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君と僕

石岡×御手洗 というか 石岡→←←←←←←←御手洗
現在、占星術と斜め屋敷を読み終わってる
舞台は現代です。

「近頃、色使いが明るくなったよなぁ」

そう言われて、僕ははてと首をかしげた。
「そう…かな?」
「そうだよ」
大学時代の友人で、今はとあるインテリアショップで働いている由水(ゆみ・苗字)君が言った。
彼に頼まれていた絵をおさめに行った時に、彼が絵を見ながら言った言葉だ。
彼は白い壁に私の絵を飾り、「うん」と一人納得したように頷いた。
「やっぱ明るくなったよ、随分と」
「そうかなぁ」
僕はアホウほように同じ言葉を繰り返した。
僕が一週間で描き上げた絵は、ひまわりの絵だった。
頼まれた時は、桜も咲かぬ内に…と困惑したものだが、仕事ならば仕方がない。
図書館でひまわりを被写体にした写真集や、ゴーギャン(由水君がゴーギャン風に…とリクエストしたから)の画集を借りて、なんとか描ききったものだ。
これはとあるテレビ局の番組のスタジオに飾られる予定だそうだ。
「ゴーギャン風になっているかな」
「まぁ、ちょっと絵の具が薄い気がするけどね」
「それは勘弁。なにしろ時間がなかったから」
そこまで絵の具を重ねることが出来なかったのだ。
ちなみに言えば、出来栄えだってそこそこでしかない。なにしろ一週間しか時間がなかったのだ。構成を練る暇もなかった。
「わかってるよ」
「それより…そんな色が違うように見える?僕はよくわからないんだけど」
別に気にすることでもないような気がするが、絵描きの端くれとしてはやはり気になる。
何しろ別に明るく描こうとしたわけでもないし、描き方を変えたつもり(ゴーギャン風は別にして)もないからだ。
「あぁ、違う。何か心境の変化でもあったんじゃないか?」
「心境?…いや。別に」
「住まいを変えたとかの環境の変化かな?」
「それも。大学時代からお世話になってるアパートで描いたものだよ」
「ふぅん。じゃぁ女でも変えた?」
あけすけな物言いに僕は苦笑した。
「それはないよ」
「あれ?**ちゃんは?」
由水君が口にしたのは、僕が大学時代に付き合っていた女性でとっくの昔に切れている。「いつの話ですか」と呆れると、彼は「お似合いだったのに」とどうでもよさげに言った。
「それに僕はプライベートは作品に出さないタイプだから」
芸術家の中には、プライベートを絵に叩きつける種類の人間は多くいて、えてしてそんな人物のほうが成功したりするものだ。
それに対して僕は内面をむき出しにするような絵がとても苦手だ。
どちらかというとファンタジーやSFといった現実にはない絵を描く方を得意としている。
近頃ではゲームのキャラクターや世界観のデザイン(メインではなくサブだが)や、ノベルズの表紙デザインや口絵の仕事なんかを多くやっている。
もちろん本格的な洋画なんかも好むけれど、こちらの方は行き詰まりを感じて長い。
「じゃぁ気のせいかな?」
「そうだと思うよ」
私がそう言うと、彼も気のせいと納得したらしい。「そうかもね」と相槌をうった。

それから請求書などの話をして、私が彼の事務所を出ると時刻は午後二時を回っていた。
まだまだ太陽は高い。そのまま帰ってしまうには惜しくて、私は久しぶりにデパートに足を伸ばした。
ぶらぶらとあてもなくフロアをさ迷い、展示会場で生け花展があっているとの掲示に従ってそちらにも足を伸ばした。
特に有名な人のものではなく、市民サークルや高校生が合同で開催しているものらしい。入場は無料。
私の他はほとんどが女性客で少しだけ気恥ずかしい思いをしながら作品を見ていくと、ふとひまわりを使った作品にいきあたった。
ひまわりといっても、あのばかでかいものではなく、小さなもの(残念ながら名前はわからない。もしかしたらひまわりとは違う種類なのかもしれない)ではあったが。
私は自分が納品したばかりの作品を思い浮かべながら花を鑑賞し、ふいに…そう本当に唐突に御手洗の事を思い出した。
そういえば仕事のこともあり、あの偏屈の占星術師にはしらくあっていないな…と。
帰りに寄ってみるかと考えて、他の作品を回ったのだが…どうも彼の顔がよぎってしまってからは鑑賞に集中できなくなってしまった。
私は後半のほとんどをちらとしか見ずに会場を出ると、地下に降りて彼への手土産を選ぶことにした。

