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リトル リドル ロマンス

砂漠のバザール
リディアの話ですが、モブ出張ってます。
近頃こんなんばっか。ごめんなさい。 途中で飽きてるorz

砂漠のオアシスにはガラクタ街といわれる場所がある。
中古の家具や食器、洋服などから安い酒や武具、店先で揚げパンや庭で摘んだような花を売る店が雑然と並んだ通りで、商品は基本的に安価なものばかり。
一つ一つの店は小さくひしめき合い、また両側から店が迫るようになっていて通路は狭い。売る側も買う側も下流市民の者たちが中心で、慣れてないとスリやぼったくりにあうような通りは…しかし、その雑然とした雰囲気や時折ある掘り出し物に惹かれて上流階級の者もお忍びで現れたりする。

 *

ムタファはガラクタ街で生まれ、ガラクタ街で育った。
物心がついた頃には親から細工師の仕事を親からならっており、十歳になった今はイヤリングや指輪といったアクセサリーを店先で作り売っている。
学校へは通っていないが両親から簡単な文字や計算を習ったので商売にはまったく支障がない。
ムタファには遊ぶ時間はほとんどないが、このあたりに住む子どもは大抵そんなものなので彼は気にしていない。
彼はその日も親の店の前にゴザを敷き、その上に座って細工師の仕事をしていた。
小さな細い金属を鎖のように編むという細かい作業だ。
単純で面白味のない作業だが技術はいる。
まだ小さなムタファの手は鎖を編む作業にとても向いていて、また彼自身その作業が好きだった。
単純な作業と特に何も考えなくても手は勝手に鎖を編んでゆく。
ムタファはそうしながら色んな事を思想するのだ。
今日の夕飯や昨日見た夢について。店に流れてきたルビーの指輪について。ようやく歩き始めた妹について。その妹に語り聞かせるお話について。砂漠にすむ大きな蠍について。数軒先の店先で売られている香ばしいチーズについて。
わたいもない思考だが、彼はそうやっていろんなことを考えながら鎖を編むのが好きだった。

そしてその日、彼が頭に思い浮かべていたのは一年ほど前にやって来た少女の事だった。
その子は一体いつからいたのか。気がつくと、ムタファの手元を覗き込むように目の前にしゃがみこんでいた。
年は六歳くらい。
見事な緑色の髪に、同じグリーンの衣装を纏っていた。
彼女はムタファが手を止めたのに気づくと彼を見てニコッと愛らしく微笑んだ。
そして『それ素敵ね』とムタファの手元を指差したのだ。
彼はその時、赤い小さな石を使ってイアリングを作っていた。…といっても最初から最後までつくっていた訳ではなく、石と台座は元は指輪と青い石のはまっていたイアリングで、店に流れてきた盗品だ。
それをムタファは分解して赤いイアリングに仕立て直し、調整をしていたのだ。
『綺麗ね。赤い石』
目をキラキラさせている子は、ここらに住んでいる子供ではなかった。
ガラクタ街に住んでいる子供ならムタファはみんな知っていたが、彼女を見たことはなかったからだ。
多分砂漠をわたってきた旅商人の子供だろうと彼は思った。そして、子供じゃ商売にならないなと思った。
追い返してもよかったが、彼女がとてもキュートだったのでムタファは相手をしてやることにした。
名前はたしかルディだかラフィだかそんな名前。
とても人懐こい女の子だった。
ムタファは彼女にワルガキの友達のことや父が昔王冠の細工を任されていたこと、いつか砂漠の月と呼ばれる石を使ってアクセサリーを作りたいといったことを話した。
一方彼女は森での生活の事を話した。
砂漠にはいない森にいる動物についてや秋にとれる美味しい木の実について、村長さんのおくさんが作る美味しいパンについて。
彼女の話はムタファにとても面白く、ムタファの話もまた彼女にとって興味深いものであったらしく話は弾んだ。
二人は交互に話をして、お互いに不思議に思ったことやわからなかった所を質問しあい、教えあった。
一時間ほどもそうして話しただろうか。気が付くとムタファは彼女のことがすごく好きになってしまっていた。
彼女がとても可愛いのはもちろんだが、すごく波長が合うのだ。
だから『そろそろ行かなきゃ』と彼女が言って立ち上がった時は本当にショックを受けた。
まるで半身をもぎ取られるような…とは流石に言い過ぎかもしれないが、それくらいショックを受けたのは本当だ。
彼女もまた寂しそうな顔をしていた。
ムタファはこのまま別れるのは辛いと、彼女に作っていたイアリングの片方を渡すことにした。
二つの内一つは出来ていたから、完成していたものを。
そして今度あった時にもう片方をあげると約束した。
彼女は嬉しそうに笑ってイアリングを手にとった。
二人はきっとと約束して別れた。

