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猫の飼い方、飼われ方 08

読み返さない

「ドイツー!ドイツー!」

玄関の方から聞こえてきた情けない声に、書類を整理していたドイツはハッと顔を上げると慌てて玄関に向かった。
そうして、
「どうした!イタ…」
イタリア…といいかけて、言葉を詰まらせる。
というのもそこにいた人物が想像した人物ではなく、その兄であったからだ。
「ど、どうしたんだ?ロマーノ」
少しだけ動揺しつつ聞くと、彼はキッとドイツを睨み視線を下に下げた。
そこにはドイツの飼い犬である三匹が、散歩用のリードをそれぞれくわえて“お座り”をしていた。
“外に連れてって”のおねだりポーズ。
犬たちは主人がやってきたのに気づくと、少し気まずそうな表情(ドイツにはそう見えた)で、尻尾をゆらりと揺らした。

ロマーノは犬が嫌いというわけでは無いらしいが、大型な犬…つまりドイツが飼っているような犬たちは大嫌いだった。(吠えられたり、飛びかかられたりするかもしれないと考えると怖いらしい)
最初の頃はそれこそ蛇蝎の如く犬たちを嫌って、自分が滞在している間は他の部屋に閉じ込めておくことをドイツに強要していた。
犬たちもそれをわかってか彼には極力近づかなかった。
今でこそある程度は慣れてたようだが、それでもお互いに不干渉が暗黙の了解になっていたのだが…それが突然この犬たちからのアプローチ。
ロマーノはひどく混乱しているし、ドイツだってちょっと驚いた。
しかし、犬たちからすれば頃合いをみたの…かもしれない。
犬たちはロマーノがやってくるたびにそわそわしていたし、彼らはロマーノのことがきっと好きなのだろう。

「ドイツ!くそジャガ!なにボケーッとみてんだよ!!!」
「いや、しかし…」
「さっさとその犬たちをどっか連れてけよ!コノヤロウ!俺が上にいけねぇじゃねぇか!!!」
顔をまっかにして叫ぶロマーノ。
いつもならこの癇癪が爆発した時点で、犬たちはそろそろとどこかへ行ってしまうのだが…今日は、キュンとかクゥンとか言いながらドイツとロマーノを見比べている。
ドイツは顎に手を当て、少し考えて「ロマーノ」と玄関先の彼の名を呼ぶと、
「そういえば今朝は散歩をするのを忘れていてな。よければこれから連れて行ってくれないか?」
と、提案してみた。
もちろん今朝は散歩をしていない…というのは嘘である。
ドイツは余程の悪天候でも無い限り、犬たちの散歩は欠かさない。
提案に対するロマーノの反応は…というと、
「やだ」
冷たいものだった。
「絶対、絶対、絶対、絶対、ぜーーーったいやだからな!!!」
「そんなに拒否することはないだろう」
「こんなでっかい犬!俺が散歩に連れていけるわけがねぇだろうが!!!」
「いや…見た目は確かにでかいが、彼らはちゃんと訓練しているし…」
「もし暴走して俺が馬車にひかれたらどうするんだよ!!!」
「馬車はもうこの辺りでは走ってないが…」
「とにかく嫌だ、絶対嫌だ!」
「そこまで嫌うことはないだろう…」
ドイツは心なしかうなだれているように見える犬たちが気の毒になった。
「こいつらはお前と仲良くしたいみたいだぞ?」
「う…。お、俺は仲良くなんてしたくねぇぞ!」
「ロマーノ。お前は一度でもこいつらに威嚇されたことがあったか?噛み付かれたことがあったか?」
「そ…それは…ない」
「心配なら、俺も一緒に行く。どうだ?」
ドイツは犬のそばにしゃがみこむと、すぐ傍にいた犬の頭を撫でながらロマーノを見上げる。
すると犬たちもまた主人に習うようにロマーノを見上げ、都合4対の8つの目がロマーノを見上げることになった。
視線を一心に浴びたロマーノはウッと詰まり、それから気まずそうに視線をそらす。
こんな時、もしそこにいたのがドイツではなくスペインなら、ロマーノの複雑な内心をまるっと無視して“ほないこか~”と彼を引っ張るのだろうが、ドイツにそれは期待出来ない。
かといって、このまま待っていてもロマーノが折れるはずもなく…二人と三匹の間に気まずい沈黙が流れる。
それを破ったのはロマーノで、そのすぐ後にドイツが続いた。
つまり180度くるっと回って逃げ出そうとしたロマーノの腕をドイツが捕まえたのだ。
「なっ…ッ!」
驚くロマーノにドイツは、
「一緒に散歩に行かないか?」
と改めて誘った。
ドイツが腰を落としていたので、二人の姿はなんとなくではあるが、姫と彼女に仕える騎士のようにも見える。
ロマーノは下から見上げるドイツを見てカッと頬を赤く染め「うぅ…」と唸った。
そこには散歩に関しての否定も肯定も含まれていなかったはずだが、犬たちは何故かロマーノがOKを出したと勘違いしたらしく立ち上がってしっぽをブンブンと振る。
ドイツは犬たちを見て苦笑し、それからどうする?というような視線をロマーノに送った。
ロマーノは…顔を真っ赤にしながら、両脇で拳をぎゅっと握りながらコクンと小さく一つうなづいた。

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