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シガレット 05

「そういえば、こないだ岡先輩のとこにいったぜ」
俺が言うと、俺と同じく岡先輩の後輩である永倉は「へぇ」とだけ言って顔は上げなかった。だが「斎藤と」と付け加えていうと、驚いた顔をして食べていたカツ丼から顔を上げた。
やはり驚くよな。俺だって自分で驚くくらいなのだから。
「なんでまた」
「ん。そりゃ見つけたからじゃねぇの?拉致ってやった」
「お前な」
呆れたような永倉に俺は笑う。
「斎藤って…あれだよな。総司の…」
「そう、そいつ」
「お前が男の顔なんてよく覚えてたなぁ…」
失礼なやつだな。と思わないでもないが、否定もできない。
俺は女の顔と名前、それから香水を覚えるのは得意なのだが、男に関してや1回・2回会った程度じゃ覚えられない。
それどころか未だに走り屋やっているメンバーのほとんどが“どっかで見た顔”程度だ。もちろん付き合いの長い永倉や総司あたりは別だが。
「俺だってもう曖昧だぜ?」
言いながら、永倉は思い出すように天井を見上げた。
俺はその隙に…と箸をカツに伸ばしたのだが、それは素早く築いた永倉の腕によってブロックされてしまう。
「んだよ、一切くれぇいいじゃねぇか」
「やだね、お前の方が金はあるだろ?女に貢いでもらってんだから。欲しかったら自分で頼めよ」
「わかってねぇなぁ、新八ぃ。俺はお前が食ってるカツが食いてぇの」
「気持ち悪ぃ事いうなよ、さの」
ぶるっと巨体を震わせる永倉に、こっちも気持ち悪くなった。
「ばか、おかしな方にとるなよ」
俺が小突くと、永倉はへへへっと笑い、カツ丼をガツガツとかきこみだした。

 *

授業があるという永倉が立ち去ってしばらく、一人でタバコをふかしながら外を見ていると誰かが正面に座った。
誰かは知らないが相手をするのは億劫で、なんとなく無視をしていたらテーブルに置いていた左手を握られた。
…仕方がない。
笑顔を作って振り向くと、そこにはセフレの女がいた。
名前はジュリア。といっても、れっきとした日本人。
海外の血は一滴も入っていない。
「別れたって?」
「情報はやいなぁ」
挨拶も無しに切り出すジュリアに苦笑する。
ジュリアと俺の付き合いは長い。同じ学校ではなかったが、中学の頃から知っている。
彼女は俺とタイプが似ている。
恋人ができても長続きしないとことか、貞操観念が軽いとことか、人間的にうすっぺらな所とか。
自分を鏡に写したような彼女に苛立つ事も多いが、彼女の前では飾る必要がないので気楽だ。
多分、彼女も同じことを感じているに違いない。
彼女は俺に対し時々ハッとするような甘い顔を見せることもあれば、汚物を見るような目を向けることもある。
前者はいいにしても、後者はかなりむかつく。
だが、お互い様だ。
俺だって彼女をひどく愛しくかんじる時と、顔を見るのも嫌な時がある。
「お前は?まだあの堅そうな男とつきあってんのか?ジュリア」
「堅そうな?」
彼女は一瞬考える素振りを見せた後、「いつの話よ」と笑った。
「相変わらずスパンが早いね」
「あんたに言われたく無いわね」
彼女は俺の煙草を奪い取ると、一口吸って煙を横に細く吐いた。
いちいち様になる女だ。
俺とおんなじ。
学食にいる他の生徒たちの視線をびしばし感じる。
「このあとは暇?」
「一つ授業がある」
「そのあとは?」
俺は少し考え首を横に振った。
入れようと思えばいくらでも予定は入れられたが、今日はジュリアに付き合ってもいいような気分だった。
「けど、金は無いぜ」
「じゃぁ用はないわ…といいたいけど、今日は私が持ってあげる。バイクはあるんでしょ?」
「あぁ」
授業が終わったら連絡する約束をしてジュリアとは別れた。
俺は授業まで時間を潰すつもりだったのだが、ジュリアが灰皿に残した赤い口紅つきの吸い殻が不快で席を立った。
彼女も今はフリーなのだろうか。
ぼんやり考えて馬鹿らしいと首を振った。
相手に恋人が居ようが居まいが全く関係ないのだ。俺達の場合。

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