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カーボンシルク 04

引き続きアメリカと一緒
読み返さない

彼女は優秀な調教師だった。
彼女は躾のなっていない野良犬たちを調教しする。
彼女の手にかかればどのようにひどい野良犬でも三ヶ月が経つ頃には忠実な警察犬、狩猟犬、軍用犬へ変わっていた。

 *

夜半にキャンプについた三人は、兵士たちの宿舎や職員たちのいる本部から少し離れた場所にある客人用のコテージで休むことにした。
一階建てではあるが中々立派なもので、普通の住宅と代わり映えのないくらいの設えだ。
大きなリビングにキッチン、そして部屋は3つ。それぞれ部屋にバスとトイレはついている。
ちなみに三人とも同じ建物、寝室だけを分けて使った。

翌日、最初に起きだしたのは移動時に睡眠をとっていたドイツだった。
白のタンクトップに短パンという姿の彼女はキッチンの戸を開け、中に缶詰が大量に詰まっているのを見つけると一つを手にとった。
牛肉とじゃがいものトマト煮込みのスープ。
彼女はそれを2つ鍋に開けると、コンロにかけ備え付けの塩コショウで味を整えた。
そうして鍋をゆっくりとかき回しながら、今日の予定を考えた。

初日はまず、生徒たちへの顔見せがある。
慣れてしまえば、どんな相手にも教官として強い態度に出ることの出来るドイツだが、最初の顔見せはどうにも苦手だ。
指導者として堂々と、しかし威圧的になりすぎず、そしてまた女としてなめられない程度…というのはなかなかにさじ加減が難しい。
自分では上手くやったつもりでも、後で突っかかってくるものがまま出てくる。
しかし今回においてはさほど心配はいらないだろうとドイツは楽観していた。
というのも、兄が一緒であることが大きい。
彼は軍人を育て上げることに関してはドイツよりもずっと上、プロ中のプロ、スペシャリストだ。
ドイツには真似の出来ない『憎まれ役を買って出ることによって全体をまとめ上げる』ということを簡単にやってしまう。
しかも不思議なことに最初は憎しみのみでプロイセンを見ていた兵士たちが、そのうち彼を尊敬し、もり立てるという現象が起きる。
ちなみにその現象に関してプロイセンは、あまり面白くないようで、彼は憎まれることを面白がっているふしがある。
敵を作りたがるのは悪い癖だとドイツは思っているが、この場合は上手く働いているので何も言えない。
…話はそれたが、とにかく今日の挨拶の時にもせいぜい下衆な啖呵を切って憎まれ役に進んでなってくれることだろう。
だとすれば彼女が考えるべきは、やはりアメリカとの試合のことだ。
詳しく内容は決めなかったが、1対1の大戦だ。おそらく格闘戦になるだろう。
軍人の男が相手でも7割以上の勝率を誇っているドイツだが、アメリカ相手ではほとんど勝てた試しがない。
いや互いに万全の状態だった時のみで言うなら、ドイツはアメリカに一度として勝った試しがない。
覚えている限りでは、脳を揺さぶられた事による脳震盪でのノックアウトが何度か、抑えこまれてギブアップしたのが何度か、そして首を締められ落とされたのが何度か…。
全く容赦がないとは思うが、それはドイツが望んだ事。
アメリカが下手に手を抜くと、すぐにドイツは気づいて彼を怒鳴りつけているくらいだ。

過去の大戦をシミュレートしていると、いつの間にか鍋がグツグツと煮立っていた。
慌てて火を止め、兄とアメリカをそろそろ起こそうかと振り返ると…キッチンの入口辺りで眠そうなプロイセンが目をこすっていた。
「起きていたのか」
ドイツが声を掛けると、「あぁ」と言って首の後ろをバリバリと掻いた。
兵士たちを指導する時と戦場にいる時には、すごくかっこいい兄…なのだが、普段は見る影もない。
だがドイツはそんな兄の事も好いている。
「アメリカを起こしてきてくれないか?」
「ん…。あぁ、ヴェスト?」
アメリカを呼びに行きかけたプロイセンが、途中で足を止めて振り返る。
そして「どうした?」とドイツが聞くと、彼は肩越しに振り返り、
「もし負けても、ちゃーんとお兄様が仇を討ってやるからな」
赤い目を細めて笑った、

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