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カーボンシルク 02

アメリカと一緒

ドイツとプロイセンは、ちょうどアメリカに行く事になっていた上司の一人と共に政府の専用機で渡米した。
アメリカの某処にある空港に降り立りたつと、上司はそのまま歓迎セレモニーに出席する事になっていたので、ドイツとプロイセンは彼と分かれて裏口から入管へ向かった。
荷物はごく少なく、せいぜい二泊ができる程度の小さなボストンバッグを1人1つ持っている程度だ。
簡単なチェックで入管をパスした彼らを出迎えたのは、フライトジャケットを着て片手にハンバーガーを持ったアメリカだった。
迎えに行くとは行っていなかった彼は挨拶よりも先に「なんだい君たち、シークレットサービスみたいじゃないか!」と黒のスーツで身をつつんだ二人を笑った。
アメリカの笑いにパンツスーツ姿のドイツは口許を歪め、プロイセンは片方の眉を器用に持ち上げる。
「それって誉めてんのか?」
「オフコース!もちろんだよ!」
ハハハとアメリカが笑うと、プロイセンも気分を良くしたのか胸のポケットに入れていたサングラスをかけ、上着の前を開けると両手をズボンのポケットに入れた。
「それはなんだ、兄さん」
「あ?格好いいだろ?俺様」
どうやら彼のシークレットサービスのイメージが“それ”らしい。だが、どうみても…
「はは!ギャングみたいだぞ!」
そう、ギャングのようだった。もしくはマフィアの若い兄ちゃんといった所か。
「な!さっきと言ってる事がちげぇじゃねぇか!」
「それにしても久しぶりだなぁ!ドイツ」
プロイセンが大声を上げるのを無視してアメリカはドイツに声をかけた。
「あぁ、会議以来か」
「そうじゃなくて俺の家に来るのがだよ!気軽に遊びにきて構わないって言ってるのに!こういう時じゃないときてくれないんだからな!」
不満そうに唇を尖らせるアメリカにドイツは苦笑する。
見た目も国としての年齢も割と近いこともあってか、二人は周りが思っているよりも仲がいい。
アメリカはドイツを年の近い姉、ドイツはアメリカをすぐ下の困った弟と思っているのだ。
「悪い。色々と忙しくてな」
「まぁそれはわかるけどさぁ、でも寂しいじゃないか!もっと構ってくれよ!」
そう言ってアメリカはドイツの肩に手を回した。
そこに友情以上の感情は一切含まれないのは歴然。
しかしそれでも過保護な兄には許せなかったらしく、アメリカの手は鋭い視線とともに一瞬で叩き落とされた。
「いたっ!何するんだよ」
「ばっか!お前ごときがヴェストに馴れ馴れしく触ってんじゃねぇよ!」
「兄さん…」
「ハハハ!なんだいそれ!じゃぁ抱きついてみるんだぞ!」
アメリカはからからと笑ってプロイセンを挑発するようにドイツに後ろから抱きついた。
「なっ!てめ!アメリカ!ヴェストから離れろ!」
「ハハハ!羨ましいだろ!」
「う、羨ましくなんかねぇよ!だいたいそこはお兄様の専用ポジションだ!」
「なんだい君、そんなことやってるのかい?ドイツにウザがられてないかい?」
「そ、そんなことねーよ!!な、なぁ?ヴェスト?!」
煩い二人に挟まれ、ドイツは額に手を当てた。

 ※

アメリカが移動の為に用意していたのは縦にも横にもでかい軍用のジープだった。
フライトジャケット姿でハンドルを握るアメリカはともかく、モスグリーンの車体に黒のスーツを着た二人と言うのはとても目立っていて、すれ違う車からの興味の視線が頻繁に飛んでくる。
そんな視線には全く気づかないアメリカがレーンを変えるついでにちらっとルームミラーを見ると、ドイツがうつらうつらとしているのが目に入った。
ドイツ。
そう名を呼ぼうとしたが、「しっ」と直前でプロイセンに遮られた。
「あいつ疲れてんだよ。寝かせてやってくれ」
「飛行機で寝られなかったのかい?」
「あぁ、上司のスピーチの原稿かかされてたんだ」
前日も遅くまで仕事してたしな。
そういって苦笑するプロイセンをアメリカは不満気に見た。
「その割に君は元気そうだなぁ」
頼り甲斐のない兄貴だね。
そう言われてプロイセンは肩をすくめた。
「出来ることはやってるさ」
「ふぅん」
イマイチ信用していないアメリカの相槌にプロイセンはまた苦笑してそっと後ろを振り返った。
2つ寄せられたボストンバッグ。それによりかかるようにしてそっと目を閉じたドイツ。いとおしげに目を細めるプロイセンを見て、アメリカは気味が悪いものでも見たような顔をした。
あの顔は知っている。
溶けた無塩バターみたいな顔。
かつて嫌になるほど向けられたことのある笑みが脳裏に浮かび上がってアメリカは不味いものでも食べたような顔をした。
「はっ、何だ?アメリカ。その顔は」
「放っておいてくれよ」
「ふぅん?」
プロイセンは苦虫を噛み潰したような顔をするアメリカをしばらく眺め、「まぁいいか」と深く突っ込むのはやめにして視線を反らした。
車はいつの間にか郊外に出るハイウェイに乗っている。
アメリカの空はからりと晴れていて、前から吹き付ける風が心地が良い。
「ところで、基地まではどれくらいかかるんだ?」
「…そうだね、5時間ちょっとってとこかな」
「は?おいおい、そんなにかかるのか?」
驚くプロイセンにアメリカは肩をすくめてみせる。
「俺が基地に直接着陸してもいいって言ったのを、上司に合わせるからって断ったのは君たちだぞ?」
「あぁ…そうだったな。ちぇっ」
実を言うとプレイセンは上司を送り届けたあと、もう一度フライトしてもらって基地に行こうと主張したのだ。
だがドイツがその案を却下したのだ。
専用機が上司をおろしてすぐに飛び立つのはおかしいとか、専用機を基地に降ろすのはいかがなものかとかいう理由で。
「まぁ、そういうわけだ!しばらくはドライブを楽しんでくれよな!」
アメリカは機嫌をとりなおしてそう言うと、ラジオのスイッチを入れた。
途端、スティーブン=タイラーの特徴的なシャウトがスピーカーから流れる。
「Yeeeehaaaaw!」
すぐに合わせて歌い出すアメリカ。
プロイセンはそのなかなか様になっている歌声を聞きながら片方の口角をきゅっと上げた。

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