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ため息つかなくたって幸せは逃げてる

王道ファンタジー系…。 ヒムアリ アリスは女。
ヒムラの弟(モブ)視点。名前なんてつけてやるもんか。
読み返さない

軍に所属している俺は普段は兵舎で過ごしているが、流石に兄の婚約披露パーティとなれば城に帰らないわけにはいかない。
あの堅物で女嫌いの兄がまさか結婚するとは思わなかったが、次期王である兄が結婚してくれれば弟の俺も楽が出来るというもの。盛大に祝ってやろうと思っている。

久々に戻った自室はきれいに片付けられ、侍女が三人待機していた。その侍女たちを下がらせ、ドレッサーをあけると案の定作った覚えのない礼服がわんさと入っていた。無駄に鼻っ柱の強いあの女がやったんだろう。
あの女狐、すでに四十を超えているってのに、まだ自分が若くて綺麗だと思っていやがる。そして子ども(俺たち)を、自分を飾る宝石の一種とでも考えているのだ。(自分を生んだ実の母親ではあるが、本当に魔女のような女だ。兄嫁は絶対彼女にいじめられるに違いない。可哀想に。)
ことさらそれらを無視して軍服でパーティに向かう事も考えたが、長々と説教を食らうよりは大人しくしておいた方が利口だろう。
適当に一着を取り出して椅子にかけた時、庭に人の気配を感じて窓を開けた。

するとそこには…変な女がいた。

変な女。そうとしか表現できないような女だ。
淡い紫のドレスを着て、頭に農夫のような麦わら帽子を被っている。
そうして庭の一角を大きなシャベルでもって掘っているのだ。
しかもシャベル使いも堂にいっている。シャベルの先を地面に突き刺し、片足をかけて体重で押し込み、穴を掘る。いや、掘っているというか掘り返しているとった方が正しいか。
庭師かとも思ったが、庭師があんなドレスを着るわけがない。
じゃぁ今夜のパーティに招待されたご令嬢の一人か…とも思うが、ご令嬢は庭いじりなどしない。それになにより、俺の部屋の庭(これはプライベートな庭だ)に入り込んで、土を掘り返す意味がわからない。
なんだあいつは。
見の危険は感じないが、不審人物であることには違いない。
こちらにはまだ気づいていないようなので、足音を殺して近づくと…作業をしながら彼女が何かブツブツとひとりごとを言っているのに気づいた。

「ここにはプリシラ=ローズを植えるんやで。プリシラ=ローズ。しかも黄色のやつや。それをな、アーチに這わすんや。クヒヒ。で、そのアーチの足元には紫色のポーチカを飢えてやるんや。クッヘッヘ」

変態だ。
間違いない。
花を愛するうら若い乙女……は、クヒヒとかクヘヘとか笑わない。

「アーチの間にはレンガの道をつくるんや。フヒヒ。こう、くねくねとな、させんねん。ウフフ」

気持ちが悪い。
というか、本当にこの女は何者で、俺の庭でいったい何をやっているのだろう。

「おい、女」

ぐっへっへっと笑い、よだれでもたれたのか腕で口元を拭っている女に声を掛けると、女はビクンと体を跳ねさせシャベルを取り落とすと、ギギギっという音が聞こえそうなほどにぎこちなくコチラを振り返った。
振り返った女も…またおかしかった。
真っ黒なサングラスに、大きなハンカチで口を隠している。
その女は、俺が睨んでいると「うわ、ヒムラやっ」と悲鳴を上げた。
いかにも俺はヒムラ…ではあるが…。
「いや、ちゃうわ。ヒムラはこんな若こうないな。…あ!君、ヒムラの弟やろ。第二王子やろ」
ビシッと指をさす変態。
「…そうだが…もしかして兄の知り合いか?」
俺の言葉に彼女は「あ」と大きな声を上げ、ペタペタと自分の顔を触った。
変態め。
俺が嫌な顔をしたのがわかったのだろう、彼女はハハハと笑いジリっと一歩下がった。
「おい…怪しいやつだな。お前は…」
「あ!あんな所で、ハゲでデブでチビなおっさんが首吊ろうしとる!!!」
「何!?」
突然大声をだし、俺の背後を指さす変態。俺はつられて後ろを振り返り、それからそこに何もないのに気づくとヤラレタ!と思った。
案の定、俺がもう一度彼女の方を見た時にはそこには誰も居なかった。
残されたのは掘り返されてぼこぼこになった地面と、一本のシャベル。

「何してるんだ」

地面に転がったシャベルを睨んでいると、後ろから兄の声が聞こえた。
振り返ると案の定、兄が立っていた。俺よりも2歳年上、2センチ身長の高い、そして今夜婚約披露パーティを開く男だ。
彼は不審そうな目で見ると「何をしてるんだ」ともう一度同じセリフを言った。
「返事がなかったから勝手に入ったが…」
そして、俺が見ていたものに気づいたんだろう。
俺よりも父親に似た男らしい顔が微妙に歪んだ。
「…それはなんだ」
「あぁ…それならさっき変た…変な女がいて」
「変な女?」
「あぁ…なんかしらねぇけど、麦わら帽子かぶってて、サングラスかけてて…」
と、俺が変態女の事を語っていると、少しずつ兄の顔が厳しいものになっていき、最後には鬼のような顔になった。
「お。おい、兄貴?」
「…の、馬鹿アリス!!!」
兄はものすごい形相のまま吐き捨てた。
身内ですらびびるくらいだ。きっと気の弱い女なら失神して2日は目を覚まさないはずだし、多分この先一生トラウマとして背負っていかなきゃいけない。いくら屈強な男だって数歩は後ろに下がって、とりあえず謝罪の言葉を口にするだろう。
「ていうか、アリスっていうのか?」
機嫌を窺うように言ったが、余計に気に触ったらしい。思い切り睨まれて喉の奥でヒッと変な声が出た。
「……あぁ」
「へぇ。兄貴に女性の知り合いなんて………」
言いかけてふっと口を閉ざしたのは、ものすごくとんでもない事を思いついてしまったからだ。
いやいや、まさかありえない。
そんなはずはない。
弟の俺がいうのもなんだが、兄はかなりの男前だ。
子供の頃は神童と呼ばれる程に頭が良く、まだ即位すらしてないものの、すでに父王の代わりを何度もつとめているし…それに法整備も進めたし、インフラ整備にもつとめ国を飛躍的に発展させている。
もちろん彼と血縁関係を結びたいという貴族や、他国の王族は数知れず…また、そういった事を抜きにしても女にはめっぽうもてる男だ。
そりゃもう4歳くらいの少女から、半世紀前は綺麗っていわれたのよ…なんていうバーさんまで。
俺の初恋どころか、その次に好きになった女も、その次に好きになった女も、兄に惚れちまったってくらいの男だ。
それがまさか…まさか………ないな。
うん。
ないない。ありえない。
俺の兄の嫁…つまり、未来の妃は、そりゃもう美しい女に違いない。
物腰が柔らかで、しとやかで、笑顔がたえなくて、趣味はお菓子作りにお裁縫とかで…。
贅沢は好まなくて、国民に人気があって…“あなたの姉になれてうれしいわ”とかなんとか俺にいってくれたりして…。
と、思ったのに、信じてたのに…。
「あれが、お前の義理の姉になる女だ」
「嘘だーーーーーー!!!!!!!!!!」

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