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ヒポコンデリー 04

二人だけにしとくと、あんまりなんで。
読み返さない。

プロイセンはルイーゼロッテの前に跪き、彼女の柔らかな金の髪を撫でた。
ルイーゼロッテは両手で抱えるようにクマのぬいぐるみを持っており、彼女の傍らには大きな木箱がある。
高さは1メートルほど、横は1メートル半ほど、そして奥行きは80センチ程度だろうか。
それは今日より彼女の住まいとなる。
「ルイーゼ」
プロイセンが名を呼ぶと、彼女は青い目を細めてにっこりと微笑んだ。
「大丈夫だ。兄さん」
「…けど…わりぃな」
項垂れるプロイセン。彼女はぬいぐるみを片手に持ち直すと、空いた手でプロイセンの下がった肩を優しく叩いた。
「終わったら迎えに来てくれるんだろう?」
「あぁ、もちろんだ」
「だったらいい。私は待っている」
「なるべく早く迎えにいく」
「うん。だけど無理はしないでくれ」
プロイセンが両手を広げると、ルイーゼロッテは躊躇なくその腕の中に収まった。
「言いつけは覚えているな?」
「あぁ。木箱の中からは出ない。中のビールはスペインへの手土産。ついたらスペインに手紙と一緒に渡す。スペインの言うことをよくきく。だろう?」
「あぁ。そうだ。御者の声は覚えたな?」
「ja」
「そいつが出てこいと言わない限りは外に出るなよ。夜には外に出してくれるように頼んでいるが、はしゃいで遠くにいったりしちゃだめだぜ?それともしかしたら出られない日があるかもしれないが、短気を起こすなよ」
「わかってる」
「お腹が空くとは思うが、木箱の中じゃ飲み食いはするなよ。トイレにいきたくなったからって外には出れないからな」
「あぁ」
「それからもし万が一つかまったら…」
「御者に口裏を合わせる。無理なら忍び込んだという。相手が危険そうなら大人しく捕まる。無理に逃げようなんて考えてはダメ」
「そうだ」
プロイセンは彼女の細く小さな体をぎゅっと抱きしめ、「離したくねぇ…」とまるで今生の別れを前にした恋人に言うように言った。
妹の体を掻き抱き、悲しみと悔しさに顔をしかめるプロイセン。
ルイーゼロッテはそんな兄の背中に小さな手を回し、「大丈夫だ、兄さん」と優しく落ち着かせるように言った。
「私はいい子で兄さんを待っているから」
「…ルイーゼ…」
「兄さんは私のことなど気にせずに、頑張ってくれ」
「お前を気にしないことなんてできるわけがないだろう」
大まじめに言うプロイセンにまだ小さな妹仕方がない人だと笑った。

*

大きな幌馬車に彼女は他の多くの木箱と共に積み込まれた。
玄関先に立ち厳しい顔をして立つプロイセンはその様子を最初から最後まで見届け、額に軽く手を当てて大きく息をついた。
「大丈夫ですか?」
傍らに立った執事が声を掛けると、プロイセンはゆるく頷きそれから何処かへ行ってしまえというように手を振った。
そして執事が行ってしまい、馬車の準備が終わったのを見届けるとプロイセンは御者の男を呼び寄せた。
「行く先はわかっているな?」
「はい」
男の年齢は30代半ば。元騎士でありプロイセン直属の部下でもある。
少々小柄で童顔、ちょっと見ただけでは戦えそうにない優男だが、なかなか腕は立つし信用もできる男だ。
旅装をしている男の目をじっと見つめ、プロイセンは金の入った袋を渡した。
「お前への報酬だ。無事に届けられたならば、届け先でもまたなんらかの報酬は得られるだろう」
「私は別にお金は…」
「いいから受け取っておけ。……彼女をよろしく頼む」
「それは…もちろんです」
言われるまでもないと大きく頷く男に、プロイセンもまた頷き返した。
「彼女の安全ももちろんだが、健康にも気をつけてやってくれ」
「はい」
「急いで欲しいのは確かだが、彼女の健康をないがしろにしてまで急ぐ必要はない、大丈夫そうなら近くの街によって宿をとりゆっくりしてもいい。それと…」
言いかけてプロイセンは口を閉じた。
これではいつまで経っても終わらない。
「とにかく…よろしく頼む」
プロイセンが言うと彼はまたひとつ頷き、それでは足りないと思ったのかその場で足を折り深く頭を下げた。

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