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Enigma 05

ちょいグロ
読み返してない

大地に延々と十字架が並ぶ夢を見た。
どの十字架も、木っ端を組み合わせて作ったようなちゃちなものだ。
遺体が埋められているはずの大地も綺麗に慣らされておらず、十字架の前や下でぼこぼことした山を作っていた。
墓地は真っ赤な夕暮れに照らされ、世界は赤と黒の濃淡で彩られていた。
そこには俺一人しか居なかった。
だけど、一人ぼっちではなかった。

 *

「ルートヴィヒ…ドイツ」

弟の体に巻かれている白い包帯。
その下からじわじわと血がにじみ出て、白を少しずつ侵していく。
綺麗な金の髪も荒れてパサパサ。潤いがない。
包帯の巻かれていない肌にもいくつもの細かな傷があり、そして時折パクリと大きな傷が口を開き鮮血を流す。
体はマグマのように熱く、時折うなされながらもう三日も目を醒まさない。
「もう駄目なんだろうな」
プロイセン自身もひどい状態に置かれてはいるものの、目の前で眠る弟ほどではない。
同じようにドレスデンあたりも虫の息ときくが、それはすでに戦場から離れた他の都市と動揺プロイセンにはどうでもいいことだった。
早く終わってしまえと思いながら、同じくらい強い思いで彼は戦い続けることを望んだ。
それは彼の本能であり、また弟への愛でもあった。
彼には戦争が終わって(それはおそらく彼らの敗退によって)も尚、弟が生きていけるのかがわからなかった。
ドイツ自身は目隠しをされてあまりよくわかっていないようだが、プロイセンはその目で見て、触って、嗅いで知っている。
自分達が神をも恐れぬ残虐なことをしてしまったことを。
ドイツは解体されてしまうかもしれない。
それが彼の恐れである。
すでに亡国である身でありながら、取り込まれて生き長らえたプロイセンはそれでも尚生きて行ける可能性がある。
しかし全てを内包するドイツは生きることを許されないかもしれない。
できるならば変わってやりたかった。
それが叶うならば、今この場で胸を裂き自ら心臓をえぐり出すことすら厭わない。
なぜならプロイセンにとっては弟が、ドイツこそが彼の命であるからだ。
ドイツ亡き後の空虚な日々など、想像するだけで寒気がする。
しかしそれが叶わないのならば、どうすればいいのだろう。
勝てるなら勝ちたい、だがそれはもう無理だ。
敗け方を選ぶ際もすでに見失っている。
「ドイツ」
ほほをなぞると、ぴくりと彼の瞼が動きゆっくりとそれが開いた。
「ドイツ」
目を細めるプロイセンを映す曇りのない水色。
彼は不意に泣きたくなり、あわてて目をぎゅっと強く閉じた。
「兄さん…?」
ぼんやりとつぶやく彼に弱いところは見せられない。
プロイセンは努めて穏やかな顔を作ると「よぉ」と軽い調子で言った。
「おめざめか、お姫さん」
「…あぁ」
ドイツは兄の言葉に一瞬だけ嫌な顔をしたものの、素直に頷き自分が眠っている場所を確かめようとするように視線を彷徨わせた。
「地下壕の一つだ」
「ベルリンの?」
「いや」
それに続けてプロイセンが告げた都市の名はベルリンから離れたものだった。
不審げにひそめられるドイツの眉。プロイセンはどう言おうか迷ったが…ドイツはその先を悟ったように「そうか」とため息をつくように言った。
彼にもわかったのだろう。
二人は…ドイツとプロイセンは、最後の砦であるベルリンから遠ざけられたのだ。
「ヒューラーが?」
「…あぁ」
「そう…か」
「……あぁ」
ぎゅっとドイツの手を握るプロイセンに弟は苦笑を返した。
「そんな情けない顔をしないでくれ…兄さん」
「誰がッ!」
慌てて目の辺りを強くこするプロイセン。
ドイツは「そうだな」と言い、兄から目を離すと天井を見上げた。
そして、「終わるのか」とポツリと呟いた。
ドイツの言葉にプロイセンはハッとして否定の言葉をかけようとしたが…すでに負けることは決定事項だ。
プロイセンは悔しそうに唇を噛むとうつむき「すまねぇ」とドイツに謝罪の言葉を口にした。
「俺が…俺がもっとしっかりしてれば…、お前にはこんな苦労させたかったわけじゃねぇのに…」
「兄さん…」
「お前を傷つけたいわけじゃねぇのに…お前を強くしたかっただけなのになぁ…」
「兄さん…そう自分を責めないでくれ…」
ドイツは握られた手にぎゅっと力を込めた。
「勝つときは勝つし、負けるときはどうやっても負ける。そう教えてくれたのは兄さんだろう」
「けどよ…お前…」
このままじゃ。
言いかけて言葉に詰まる兄にドイツは弱く微笑み、すぐに苦しそうな顔になって目を閉じた。
「大丈夫か…?」
じわじわと滲んでいた血が、包帯を真っ赤に染め上げ彼の額には玉になった汗が滲んでいた。
「ドイツ…」
プロイセンの手からドイツのそれが逃げ、自らの心臓の辺りに当てられる。
かきむしるように指が曲がり、ぎゅっと拳を作るそれにプロイセンはある予感を感じ背中が寒くなった。
「ドイツ…始まったのか?」
プロイセンの問いにドイツは Ja とかすれた声で応え、ガクリと首を横に倒した。
「…ドイツ」
どうやら気を失ってしまったようである。
プロイセンはそんな弟の顔をそっと撫で、部屋の角のあたりをじっと見つめた。
視線のずっと先にはベルリンがある。ヒューラーのいる最後の砦が。

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