のいい男だった。
美形だと目を瞠るような顔立ちではないが、一般的にいって整った顔立ちの男は、よく見ればプロイセンに似ているような気がする。強面ではあるが“俺の血縁者”は大体そんな感じだ。
声は低くてよく通る。

彼は、俺だ。

何故そう思うのかわからなかったが、俺は確信に近い思いを抱きながらプロイセンと話している彼を見つめた。
黄色い小鳥の姿の俺。
やはり記憶はまっさらだというのに、彼の姿には強い既視感がある。

彼は俺だ。
そして彼が俺だ。

そんなことがあるはずもないのに、俺は何故かそう確信を持っていた。
胸が熱い。
根拠のない感動に体が震えた。

彼は俺だ。
俺は彼だ。
そして…

とても愛おしいという気持ちがふつふつと湧き上がった。
熱い思い。
それが何に寄るところなのだろうと俺は考える。
この気持ちは一体なんなのだろう。
なんだかずっと探していたものに出会った時のような。
ずっと失っていた何かを取り戻した時のような。
それともずっとずっと長く願っていたことが叶ったかのような…。
俺はいてもたっても居られない気持ちになり、翼をはためかせると飛ぼうという意識をしたわけでもないのに、体がフワリと浮き上がった。
俺はそのまま“彼”、そして“俺”の方へと向かい彼の肩に止まった。
するとそれまで俺のことを完全に無視していた二人の視線が一斉にこちらに向き、俺はドキリとした。
「お、どうしたんだ?小鳥、ヴェストにくっつくなんて珍しいな」
驚いたようなプロイセンの顔。“ヴェスト”と呼ばれた彼の方を見ると…彼もまた目を丸くして俺の方を見ている。
水色の美しい瞳に映る俺。
俺は感動にぶるぶるっと震えた。
あぁ、どうしよう。本当に嬉しい。嬉しくてたまらない。体中の毛が逆立つような感覚。
またも俺はいてもたっても居られなくなった。
俺はまた翼をはためかせ浮かび上がると、部屋の天井の辺りをくるくると回った。
嬉しくてたまらない。
天にも昇る気持ちだ。
このまま俺は泡になって海の藻屑になってもかまわない。
このままどこまでも飛び回り風になって消えてしまってもかまわない。
このままこの瞬間に雷に打たれ消し炭になってもかまわない。

ピィ!

俺が甲高く啼くと、プロイセンがおかしそうに腹を抱えて笑った。
そしてもう一人は目を丸くしたまま俺を不思議そうに見つめている。
俺はくるりと宙返りし、またピィと高く鳴いた。

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