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出ちゃいましたPt.2-act.03

火村が女になって3日が経過したが、彼は変わらず女のまま元に戻る気配はない。
そして…

「君、帰らへんの?」
「あぁ」

何故か、あの日から彼…いや、彼女は私の家に半居候状態だ。
彼女は旅行かばんに荷物を詰め、私の家で生活をしながら大学に通ったりしている。
なんで帰らへんの?と聞いたら、北白川の下宿が女子寮に変わっていて、ものすごく居心地が悪いのだそうだ。
確かにそれは居心地がわるいだろう。
火村が男のままであるならば。(ムカツクことに、彼はとても女にモテたから)
だが現在の火村は女であるわけだし、何の問題も無いはずだ。
どちらかというと男である私と同じ部屋に暮らしている方が問題が在るような気がするが…彼女の心情も理解できなくはない。
それにしても…今の火村は、私にとってなかなか心臓に悪い。
女ひでりの長い私には。
なにしろ彼女はとんでもない美女なのだ。
匂い立つ…というか、とにかくいるだけでフェロモンを感じるというか…色気があるというか。
感じたことのないドキドキを感じて、火村を前にすると私は冷や汗が出る。
私の態度はかなりぎこちないもので…それは鋭い火村にも気づかれている事だろうと思う。

 *

「アリス、帰ったぜ」

玄関からの声に、テレビを見ていた私は小さく息をつく。
「帰ったって…ここ、君の家やないんやけど」
「いいじゃねぇか、別に。お前意外に帰ってくる奴がいねぇんだ。俺が増えた所で不都合はねぇだろう?」
彼女が居ないんだから問題ないだろう…と言われて、私は微妙な気分になる。
「確かに不都合はあらへんけど…」
「けど、なんだよ」
「…なんでもあらへんわ」
いくら美女になっても、火村は火村だ。
私は彼女に一生叶いそうにない。
「あー、疲れたぜ」
彼女はネクタイを緩めるかわりに、シャツのボタンを二つ開け私のとなりに座った。
「おまえなぁ…おっさんみたいやないか」
「おっさんだからいいんだよ」
「今は女やろ」
「あぁ、誰かさんのせいでな」
ギロリと睨まれ、ぎくりとするが負けてはいられないと彼女の口に咥えられたタバコを抜き去った。
「おい!」
「女の人はタバコは吸えへんほうがええで。テレビで冷えの原因になるいうてたで」
「ただでさえストレス溜まってるのに、この上、タバコまで取られたんじゃ冷えの前に胃に穴が開いちまうよ」
彼は私の手からタバコを奪い返すと、もういちど口に咥え火をつけた。
私は呆れながら灰皿を彼…じゃなかった、彼女にとってやり、その横顔におやっと違和感を持った。
「火村、君、化粧してる?」
そう言うと、彼女は一瞬固まって、忌々しげに私を振り返った。
その顔は…やはり、うっすらと化粧をしているように見える。
「…あぁ」
「でも、今朝はしてへんかったよな?」
「あぁ、大学にいったらうるさい生徒がな…」
「ははーん、“先生ももうちょっとお洒落したほうがええですよ~”とでも言われたか」
「まさにそのセリフを言われたよ」
息を吹きかけられ、私はケホッと咳き込んだ。
「ったく余計なお世話だぜ」
「でもまぁ、女の人やったらある程度の化粧は嗜みやないん?」
「……」
むっつりと黙り込んだ火村は相当に機嫌がわるいらしい。
いそがしくタバコを吸い、指でリズムをとる。
「くそ、面倒くせぇ」
「…あぁ…そのスマン」
「アリス、お前、戻らなかったらマジで責任を取ってもらうからな」
殺気すら帯びた目で睨まれ、私は顔がひきつるのを感じた。
「せ、責任て?」
どっと汗を掻きながら聞いた時、ピンポーンと部屋の呼び鈴が鳴り、誰かがやってきたことを告げた。

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