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暗愚

倫理的に間違っている
読み返さない

深夜。
仮眠室で眠っていたジンは何かの気配に気づいて目を覚ました。
誰かが部屋に入ってきたようだ。
しかし何も気にする必要はない。
暗黒騎士団の仮眠室に忍び込む盗人なんているはずはないし、夜勤にあたった暗黒騎士の誰かが自分と同じように仮眠を取りに来ただけだろう。
ジンはまた意識のレベルを下げた…が。
何かが違う。
何が…というのは分からないが、何かが違う。
ジンは意識レベルを上げると同時に警戒レベルも上げた。
彼は枕の下に忍ばせたナイフに手を伸ばした…が、途中でジンはそれを止め、枕の下から手を引きぬいた。
入ってきた人物に対する違和感の正体がわかったのだ。
歩調のずれ、そして床にかかる体重の軽さ。

「ウルシラ」

体を起こし声を掛けると、部屋の隅にあるベッドの傍に立っていたウルシラはビクリと体を震わせてジンの方を見た。
微妙に視線があっていないのは、ウルシラの目が暗い仮眠室にまだ慣れていないせいか。
「何時だ?」
ジンが聞くと、ウルシラは3時だと答えた。
ジンが何か口を開きかけた時…詰所になっている部屋で、ガシャンっと何かが割れる音がした。
そして誰かがゲラゲラと笑う声に、ドタバタと誰かが暴れているような声。
それから…
「馬鹿共が」
途切れ途切れに聞こえてきた女の悲鳴にジンは顔を歪ませた。
状況を確認するように耳を澄ますジン。
ウルシラはそれを見ながら、ベッドの上の薄っぺらな掛け布団をたぐり寄せ胸に抱いた。
そしてそれを抱いて床で寝ようとするが…
「お前は混じらないのか?」
ジンに声をかけられ、ウルシラはまた彼の方を見た。
「それとももう楽しんだか?」
ウルシラの目は暗さにだいぶ慣れていたが、ジンの表情までは見ることができなかった。
だがジンの方は、ウルシラが顔を赤くしているのが如実に見えた。
ウルシラが何も答えずに…答えられずにいると、ジンは小さく笑った。
「なんだ、逃げてきたのか」
嘲笑するようにジンが言った時、ドターンと椅子か何かが倒れるような音がした。
ビクンと震えるウルシラ。
「答えろよ」
無視されたとでも思ったのかジンが怒鳴るように言うと、ウルシラはますます縮こまってコクリと小さく頷き、それではわからないと思ったのか「はい」と小さく答えた。
「あいつら、誰を連れ込んでた?メイドか?それとも街の女か?」
「…多分、侍女だと思う」
「何人だ?」
「3人」
それを聞いてジンは舌打ちをした。
「あの馬鹿共」
ジンはゆっくりとベッドの下に足を下ろすと軍靴を履きながらゴキッと首を鳴らした。
「詰所には連れ込むなって団長が言ってたのに…」
そして立ち上がる。
「まぁしばらく無茶はしていなかったし…団長も大目にみてくれるか…」
枕の下からナイフを抜きベルトに挟み、壁に立てかけていた剣を持つ。
踵をガツガツと鳴らしながら歩き、部屋を出る前にウルシラを振り返る。
この時もまた、ジンの目はしっかりとウルシラを捉えていた。
ウルシラの方はただジンの顔のあたりを見つめることしかできなかったが。
「お前も行くか?なんなら手取り足取り教えてやるぜ?」
軽薄な言葉にウルシラはまた顔を赤くし、サッと目を逸らした。
ジンはそんなウルシラを鼻で笑うと、響宴の続く隣室に向かった。

一人残されたウルシラはしばらくジンの去った扉を見ていたが、やがて思い出したようにその場にしゃがみこむと、ベッドの下へと潜り込み、痩せた毛布を体に掛けて目を閉じた。

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