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ゼロの夜想曲 42

「そんな!ありえないわ!!!!!」

フーケの上げた悲鳴。
大きく見開かれた“彼女”の視線の先では、胸の中央を打ちぬかれたゴーレムががらがらと崩れ落ち、土煙に消えた。
もうそれは二度と立ち上がることも再構築されることも無い。
それを確かめて、ルイズを見ると・・・彼女は俺の胸に頭を預けぐったりとして気を失っている。
無理をさせたとはいえ・・・、これがボルテクスであれば、こんな無防備な姿をさらせば、あっという間に殺されてしまうだろう。
だが、今はいい。
ゆっくり休め。
そう小さくつぶやき、彼女の髪をそっと撫でた。


少しずつはれていく土煙。
そこには鈍色の大きな岩の塊がいくつか。
すでにゴーレムとしての役目を完全に果たさない“土くれ”
その向こう側からゆっくりと一つの影が現れる。
「フーケ・・・・」
つぶやいたのは、今の今までほうけていたキュルケだ。
と、フーケの正面から吹いた風が、ローブのフードを後ろへと吹き飛ばす。
そこにさらされた顔は・・・
「ミス・・・ロングビル・・・・!」
息を呑むようなキュルケの驚きの声。
そう、そこにいたのは、そしてフーケの正体はミス・ロングビルだったのだ。
教師という仮の姿をすて、フーケとして姿を現した彼女は冷たい瞳でルイズと、そしてそれを支える玲治を見た。
「すばらしい・・・」
「え?」
「すばらしい力だわ・・・。破壊のピラミッド・・・!」
狂気の入ったようなフーケの言葉にキュルケはフルリと体を奮わせた。
「予想以上にすばらしい力だわ!」
彼女は鋭角に吊り上げた瞳でキッと玲治を見つめると、その手に持った杖の先をルイズに向けた。
「それをお渡しなさい!それは私のものよ!」
「は・・・これを奪ってどうする気だ?」
「そんなこと貴方たちが知る必要は無いと思うけど」
「ふん・・・なるほど。これを小屋においていたのは、俺たちにこれを使わせるためだったんだな?」
「そうよ。私にはどうしても、ソレの使い方がわからなかった。だけど、一度見てしまえば、あとは私にだって使えるはず・・・」
「なんとも甘い考えだな」
「そうかしら・・・・?」
そういいながらフーケは杖の先に小さな光の弾を作り出した。
向けられた先は・・・ぐったりとして眠るルイズ。
「それでどうする気だ?」
「それを渡しなさい。そうすれば、命だけは助けてあげる・・・っていうのはどうかしら?」
得意げに言うフーケ。それに玲治はチラリとキュルケを見た。
キュルケは玲治の視線にハッとし杖を構えなおすが・・・彼は、それにだまって首を横に振る。
「あら、いい心がけね」
うっすらと笑うフーケ。
しかし・・・そこで悔しそうな顔をするはずの玲治は・・・ニヤリと不敵に笑った。
「・・・何がおかしいの?」
「いや」
玲治は小さく笑い、
「ほら、使えるもんなら使って見ろよ」
破壊のピラミッドを簡単に、そして無造作にフーケへと投げる。
「玲治!!!!!」
キュルケの悲鳴。
放射を描いたそれは綺麗にフーケの杖を持っていないもう一方の手の中へと落ちた。
「なんてこと・・・・!」
「・・・・」
非難の声をあげるキュルケと、納得のいかない顔をするフーケ。そして、
「あんたには使えない」
面白がるような玲治の声。フーケは答えずにピラミッドを持ち直すと、それに向けて魔力を流し始めた。
っと、その途端・・・
「?!」
フーケの体からフワリと赤い光が無数に浮かび上がり・・・・
「何?!!!!」
フーケは慌てて手を離した。
ほうり出された破壊のピラミッドは、コトリと斜めになって地面に落ちる。
赤い光は、その落ちた破壊のピラミッドを追い、やがてスゥっとピラミッドにとけて消えた。
「はっ・・・ははははは・・・・!!!!!」
そのフーケの慌てぶりにはじけるように笑ったのは、ルイズを胸に抱えた玲治だ。
「なんてざまだ。土くれ」
土くれのフーケ・・・そう恐れられていたはずのフーケは、玲治の前で本当にただの“土くれ”になってしまった自分に愕然とした。
「そんな・・・」
カタカタと知らずに震え出した体。
じわりと背後から忍び寄ってきた恐怖が彼女にとりつき、顔を蒼白にしていた。
「違う・・・」
違う。
ただ、ゴーレムを壊されただけだ。
何も恐怖をかんじる必要はない。
私はまだやれる。
ゴーレムだってさっきのヤツよりも頑丈で大きなものを生み出せる。
何も怖がる必要はない。
そう自分に言い聞かせ、取り落とした破壊のピラミッドに手を伸ばそうとするのだが・・・・その指先は、ピラミッドに触れる寸前でピタリと止まった。
「触れられないか?フーケ」
玲治の言葉に彼女の体がピクンと動く。
「触れられないか?フーケ」
同じ言葉を繰り返す玲治。その声はとても楽しそうで・・・そしてまた、はたで聞いてるキュルケですら震えるほどの悪意をにじませていた。
「そんなことは・・・・」
言いながら何とか拾い上げようとするフーケだが、その指はどうしてもピラミッドに触れることが出来ない。
小刻みに震えていた体は、今ではブルブルと無様に奮え・・・その体からは汗がにじみ、雫となってポタポタと地に落ちる。
気を抜けばそのまま失神してしまいそうな恐怖。

あぁ・・・だめだ。
このままではだめだ。
飲み込まれてしまう。
底の無い闇に飲まれてしまう。

「あんたの負けだよ。フーケ」

甘く囁かれた言葉。
フーケはそれ以上耐えることが出来ず、崩れるように膝をついた。

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