可愛い子だったな。また会いたいな。
ムタファは手元から顔をあげると、近くに置いてある小さなかごに目を移した。
そこには指輪の台座や、中途半端な長さの小さな鎖、少し欠けた石などと一緒に、赤い石のはまった片方だけのイアリングが入っている。
彼女は今どこを旅してるんだろう。
まだ僕の事を覚えていてくれるかな?
もし世界中を旅している商人なら、ムタファのいる砂漠にはまだまだ戻ってこないかもしれない。
でも…
まだかな?
ムタファは待ち遠しくてたまらなかった。
彼は一年ほどで腕を上げ、少し複雑な細工ができるようになった。
今度あったら違うのをあげたいな…なんて考える。
今度は自分が最初から最後まで作ったものを。
それはすごくよい考えに思えた。
だけどなんだか恥ずかしいな。
ムタファは頬を赤くした。
その時だ。

え?

ふと視線を移した雑踏の中に、鮮やかな緑が見えた。
ムタファの鼓動がドクンと一つ大きくはねた。
そしてムタファは気がつくと小さなカゴの中から例の赤いイアリングの片割れを取り出し走りだしていた。
人ごみをかき分け、時には人を押しのけ。
「どいて!どいてってば!」
まだ大人の半分ほどの身長しかない子供が走り回るのを大人は迷惑そうにしていたが、ムタファはそれに構っている暇はなかった。
「ちょっと、邪魔だよ!もう!」
まだ声変わりをしていない高い声を張り上げ、大人たちの間を駆け抜ける。
人々の間にまたちらっと緑が見えた。
「待って!」
ムタファは声を上げ、次いで彼女の名前を呼ぼうとしたのだが、その名前が曖昧で確信が持てない。
「あぁ、もう!」
自分の不甲斐なさに歯噛みし、しかしここで見失うわけにはいかないと速度を上げ、
「待って!!!」
そしておしりの大きなおばさんをかき分けた先に見えた緑をぎゅっと引っ張った。

