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憎き愛し子

悪友 読み返さない

「俺なわけないじゃん…」

そう言ってズーンと沈むフランスは、昼間に彼女と別れてきたばかりであるらしい。
美大に通っている黒髪のキュートな女性。痩せているわりに胸が大きくて、絵の才能は…まぁ今一つだったけれど、そこそこ頭がよくて機転のきく女性でフランスはとても彼女を気に入っていた。
もちろん人である彼女と、国であるフランスでは流れる時間が違う。添い遂げることは出来ないということはわかっていたし、彼女の時間を将来のない男に消費させるのを恐れて一年ほどで別れようと思っていたフランスだったのだが…

「“出来ちゃったの”…はないよなぁ…」
俺の子なわけないじゃん。
「しかも、結婚してね…だって」
フランスは半べそをかいてワインを煽った。

国という存在には生殖機能はない。
いや、性格にいうならば性交渉はできる。だが子を成すことはありえない。
もちろんこれまでに前例がないからといって、可能性がゼロとは言い切れないが、可能性があるとするならば国同士の場合だけだろう。
人と国との間に子ができるわけがない。

ガッツリ落ち込んでいるフランスの話を聞いていたスペインとプロイセンは、同時に顔を合わせると「「プッ」」と空気の抜ける間の抜けた音を出し、慌てて口元を両手で抑えた。
しかし、それはフランスの耳には届いてしまったようで、「おまえらぁあああ!」とフランスに怒鳴られた。
「なんなの!お前ら!もう!!!この俺が傷ついているってのに笑うってなんなんだよ!」
「いやいやだって、なぁ?」
「だって、なぁ?」
ぷすすっと二人は笑う。
いや、こらえてはいるのだろうが、二人は確実に笑っている。
友達がいのない男たちだ…とフランスはまたガックリと落ち込んだ。
「少しは慰めろよ」
「慰めろっていわれてもよぉ…」
「あ、俺、ロマーノにメールで教えたろ」
「お!じゃぁ俺もヴェストに教えよっと」
「なんなの!お前ら!!!」
ぽちぽちと携帯をいじりだした二人はフランスの事などもうどうでもいいようで、愛する子分と弟の事で頭がいっぱいのようだった。
フランスは二人の様子を見てはぁ…と大きくため息を付いた。
「まぁ期待してなかったけどね!期待してなかったけど…もう少し言い方あるだろう?普通…。それを笑うって…」
「だってよー、お前が二股かけてるならわかるけど…」
「かけられてたゆーんは珍しいよなー」
「そうそう、しかも本気っぽぃのに」
ぷぷっと二人はまた笑う。
そうなのだ。お互い遊びだとわかっていれば、互いに浮気もありな恋愛をいくつも楽しんだことはあるが、割りと本気だった子に浮気されるのはフランスは初めての経験だった。
しかもただの浮気ではなく、彼女は浮気相手との間に子どもまで作っている。
その上とどめのように、彼女はその子をフランスの子だといい、結婚を迫ってきたのだ。
フランスにしてみればこれ以上のショックはない。
だが無関係な二人にしてみれば、これ以上に面白い話はない。
二人はポチポチいまだに携帯をやりながら、ボーイに酒の追加を機嫌よく頼んだ。
「ほんと友達がいのないやつ」
フランスはぼそりとつぶやき、つまみのオリーブのピンチョスを口に入れた。
「俺が結構マジだったの知ってて、おもしろがるんだからな…」
ため息をつき、彼はオリーブを奥歯でつぶしながら別れ際のことを思い浮かべた。
彼ら…プロイセンとスペインがおもしろがるから、随分無様な振られ男(実際はそうなのだが)であるようなきがするが、実際の別れ際はそれほどみっともないものではなかった。
事実、彼は泣かなかったし、彼女をなじらなかったし、責めなかったし…微笑みすら浮かべていたのだ。
そして理論的に彼女の腹の子の父親は自分ではない事を告げ、泣きじゃくる彼女を慰め、本当に愛していたとつげ、またお腹の子の父親と幸せになってほしいと穏やかに告げた。
振られ男にしてはこれ以上ないほど立派な態度はなかったはずだ。
だけど所詮は振られ男。
こういう時に裏切られたと怒ることの出来ないフランスとしては、やっぱり悲しむしか出来なかった。
それなのに慰めてもらおうと思った友人たちからは笑われるなんて、本当に踏んだり蹴ったりだ。
だからといってまさかイギリスに醜態をさらすわけにもいかないし…本当に友人に恵まれないとフランスは落ち込んだ。
「はぁ」
何度目かのため息をつき、テーブルに額をついた時、
「お!フランス決まったで!」
とスペインが楽しそうな声を上げ、フランスは気だるげに顔を上げ、一切の期待がこもらない目でスペインを見た。
「…なにがよ」
「なにって、なぁ?」
「なぁ?」
スペインとプロイセンの二人はによによとしながら視線を合わせると、せーのっと小さく声を合わせ、
「「フランスの失恋記念パーティ!」や!」
と大声を上げたかと思うとケタケタと笑い始めた。
「は、はぁ?」
失恋記念パーティ?と目を白黒させるフランスに、スペインは携帯をジャーンと向けた。
「実は、さっきFacebookに、フランスが手痛い失恋したって書き込んだったんや!」
「俺はTwitterに書きこんどいた!」
「そしたらトントン拍子に話がきまってなぁ~」
「今のところ、参加者が8人…あ、今、日本からツイートきたから9人だぜ!」
「こっちカナダからもきたで、人数はいっとる?」
「いや、じゃぁ10人か」
「場所どこにする~?」
「やっぱフランスが失恋したんだからフランスの家でいいんじゃね?」
「あ、エストニアも参加やって。あとインドも」
「おっけおっけ。じゃぁ結構おおきな会場抑えたほうがいいかもなぁ…」
フランスはぽかんとして二人の会話を聞いていたが、やがて「なにしてんの!!!!」と大声を上げて立ち上がった。
「ちょ。ちょ。ロマーノやドイツは仕方がないにしても!なんで全世界にばらしちまうんだよ!!!」
「え?」
「え~?」
「信じらんねぇ…お兄さんの評判ガタ落ちじゃん!!!」
「ええやん、みんな心配してくれてんで?」
「そうそう、愛されてんじゃん、フランス」
プススっとまた笑い出すスペインとプロイセン。
フランスはそんな二人を唖然と見つめていたg、やがて諦めたようにガックリと肩を落とした。
「そういう奴らだよな…お前らって…」
フランスの失恋を世界中に広めて、しかもそれを馬鹿騒ぎするためのネタにするなんてあんまりだと彼は思う。
しかし、彼らが悪意だけ…面白半分だけでやっているわけではないと知っているから、お人好しのフランスは怒るに怒れない。
むしろほんの少し…ほんの少し喜んでいたりして…
「あぁ…俺ってほんと愛されてるよなぁ…」
騒ぎ立てる二人を見ながらフランスはボソリとつぶやき、今度こそテーブルにつっぷして動かなくなった。

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