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リムド

題名に意味はない

「聞いたぜ、シャンクス」

久方ぶりの会合を果たしたシャンクスに、アンは挨拶よりも先にそういって楽しそうに笑った。
シャンクスとアンは年齢も性別も所属する海賊船も違うが、気の合う友人同士で飲み仲間だ。
街で偶然出くわした時はもちろん、ストライカーにのったアンが彼の船を訪ねてくることもよくある。
そんな関係のおかげか、アンは赤髪海賊団の乗組員たちからもよく可愛がられている。
「何がだ?」
「あんたが女のケツ追いかけてるって」
「ぁ゛?」
不機嫌な声を出すシャンクスにますます愉快と笑みを深めたアンは、シャンクスのすぐそばに置かれたクッションに腰を下ろすと、口の開いた酒瓶を引き寄せ一気にあおった。
「かぁ~、こいつはキツイな!」
アンは目を白黒させ、げっぷを炎で吐き出して見せた。
そしてハハハと機嫌よくわらうが、シャンクスはブスッとしたままアンをねめつける。
「なんだよ、もしかして振られたのか?」
「誰がだ」
「あんただよ」
「意味がわかんねぇなぁ。それよりお前、その話はどこから聞いたんだ?」
今更ながらシャンクスの表情が非常に厳しいことに気づいてアンは怪訝な顔をし肩をすくめた。
「娼館」
「娼館だぁ?」
剣呑な声を出すシャンクスにアンは慌てたように両手を上げた。
「おい、ちょっと待てよ、なんなんだよ」
「アン、お前が娼館なんかに何の用だ?女のお前が」
「カッカすんなって!なんなんだよ」
「うるせぇ!さっさと吐け!」
「吐けって…」
なぜそんなに怒っているのだかアンにはさっぱりわからなかった。
「情報だよ、情報。女は信用ならねぇなんて時代錯誤な連中はどこにだっているんだよ。そんな時は娼館を利用するんだ。あそこはあんたも知ってるだろうが、えげつないところだ」
これでわかったろ?
とアンはシャンクスを見やるが、件のシャンクスはまだ納得していなかった。
いや、むしろ怒りが増幅しているようにも見え、さしものアンですら背中がヒヤリとした。
「シャ…「アン」」
シャンクスの片方しかない腕が伸び、アンの細い顎を掴む。
アンは急なそれに全く反応ができず、今度は胸の奥がヒヤリとした。
「なに…」
「お前、おかしな事はしちゃいねぇだろうな」
「なんだよ、おかしな事って」
ぐっと身を乗り出すシャンクスに押されるようにアンは後ろに下がり、壁に背をつけた。
「だから娼館で…だよ。情報を取るためにおかしな真似をしちゃいねぇかと思ってな」
「それって…」
シャンクスの言わんとすることに気づいたアンは、シャンクスに顎をとられたまま目の前の男を睨み付けた。
「ばかにすんじゃねぇぞ、シャンクス。俺はそんなに安い女じゃねぇ」
アンの言葉にシャンクスは信用できないと言うように目を細めた。
「…へぇ?」
「…なんだよ」
喧嘩を売っているのか。
アンがシャンクスの腕をつかむ…と、それをきっかけにしたようにシャンクスは腕を引いた。
「んだよ、気がすんだのか?」
「いや」
実をいうならば、シャンクスはアンの先ほどのセリフについて一つ言ってやりたいことがあった。
小耳に挟んだ、馬鹿らしい…けれど一概に嘘だと決め付けるには、少し引っかかる噂話。
海軍大佐にまつわる話だとか、彼の所属する海賊船の一番隊長の噂だとか。
しかしそれは自分が口を出すべき事柄じゃないとシャンクスは思う。
彼女の事は気に入ってはいるが、シャンクスは彼女の保護者ではない。
対等に付き合っていたいのだ。
「それより噂だ。一体なんなんだ、その噂ってのは」
アンはシャンクスの機嫌を推し量るように見ながら「だからさ」と口を開いた。
「隻腕で赤毛の色男が、近頃遊びに来ないって」
「あぁ?」
「前は入港すると高級娼館に仲間たちとやってきて、そこで一番の女を抱いてたもんだって」
「……」
否定できずにシャンクスが黙りこむと、アンは機嫌をなおしてニカッと少年のような笑みを見せた。
「なのに近頃じゃ、どこの島でも娼館で大宴会は開くものの、夜更けにはふらっと別にとった宿か船に帰っちまうって話じゃねぇか」
あたってるだろ?と横顔を見てくるアンにシャンクスは舌打ちをした。
「くだらねぇことばっかり噂しやがって」
「はは、別にくだらなくはねぇだろう。十分に面白い話題だぜ。赤髪のシャンクスが港で女も抱かずに腐ってるってんだから」
「別に腐っちゃいねぇ」
「あぁ、そうだったな。本気の相手がいるんだろう?」
ニヤニヤとするアンに、シャンクスはようやく話が飲み込めてきた。
というか、ようやく彼女に指摘されて気がついた。
それまで全く気づかなかった…しかしとても比重の大きな事に。
そしてそれに気づくと、色々とわかってくることもあって…シャンクスは思わず間の抜けた顔でぽかんと口を開いた。
「そう…か」
「なんだよ?」
「だから…」
「おい、シャンクス?」
だからベンのやつは…とか、女の香水が…とかシャンクスはブツブツ言い出す。
アンは気持ちの悪いものでも見たような目でシャンクスを見、肩をすくめた。
「今日、おかしいぜ、あんた」
肩をさするアン。シャンクスは今度はくつくつと笑い出した。
「なんだよ、ホント。船医に見てもらったほうがいいんじゃねぇの?変なものでも食ったか?」
「いや、いい。この病気は昔から医者にもなおせないっていわてんだよ」
「不治の病かよ」
アンは馬鹿にしたように吐き捨て、すぐに心配そうな顔をする。
そんなアンをシャンクスはごきげんそうに見つめ、「恋の病」と返した。
アンはそんなシャンクスに処置なしとばかりに降参のポーズを取った。
「まぁ、せいぜい頑張れよ、オッサン」
アンは投げやりに手を振った。かってにやってくれという感じだろうか。
しかしシャンクスは…何故か急激に機嫌を浮上させたシャンクスは毛ほども痛みを感じないようで、「まぁ、覚悟しとけよ」と言って脇にあった未開封の酒瓶を引き寄せた。
覚悟しておけと言われたアンは、何故自分に言うのだと首をかしげながらも…しかし、何故か“そこは突っ込んではいけない”と本能が赤い回転灯を回していたのでスルーすることにした。
そして「さぁ、飲むぞ!」と張り切るシャンクスのとろけるような笑顔を見て、ひきつりながらも気持ち悪いという言葉を飲み込んだ。

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