デパ地下で売っているのものは高いという先入観があったが、…まさしくその通りだった。
しかしそこらにはない地方の有名店舗等も出店していて、珍しく興味を引くようなものばかりで、いやがおうにも購買意欲をかきたてられる。
※※堂の和菓子にラ・※※の季節限定ロールケーキ、※※本舗の鱒寿司。ベルギー直輸入のチョコレートに、スイスのチーズをつかったケーキ。
手当たり次第に買ってしまいたい欲求はあるが、もちろんそれほど懐が暖かいわけもない。
私は目移りしながらぐるぐると悩み、やがて一つの商品に目をつけると売り子の前に立った。

 *

「やぁ、久しぶりだな。御手洗君」

私がそう言うと、奥のデスクについて書き物をしていた御手洗はムッとしたような顔で「遅いよ」と言った。
私はその言い草に呆れてしまった。
「遅いって…別に約束をしていたわけじゃないだろう?」
「それでも僕が遅いって言えば遅いのさ!」
「相変わらずだなぁ…」
「それってどういう意味だい?」
何故か目をきらきらとさせる御手洗に僕はちょっと体を引き、それから「あぁ、おみやげがあるんだ」と一歩を踏み出した。
「土産?僕をおいてどこへいってたんだい?」
「どこって…ただのデパートだよ」
「デパート?何をしに?まさかデパガを見に行ったんじゃないだろうね?」
「なんで僕がそんなことしなきゃいけないんだ」
「ふん、だって君はほれっぽいじゃないか」
そんなことはない…と言いかけて、否定出来ない過去を思い出し「それよりこれ」とごまかすようにデスクの上に手土産を置いた。
鋭いところのある御手洗が僕の下手なごまかしに気づかないわけはない。彼は僕の方をちらっと睨んだ後、袋の中を覗き込んだ。
大きめの紙袋の中には、桃色の薄い布に包まれた黒いお弁当箱が二つ入っている。
「これは?」
中身を開けるまでもなく聞く御手洗に「お弁当だよ」と教えてやった。
「胡蝶屋っていう老舗の和食店のお花見弁当だって」
「お花見?」
「っていってもまだ桜は蕾だけれどね。夕食にどうかと思ってさ」
「ふぅん」
彼はやっぱり手に取らぬまま、袋をのぞきこんでいる。
「なんだよ。いらないのかい?人がせっかく潤いのない食生活をしている君をおもって買ってきてやったのに」
それにそれは結構高かったんだ。
反応が無いことに少しむっとしていると、彼は「じゃぁ桜を見に行こうか」と言った。
「うん。それがいい。そうしようよ。石岡君」
「は?でもまだ桜は咲いていないよ」
「ははは、馬鹿だな。花が咲いてなくても桜は桜だよ」
「そりゃそうだけどさ…」
だからといって、花の咲かない、しかも葉っぱすら付けない桜を愛でに行くのは随分と物好きじゃないか。
それにまだまだ夜は寒いし…
「別に花見をするために買ってきたわけじゃないしさ。今日のところは此処で食べてしまおうよ」
「嫌だよ。折角花見弁当があるのに」
「いや…そうだけれど…。まだ夜は冷え込むよ?」
「だったら防寒をちゃんとしないとね」
彼はそういうといつになく身軽に立ち上がると、コートハンガーからコートを取った。
「でも…ねぇ、御手洗君。一体どこにいくんだい?」
「そうだな。あぁ、**寺の墓所の近くの公園はどうだい?」
「…えらく寒そうだし…僕は遠慮したいんだけどね」
それに今日は随分と歩きまわったから疲れている。
できればゆっくりしたい。
だが、
「ダメだよ、君のせいなんだから」
当然のごとく御手洗は許してはくれないのだ。
「なぜ、何が僕のせいなんだ?」
「だから、君が遅いから」
「遅いって?」
「君が来ないから」
そこまで言えばわかるだろう?とでもいうように非難がましい目を向けられるが、あいにく私にはさっぱりとわからない。
だがこれ以上彼の機嫌を損ねると、盛大に彼が拗ねることはわかっている。
結局の所、私は彼には弱く、逆らうことなんて出来やしないのだ。
私と彼の関係は、そういうふうになっているのだ。
「わかったよ」
僕が折れると彼はにっこりと笑い、「君がお弁当を持ってくるんだよ」と言って彼はさっさと部屋の外に出てしまった。

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