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魔剣と勇者 02

そ、そりゃあれだぜ。その内に動けるようになったら、人里に降りて人として暮らしたいなぁ~なんておもってたりしましたよ。
でも実体持つにはまだ30年とか50年とか余裕で待つつもりでいたから、向こうから訪ねてくるなんて思ってなくってかなりパニック状態!
ひぃぃぃいい!
俺は思わず本体に引っ込んだ。
本体に引っ込んだ?
なんかイミフだけど、とにかく隠れたつもり。
くっそう、刀身がブルブル…否、ビリビリと震えるぜ。
ってかこのイケメン…なんなんだよ。
長い金髪を後ろに一本に縛ってて、前髪が長めで自然に横に流している感じ。
服装はまさに騎士様って感じで…で、ジィィイイイーーーっとこっち見てんだけど。
「なんだか妙なものが見えた気がしたが…」
気のせいです!気のせいです!!
ささ、お邪魔はいたしません!道を開けることは叶いませんが…
「へし折ってみるか?」
『なんでだゴルァ!!!』
俺は叫んだ!
まぁ、音としては全く出てないんだけどな…と思ったのだが…、何故かそのハンサムは驚いたように目を見開いた。
え?聞こえてる?
「まさか…魔剣か?!」
『聖剣だ!!!』
あ、やっちまった。
じぃいいいぃいいいぃぃいぃいいぃぃぃぃいい っと見つめてればそのうち穴が空くと信じてるみたいな視線で見つめられ、俺はとうとう観念した。
そしてそっと霊体?を表すと、男は驚いたように目を見開いた。
「漆黒の髪に赤い目…やはり魔剣…魔物が取り付いていたのか」
『え、俺、そんな中二病なツラしてんの?』
「チュウ…なんだ?呪文かなにかか?」
思案気な顔をするハンサム。
…思ったより…親しみやすいタイプか?
とはいえ、他の人間…いや、いきものとコミュニケーションを取るのは随分と久しぶりだ。
やはり緊張する。というか、ちゃんと言葉覚えててよかったー…。
「お前は、何なんだ?」
何なんだ…と聞かれても困る。
俺だって気が遠くなるほど自分に問いかけ続け、そして未だに答えが出ていないのだから。
俺が硬直(はじめから固いけどな!笑)してるのに気づいたのか、ハンサムは「名前は?」と質問を変えた。
よかった。
これなら答えられる。
『聖二』
「セージ?ハーブみたいな名前だな」
『ぉぃ』
まぁいいけどな。
「俺はローリエだ」
『ってお前もハーブじゃねぇか!!』
突っ込むと、彼はなぜか不思議そうに首を傾げた。
そして、
「そういえばそうだな」
と、妙に納得した。
…もしかして天然系か?
俺は一気に肩の力が抜けた。…肩なんて無いけど。
『まぁいいや、ローリエ。良ければ俺を連れてってくれないかな?俺はこの通りの剣で、動くに動けないんだよ』
「ふむ。しかし、俺は魔術師だからな」
魔術師?戦士にしかみえないが…。
っつか、やっぱここは剣と魔法の世界なんだな。
『ま、魔法?』
「あぁ」
うわ!すげぇ!なら一つ俺にも魔法ってもんを見せてくれ!と思ったが…
「まぁ、魔法は使えないが」
『使えないのかよ!』
何なんだ…こいつ…。
「だが、魔術師だぞ。ちゃんと。俺がそう名乗ってるんだからな」
『でも魔術は使えないんだろ?』
「全く。魔術の芽生えすら無いと言われたことならある」
『自慢することかよ』
胸をはるな!鬱陶しい。
っつか、絶対こいつ戦士にしか見えんし。いや、戦士っつか騎士?見た目ハンサムだし。
くそ。女にモテそうなツラしやがって。
「剣術大会での優勝経験ならあるぞ」
『やっぱ戦士じゃねぇか!』
ローリエは幾分ムッとしたようだった。
「しかし俺は魔術師だ」
『あぁはいはい、そうかそうか。とにかく俺を引っこ抜いて連れてっちゃくれないかな?礼は出来ないけど、剣としてなら…た、多分役に立つから』
いや…かなり微妙だけど。
だって俺、剣になって長いけど、戦った事なんて一度もねぇし…。
俺の体が他の剣とかちあうって…絶対いてぇ…。
いやまて、俺の体が、人の体を貫く可能性とかも…。
モンスターとかゲルゲルなもん斬らされたり…運がわるけりゃパキーンっと…。
ひぃぃぃいぃい!
や、やっぱ無理だ。ぜってぇ無理。
けどだからってこの絶好の機会を逃すわけにもいかねぇ。
ローリエをじっと見てると「俺は魔術師だと言っているのに」とぶつぶつ言いながらではあるが、俺に手を伸ばしてくれた。

