スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Destroy 03

引きずりだされた少年は、ウルシラと同じくらいの年の少年に見えた。
日によく焼けた褐色の肌、荒れた茶の髪、赤いチョッキのような服にハーフパンツを履いている。
首、手首、腰、足首に赤や青の玉を通したようなアクセサリーをつけており、口は履いておらず裸足だ。
その少年は今、背中を赤茶けた地面につけ仰向けに押さえつけられている。
両手を上に、足を軽く開くように四人の騎士に押さえつけられ、そのすぐ足元にセシルが仁王立ちしている。
くつくつと笑う騎士たち、セシルはゆっくりと体をひねるようにウルシラを見た。

そう、見た。

フルフェイスの仮面の下からの強烈な視線。
ウルシラはガチガチと歯を鳴らし、体を震えさせた。

「ウルシラ」

エンリが凍りつくウルシラの名を優しく呼ぶ。

「無理なら首を横に振れ。そうすれば…お前は逃れられる」

そうするべきだ。
エンリの言葉にかぶさるように、子どもの悲鳴がこだまする。

助けて!やめて!放せ!嫌だ!!!

「首を横に…」

ウルシラの脳裏を亡き父が、母が、そして兄が通り過ぎる。
かつての臣下が、面倒をみてくれていた侍女が、仲良く遊んでいた貴族の子ども達が…。
彼らを生を弄び、奪い去った者たち。
絶対の復讐を誓った自分。
しかしそれを持ってしても、彼は自分をふるい立たせることができなかった。
怖い、怖い、怖い。
ただただ怖い。ただひたすらに怖い。
「ひ…」
泣き叫ぶ子ども。
あれは誰だ?
何故殺さなきゃいけないんだ?
自分が殺したいのはあんな無力な子どもではないはずだ。
自分が殺したいのは、自分の大切なものを奪った彼らだというのに。
復讐のためにはなんでもする?どんなことにでも耐える?
…無理だ。
自分にはできない。
出来るはずがない。
なんの罪もない子どもを殺してしまえば、己もまた畜生に落ちてしまう。

がたがたと震えるウルシラ。
暗黒騎士の中にしらけた空気が漂い始める。

「大丈夫だ。俺が逃がしてやろう」

エンリが安心させるように背中を軽く叩く。
心底怯えきっていたウルシラにはそれで十分だった。
彼はあまりの恐ろしさに屈し、首を横に振ろうとした。
しかし…

「ウルシラ」

呼ばれてしまった。

悪魔に。

後少し、ほんの少しだったのに。
狙いすましたように呼ばれた声に、横に振られようとしていた首は動きを止めた。
ウルシラは驚いたように彼を見た。
可哀想な生贄の目に佇む男を。
ウルシラの仇である男を。
陶酔したように。

「おいで」

フルフェイスの兜の下、表情など見えるはずもないのに、ウルシラには男が…セシルが悠然と微笑んでいる姿が目に浮かぶようだった。
優しく慈しむようにすら見える柔和なほほ笑み。
そんな天使にもっとも近い悪魔の笑みを浮かべた男は、ゆったりとウルシラに向かって手を伸ばす。
己が立っている地獄へと彼を誘うように。
そこがさも花の咲き乱れる楽園であるかのように。

「あ…」

かすれた声を出すウルシラ。
エンリはそっと視線を逸らし哀れんだ。
可哀想な子。
彼は今、そうたった今、その命を生贄の杯に捧げたのだ。

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。