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Stand by me.03

独×にょ仏
微妙 読み返さない
ようやく状況説明がおわったかんじがする

十年の空白を埋めるのに10分や20分程度で足りるわけもなく、気づけば今度は外で会おうという約束まで取り付けていた。
そして私は二人を見送り、何をはしゃいでいるのだとまた自己嫌悪に陥った。
あれから10年も経ち、彼は結婚していて子供までいるというのに…、まるで初めて好きな人にデートに誘われた中学生の子供のようにはしゃいでしまうなんて…どうかしている。
そうして反省をしていると、
「まだ若いのに一人で息子さんを育ててるなんて大変よね」
と奥さんが言った。
「え?」
一人で…?
「もしかしてしらなかった?『ママ、お星さまになったんだよ』…ってユーリ君が言ってたわよ。あの子可愛いわよね。本当に天使みたい」
「ちょっとまって…お星様って…亡くなったってこと?」
「えぇ、多分、そういうことだと思うわ」
彼の奥さんが亡くなっている…?
私は驚くと同時に、いったいこの人は子供になにを聞き出しているのかと呆れた。
非難を込めて少しだけにらむと、彼女は肩をすくめて「だって仕方ないじゃない」と言った。
「ここ数日あなたったらずっと様子がおかしくて私は心配してたのよ。そうしたら突然、若い子持ちの男が訪ねてくるじゃない。しかも二人でなんかいい雰囲気だしてるし」
まさか不倫でもしてるのかと思って思わず探りを入れたのだそうだ。
そういえば彼女はかなりのおしゃべりだった。
比較的暇なときは私に仕事をまかせ、常連さんを捕まえて1時間や2時間平気で話し込む程度には。歩く回覧板とまでは言わないが、それでもうわさ話を集めるのが大好きな人なのだ。
「私の心配っていうより、奥さんが知りたかったんでしょう?」
「あら、そんなことないわよ。本当に心配だったのよ」
そう言いながらも、彼女はちょっぴり気まずそうで…そこが彼女の憎めないところだ。
案外計算してるのかもしれないけど。
「とにかく、私と彼はそんなんじゃないわよ。おかしなことは言いふらさないでね」
「…わかったわ」
でもこれで下手に言いふらすようなことはしないはずだ。

だって、ね、もう十年も経ったのよ。
私は傍らに立って、不満気な顔をしている16歳の亡霊に言い聞かせる。
本当の貴女はもう26なのよ。
16の頃みたいに怖いものなしで奔放には振る舞えないわ。
彼には可愛い子供がいるし、亡くしたとはいえ愛し合って結婚した奥さんがいるんだから。
だから、ね、私に彼の弱味に漬け込ませるようなみっともない真似はさせないでちょうだいね。
彼とはお友達。それでいいじゃない。
私は自分の亡霊をなだめ、胸をトントンと叩いた。



二日後、私は町のレストランにルートヴィヒとユーリ君と一緒にいた。
私は春キャベツと魚介のスパゲティ、ルートヴィヒはクラブサンド、ユーリ君はハンバーグステーキのランチセットだ。
ユーリ君の料理は彼には明らかに多すぎるが、その点はルートヴィヒがいるから大丈夫だろう。
彼の頼んだ料理がサンドイッチと少なめなのはそれを見越してのことだろう。
「ちゃんとパパをしてるのね」
とからかえば、彼は困ったような顔で照れた。
16の私が大好きだった顔だ。
「妻が病弱でずっと入院してたからな。嫌でも年期が入る」
「そうだったの」
詳しく聞いていいものか迷っていると、彼は気にするなといった。
「気持ちの整理はつけたつもりだ」
彼の奥さんは元々体が弱かったのだが、ユーリ君を生んでますます体が弱くなり、入院生活だったのだそうだ。そして看病の甲斐無く…一年ほど前に旅立ったのだという。
「そう。看病に子育て、それにお仕事も?大変だったのね」
「確かにな。しかしあの頃は必死だったし…」
全く気にならなかったとルートヴィヒ。
彼のことだから、周りには随分と心配をかけているはずだ。
彼はユーリ君の口からほっぺたにかけてついたソースをナプキンで拭き取る。
「こちらに戻ったのは、母さん宛の祖母からの手紙を見たのがきっかけだったんだ。父と母は駆け落ち結婚で親類関係とは全く行き来がなかった。だから全く係累がいないとすら思っていたんだがな」
それで連絡をとってみたら、おばあさんのミュレルさんが健在であること、そして現在独り暮らしであることがわかりこちらに転がり込んだということらしい。
彼は自分から迷惑も考えずに押し掛けたような言い方をしたが、ミュレルさんの体のことや、彼女の希望なども熟慮した上での事にちがいない。
彼はそういう人だから。
「仕事はなにを?」
「以前は家を離れられなかったから、家で翻訳の真似事をして糊口をしのいでいた。けれどこっちには祖母もいるし、保育園の手配もついたからな。警備会社ででも働こうかと思っている」
軍隊に所属していたというのが結構強みになるらしく、ほぼ就職は決まっているのだという。
「ねぇ、パパ、ケーキも食べたい!!!」
「ん?」
ユーリくんの皿を見ると、彼のそれにはまだ大きなハンバーグの塊がのっている。
「まだ食べてないじゃないか」
「だって、食べたいもん」
そういって彼が見る先では、若い女性客がフルーツのたっぷりとのったケーキをつついていた。
ルートヴィヒとユーリくんは、親子がよくやるような会話を交わした後、結局ルートヴィヒの方が折れてユーリくんにケーキを頼んでやっていた。
表情豊かな顔。これはきっと奥さん似ね。
そう思った瞬間、チリッと胸がいたんだような気がするのは…もちろん、気のせいだ。

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