そして、彼の指先が柄に触れた瞬間、電撃が走った。

『ひっ!』
「ぐっ」
なんだ今のは!?
スゲー刀身いたかったんですけど!
ローリエも痛そうに顔をしかめたが、彼は怯むことなく柄をギュッと握ると俺を持ち上げた。
『うわ』
抜けた!
軽く振り上げられた俺は、一瞬で痛みを忘れた。
『あ、ありがとう!』
言った途端、素振りをされてヒッと悲鳴が漏れた。
『な、なにすんだ!』
「いや…お前はいい剣だな」
『あ?』
「いや、俺は魔術師だからよくはわからんが…、掴みがちょうどいいし、重さも申し分ない。重心もバランスがとれているし…」
いやいや、めちゃくちゃよくわかってんじゃねぇか。やっぱ戦士だよ、間違いなく戦士だよ、あんた。
「しかもセージ、お前は成長持ちか」
『成長?』
「うむ…正しくはなんだったか、クラスロードか?とにかく、鍛えれば鍛えるほど資質を開花させる業物の魔剣ということだ!」
いや、魔剣じゃねぇし!
どっちかってぇと聖剣のつもりだし。
『っつか、それってつまり俺はレベルアップ出来るってことか?』
「ん?まぁそういう解釈でいいはずだ」
『す……げぇ』
「俺は魔術師だからお前は使わないがな」
『なんでだよ!使えよ!…いや、張り切って使われるのもアレだけど……。って、俺ってすごい剣じゃないの?』
「いや…確かに素質はあるかもしれんが、今はそうだな…呪われた量産型のごく普通の…いや、古くて汚い剣だな」
普通なら廃棄処分ものだな。
『ぐ』
正直すぎる言葉が胸にいたいぜ、ハンサムさん。
だが、OK、認める。
認めるさ。
なんたってはじめの頃、俺と同じように立ってた剣はみんな倒れてしまったし、近くに落ちてた武具もずいぶん劣化したし、皮や布製品、そして白骨死体たちのはほとんどは自然に返っちまってるしな…。
しかしだからといって俺もこのまま…ってわけにはいかんのだ。
『頼むよローリエ、魔術師でも時には剣で戦うこともあるだろ?』
ローリエは魔術師という言葉にまんざらでもない顔をした。
「ん、まぁそうだな」
『だろう?!ってわけで頼むよ!魔術師様!』
拝む真似をすると彼は仕方がないというように頷き、俺を持ったまま歩き出した。

彼の目的地はこの『ベレグラード平原』を抜けたところにある小さな町なんだそうだ。
彼曰く
「傭兵の真似事をしつつ世界を回ってる」
らしく、今は国境に向かっている所だと言う。
目的はとくにこれといってなく、あえていうなら世界を見て回るのが目的であるらしい。
『なるほど、冒険者か』
「そんなもんだな。お前はベレグラード平原にいたと言うことは、百年前のベレグラードの大戦で使われた剣ってところか?」
『ベレグラードの大戦?』
「あぁ、魔族の大規模な侵攻があってこの地でぶつかったんだ」
そりゃもう血で血を洗う凄まじい戦いが繰り広げられたらしい。
「魔族の侵攻はなんとか押さえられたが、その犠牲は一説には30万、また別の一説では100万を越えるとも言われる」
『す、すげぇね』
言いながら俺は、ここが戦場だった時、ここで最初に目を覚まして気絶する間に見た事を思い出した。
地平線まで続く遺体の山…。
「以後この地は呪われし古戦場として、必要のない限り極力人は入ってこない」
入るにしても、こんなにど真ん中を通る奴は稀だろうなとローリエは言う。
『あんたは平気なのか?呪いの地をどうどう踏破してるみたいだけど』
「あぁ。一応呪具を持ってるからな」
そう言って彼が首から掛けたものを服の下から出して見せてくれる。
それは小さな袋で、中には銀貨が入っているという。
「魔を払うといわれる銀に、俺が直々に魔除けをかけておいたんだ」
『へぇ…』
つまりただの気休めらしい。

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