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041 まだまだ先は長く 03

続きっぽい感じ。
今度はエッジ。そして相変わらずモブがいる。 読み返さない

成婚を祝うために集まった国民に、バルコニーから手をふる王とその妃はとても美しかった。
若き王アルベールは紺色のバロンの伝統的な正装姿に王の証である真紅のマントを羽織っており、そしてその横に立つ若き妃ローザは純白の花嫁衣装を着ている。
王、アルベールは歴代のバロン王に比べて線は細いが貴族らしい気品があふれている。そしてローザはこの時、ようやく二十歳になったばかり。輝かんばかりの美しさを持つ彼女は国民たちに手を振り、そして傍らに立つアルベールに幸せそうな笑顔を向けた。

「バロン王、万歳!」
「新生バロンに栄光あれ!」
「我らが王に祝福を!」
「アルバート様、万歳!ローザ様、万歳!」
「二人の未来に幸あれ!」

素晴らしい快晴の下、人々は口々に祝いの言葉を紡ぎ、笑顔で彼らを見上げ手を振った。そしてリンゴンと教会の鐘が打ち鳴らされると、色とりどりの花びらが人々の上に降り注いだ。

***

昼に盛大な式が行われたバロン城では、夜になると華やかな夜会が行われ、また街では酒や料理が山のように振る舞われた。
人々は歌い、踊り、また流れの演劇団が上演する若い王と妃の恋愛劇…これは殆どが創作であったが…に興じた。子供たちもこの日ばかりは夜遅く起きて遊びまわっていても怒られず、日が落ちた今もそこらを走り回って遊んでいる。
この盛大な祭りに街にはバロン国内外から人が詰めかけ、宿が足らずに町の外にテントを張るものが大勢出た。そしてそんな人々を目当てにまた露店が並ぶ始末で、この日のバロンは一回りも二回りも大きくなっていた。

そんな街をひやかしながら歩く男がいる。男は異国風の衣装を身につけており、なかなか見映えのする。年の頃なら二十代半ばから後半といったところか。
本来ならこんな市井にはいるはずのないエブラーナ王エッジである。
今ごろは夜会で姫君たちとダンスのひとつでも踊っているはずである。なのに何故ここにいるかというと…、彼に言わせるならば、そこに彼の思い人であるリディアがいないからだ。
それにもう一つ理由をあげるならば、ローザの横に立っているのが彼のよく知った男ではなかったから…だろうか。
とにかく、彼がかつての仲間たちと旧交を暖めることを放り出してまで市井に降りてきたのには、なかなかに複雑な心情が彼の中で燻っていたからである。

「エッジ!やっとみつけた!おいエッジ!」

後ろから聞こえてきた声にエッジは小さく笑い、近くの露天で立ち止まると売ってあった串を二つ買った。
「エッジ!」
「だから聞こえてるって。オスカー。ほら」
エッジは今日のお目付け役であるオスカーに買ったばかりの串を一つ差し出した。
「せっかくの祭りなんだ。楽しまなきゃ損だぜ。…うん、美味い」
サイコロのように切られた肉が刺さった串は、甘辛いタレにつけて焼いたものらしくかなり美味しかった。
「だからって…はぁ。抜けられるなら抜けられるで一言俺に言ってくれ!」
「はは、言ったらお前は止めるだろう」
「当たり前だ!」
だったら言うわけがない。
エッジは肩をすくめ、肉にかじりついた。
「おかげで余計な恥をかいた」
彼が言うには、エッジに挨拶をしたいという貴族がやって来たのだという。
彼はすぐさまエッジの元に案内しようとしたが、つい先程までいたはずの場所にエッジがいない。
それで大恥を掻いたというのだ。
「しかも俺の顔色を見て、主人にまんまと逃げられた事がわかったんだろうな。『おやおや、君も大変だね、挨拶は今度にしよう』なんて言われて」
「はは、そりゃ大変だ」
「他人事だと思って………というか、よかったのか?抜け出して」
「…まぁいいさ。」
一瞬の間を置いてエッジは言うと、道端に無造作に置かれたテーブルセットの一つに座った。
オスカーはそのむかいの席に一度座ったが、すぐに飲み物をとりに席をたった。
そして戻ってきた時には、バロン産のワインと屋台で買い求めたものらしい料理を抱えていた。
「こっちがジャガイモのカラメル炒め、で、こっちが肴のすり身をボールにして油で揚げたもの、それからこれがタコとトマトときゅうりのマリネ」
「へぇ、気が効くじゃないか」
「…本当なら、ロブスターとかキャビアとか最高級のサーモンとかのはずだったんだけどな」
「そういうなよ。昼間に十分食っただろう?」
「はぁ…帰って大臣に叱られてもしらないからな」
「それは…ちょっとこまるな」
マリネのタコを口に入れてエッジは笑うと、オスカーから視線を流しはしゃぎ回る人々を見た。
見知らぬ者同士で「おめでとう」と言い合い手を合わせる人、ここぞとばかりに商売に励む者、即興演奏で人々を踊らせる者、テンションが上がりすぎて喧嘩をはじめるもの、その横で賭けをはじめるもの…。
「平和になったもんだぜ」
つぶやくエッジの言葉が少しだけ投げやりに聞こえ、オスカーは主人の横顔をちらっと見た。
「…いいことじゃないか」
「いいことだぜ、もちろん。そのために俺たちは命かけたんだからな」
「…ローザ様も幸せそうでしたよ」
「あぁ。大した女だよ、アレは」
エッジは自嘲するように笑った。
「俺よりよっぽど強い。見た目は温室育ちのお嬢様なのにな」
さすがセシルの女だと幾度も感心したものだ…とエッジはいう。
「こりゃセシルはローザの尻に敷かれるな…なんて思ってたもんだが…まさかこうなるとはな」
「仕方ないさ。バロン王…一つ前のバロン王が玉座につく時には、盛大な粛清が行われて有力な血縁者が一人も存在しなかったんだ」
「だったらセシルを王に仰げばよかった」
「それは無理がある。今は勇者とはいえ、彼は暗黒騎士だろう?ミシディアの件もあるが、ゴルベーザが暗黒騎士団を使ってやったことを、セシルさんがやったことだと勘違いしているものも多いらしいじゃないか」
「くだらない」
「わかってる。けど、世間の目はそんなものだ。パラディンとしての彼の活躍は知っているものは知っているが、バロンの国民にとっては暗黒騎士団の団長としての印象の方が強いんだ」
「気に食わない」
「といっても、もうローザ様は納得済みだ。セシルさんもカインさんも」
「俺にはわからねぇ」
エッジ自身、エブラーナの王であり、将来は子孫を残す事が王としての務めだ。
彼は現在独身であるが、幾人もの姫が彼の妃の座を虎視眈々と狙っている。
だが、彼はそんな女には全く興味がなかった。
国同士の同盟を強化するという名の婚姻も、あまり仲の良いとはいえない国と友好を結ぶための婚姻も、国内の政治的な婚姻もまっぴらだった。
彼の心に住むのはただ一人。
彼女以外に考えられない。
だがその一方でわかってもいるのだ。
エブラーナとバロンでは事情が違うということ。そして、自分もまた思いが叶わないとなれば、彼女以外の誰かを国のために娶らねばならないということを。
「あぁ、クソ」
だからこうもいらいらするのだろう。
そんな主人の複雑な心情を読み取ったのかオスカーは困ったような顔をし、それから彼の杯にたっぷりと酒を注ぎ入れた。

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