「え?」

「あ」

振り返った“女の人”を見て、ムタファは間違った!と焦った。
なぜなら彼が探しているのは10歳にも満たない少女であり、十代半ばの女の人ではない。
ムタファは顔を真っ赤にして間違えてしまった緑色の衣装、緑色の髪をもつ美少女を見上げた。
「あ、あ、あの…」
間違ってしまった。
ごめんなさい。
そう言おうとしたのだが…
「お姉ちゃん…?」
何故か本能が…彼女こそがそうだ…と告げている。
でも、そんなはずがないのに…
ちょっと癖のある鮮やかなグリーン、そして顔立ちは確かにあの幼い彼女の面影が色濃い。
「ねぇ、もしかして…お姉ちゃん、ルディ…とかラフィ…って女の子しってる?」
ムタファが女の人の衣装を握ったまま聞くと、彼女は「え?」と不思議そうに首を傾いだ。
「ルディ…?」
「確か、そんな名前だと思うんだ。1年くらい前に此処にきてた…あの、女の子なんだけど」
この辺りでは見かけないようなハッとする美人を相手にムタファはあたふたとしながら、あの時の少女のことを彼女に話した。
すると急に話しかけられて困惑していたようだった女性が「あ」と何か思い至ったような声を上げたのだ。
「もしかして、それ“リディア”じゃない?」
「え、知ってるの?」
リディア。
もしかしたらそんな名前だったかもしれない。
そう言うと、彼女は「もちろん知ってるわ」と言って、にっこりと微笑んだ。
その顔が一年ほど前にみた少女のものと余りにも似ていたので、ムタファは驚いて目を見張った。
「もしかしてリディアのお姉ちゃんなの?」
ムタファが聞くと、少女は少し戸惑ったように間をあけた後「うん」と頷いた。
「似てる…かな?」
「うん、そっくり!」
リディアもきっと彼女と同じ年になれば、全く同じ姿をしているにちがいないとムタファは思った。
それに少女は小さく、そして少し寂しそうに笑う。
「リディアはいないの?」
「うーん…そうね、小さいリディアはいないかな」
その言い方に少し引っかかりを覚えたものの、ムタファはただ「そうなんだ」とすぐに納得した。
そして右手に握りしめていたものを思い出すと「これ」とそれを彼女に差し出した。
それを見てリディアの“姉”は大きく目を見開いた。
「そのイアリング」
「知ってる?」
「う、うん、それ私…じゃなくて、リディアのお気に入りの…」
「お気に入り?本当に?」
「うん。昔…男の子にもらったって」
その言葉はムタファにとってとてもとても甘美なものだった。
「よかった」
にこりと微笑むムタファに、彼女はまた少し寂しそうな顔をした。
「ねぇ、リディアは今どこにいるの?」
「…え?」
「あのね、今度あったらもう片方を渡すって約束してたんだけど」
「あ、あぁ…あの子は…そう、学校!遠くで学校にいってるのよ。だから、こっちにはまだまだ…」
少女はムタファの表情が曇ったのに気づいたのか、中途半端に言葉を途切れさせた。
ムタファ自身は学校に行っていない。というより、ガラクタ街にいる子供は大抵学校になんて通っていない。
そしてそれを不満に思ったことは一度もない。
だけど、“普通”の人は学校に火曜ということを知っている。
普通は6歳くらいから15歳になるくらいまではほぼ毎日通うということを。
「…そっか」
肩を落としたムタファに、少女は済まなそうな顔を向けたが…しかし何も言わなかった。
ムタファはイアリングをぎゅっと握りしめ「じゃぁ」と口を開く。
「これ、預けてもいい?」
そしてイアリングを彼女に差し出した。
次に会った時の約束だった大切なイアリングを。
受け取った彼女は驚いたようにムタファを見た。
「いいの?」
「うん。今度渡すって約束したんだけど、まだまだ掛かりそうだから。だから、今度こっちに来た時には、もっとステキなアクセサリーを用意しとくっていっておいてくれない?」
ムタファは照れたように小鼻をかいて言った。
「今、オリジナルデザインっていうの、勉強中なんだ。だから、今度はもっとステキなものをあげるって」
「……そう」
「うん。お願いできる?」
「…えと…うん。わかったよ」
少女の返事は冴えない。しかしムタファはそれに気づかなかった。
「会えないのは残念だけど…学校って大事なんだろ?だから」
大人になってそんなボロいの渡せないよ。
クスクス笑う。
「それじゃぁ」
ムタファはそれでもう満足し、「姉ちゃんもまたね!」と手を上げると店の方に戻っていった。

少女はムタファを見送り、やはりさみしげに微笑むと手の中に残ったイアリングを見つめた。
そして
「わかるわけ…ないよね」
彼女はぽつりとつぶやくと、左の髪をかきあげその耳にぶら下がっていた赤いリングを指で弾いた。

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