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ヒポコンデリー 03

もういっそファンタジーでいい気がしてきた。
むしろファンタジーで。 読み返さない

魔女狩りの炎がおさまらない。
それどころか近頃は一層激しく燃え上がっているようだ。
作物の発育不良と疫病の蔓延…。
彼らはどうしようもない出来事に嘆き、神に祈り、教会に助けを求める。
助けを求められた教会の神父達は、神の教えを説く。民衆は一度はそれを信じる。しかしそれだけでは問題は解決しない。
救われない民衆は教会に不満を持つ。何故救ってくれないのだ。こんなにも飢えているのに、こんなにも苦しんでいるのに。
作物が育たない。雨が降らない。子どもが死ぬ。老人が死ぬ。原因不明の病が蔓延する。
何故だ。何故だ。何故だ。
何が悪い?私たちは教会の教えに従って敬虔に生きているというのに。何故だ。
そうだ。
誰か裏切り者がいる。
神を信じず、悪魔を信じている奴がいる。
だから神は我々を救ってくれないのだ。
そうだ、あいつが怪しい。
あいつだ。あいつを殺せ。裏切り者に死を!
飢饉、病、不安、疑惑、恐れ、怒り、略奪、密告、火刑、悲鳴、悪意、呪詛、烙印、復讐、怯え、痩せ細った体、積み上がる死体、吐き気をもよおすような臭気…負の連鎖は止まらない。
誰もが疑いの目に怯え、誰もが次は誰かと恐れる。
始めに犠牲になったのは娼婦だった。
そして鉤鼻の男、赤毛の女、独り暮らしの老人、犬を拾ってきた子供、熱を出して寝込んだ女の子、薬草を摘んでいた娘、足を悪くした男。
止まらない。
むしろ日々加速している。
あの女を殺せ、その男を殺せ。
まだ足りない。まだ不足している。
神よ。我らを救いたまえ、我を、我こそを救いたまえ。
もっと殺せ、もっともっと殺せ、もっともっと殺せ。
十で足りぬなら百、百で足りぬなら千、千で足りぬなら万、万で足りぬならすべてを殺せ。

神よ、救いを!

 *

会議を終え、自室に帰ってきたプロイセンは大きなため息をついた。
そして強い酒を瓶から直接口に運んだ。
熱がある。体の節々が痛い。腹の調子が悪くあまりモノを食えない状態が続いている。その上寝不足で、頭がフラフラする。
体調は最悪に近い。だが、休める状態じゃない。
もうすぐ始まるのだ。
新しい戦いが。新たな戦いが。
「くそ」
眉間に皺を寄せるプロイセンはこの上なく不機嫌そうだ。
彼の頭を悩ませているのは自身の体調不良のことや、控えている出陣のこともある。
だが、一番の悩みの種は…彼の愛しい…彼の命に等しいただ一人の妹のことである。
ただでさえ苦労をかけているというのに、また戦争が始まる。しかも国内の情勢がすこぶる悪い。
「くそ…」
彼はまたひとつ悪態をつくと酒瓶を煽った。
しかしそれは喉を3回ほど鳴らすとすぐに空になってしまう。
彼はそれを壁に向かって投げつけ、「あー…」と言いながら天井を見上げた。
「ルイーゼ、ルイーゼロッテ、俺の太陽…」
まさか彼女を戦場につれていくわけにはいかない。
戦場では彼はいつだって最前線に立っている。
そんな血なまぐさい、危険な場所に彼女を連れて行くわけにはいかない。
だからといって後方に控えさせるのも問題だ。
彼の部下は荒くれ者が多い。いくら言ってきかせたところで、戦いに当てられた兵士たちは抑えがきかなくなってしまう。
兄の欲目を抜いても美しい子なのだ。絶対に危険すぎる。
だからといって国内に置いておくのもまた憚られる。
何しろ国内は飢饉に病、そして魔女狩りが横行している。
ならばどうするか?
「くそ」
浮かんできた答えに悪態をつき、彼は紅玉に輝く目を閉じた。

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