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一番安らげるところはどこですか

学生 アリス×にょ火村
女ってだけで、火村にはほとんど変更ないっす。
読み返す気力ないです。

「俺、はよ結婚したいねん」

にっこにこと微笑むアリスを見て、俺は幸せな家庭に育った人間の欺瞞だな…とぼんやり思う。
「君は?」
「…別に」
結婚なんて考えた事はないし、先人たちの言う『結婚は人生の墓場だ』とか『結婚式のファンファーレは、戦場に行く兵士を送るためのそれに聞こえる』って言葉を信じている…てな事を言ってもよかったが、わざわざ彼の夢を壊すこともなかろうと適当に返した。
だがそれでもアリスには気にくわなかったらしく、彼は不満そうに口を尖らせた。
「なんや、めっちゃつまらん反応やな」
「そりゃどうも」
「私も可愛いお嫁さんになるのが夢なんですぅ~って言ったら可愛げもあるんに」
「俺に可愛いげを求められてもな」
そういってタバコの煙を吹き掛けると、けほけほと彼は咳をした。
「それで?アリスにはそのお嫁さん候補はいるのか?」
「はは!それは…………絶賛募集中や」
「だろうな」
笑うとアリスは拗ねたような顔をする。
それが面白くて「応募状況はどんなだ」などと、ついつい余計な口が出てしまった。
するとアリスはますます拗ねた顔になり、それから「君、応募してくれへん?」とあまりにも情けない顔で言うので、俺は腹を抱えて笑ってしまった。
「ひ、ひど、そこまで笑わんとええやん!」
「だって、お前…」
そんな眉を八の字に下げて。
大笑いをしていると、笑われた彼は耳まで赤くして照れていたが、やがて何かを考えるようにふと天井の方を見た。
「なんだよ、アリス」
「んー…、いや…」
「おい」
「いや、だからなー、君って結婚相手にしたらかなりの良物件やないかなぁって思って」
なんだそりゃ。
眉を上げると、彼はくつくつと笑った。
「いや、だって口は悪いし性格もほめられたもんやないけど…」
「なんだよ」
ギロリと睨むと、彼は焦ったように顔の前で手をふる。
「け、けど、ほら、顔はええし頭もええし、な?」
「なにが、な?だ」
なんとなく腹立たしい。
「いや、褒めてるんやで?」
「そうは聞こえなかったけどなぁ」
じっと見ると、「ほんとやで」と彼は笑った。
「やって君、えぇ女やん。みんな君をみて呆けとるの知っとるやろ?」
「どうだかな」
そんな言葉に喜びを覚えるのは、頭にチーズケーキが詰まった女だけに違いない。
少なくとも俺は外見に見惚れられて、鼻を高くするような女じゃない。
大体、アリスは俺がモテると言って羨ましがるが、見知らぬ誰かに「ずっと好きでした!付き合って下さい!」なんて言われても気持ちが悪いだけだ。“ずっと”ってなんだよ、ずっとって。俺はちっともそいつのことを知らないのに?あぁ気持ちが悪い。
俺の機嫌が落ちたのに気づいたのか、彼は困ったような顔をし「生活力高いし!」とフォローするように言った。
「君、料理美味いやん。それに家事かてできるし!な!家庭的やん!」
「それだけで家庭的なのかよ。随分お安いな」
「え、そうかなぁ~、俺は君みたいなお嫁さんほしいと思うで?」
まんざら嘘でもないように言われて俺は少しだけ驚いた。
俺みたいな嫁がほしい?
「そりゃまた随分奇特なことだな」
「そうか?」
だが彼の言葉に俺の機嫌は不思議と浮上した。
多分、アリスの持つ独特の雰囲気のせいだろう。
他の人間に言われれば鳥肌しか立たないだろうに、ごく自然と俺はそれを受け入れている。
「君は優秀やから、多分高給取りになる。そしたら俺は…」
「永遠に未来の作家を夢見て、家で文字を書き続けるってか?おい、そりゃ調子がよすぎるだろう」
「永遠に…は余計や…。す、すぐに作家くらいなったるわ!」
「へぇ」
「そしたらなぁ、君は外に働きに出るやろ?」
「ふん」
くだらない…という思いが半分、そして半分はその先が聞きたくてアリスを促す。
「俺は大抵家におるわけやん?やから子どもらの面倒は俺が見るんや」
「お前、子どもは好きそうだよな」
「好きやで」
「でも、締め切り前になるとほっぽり出しそうだよな」
「そ、そんなこと…」
ないとは言い切れないのか、語尾はうにょうにょとアリスは誤魔化しやがった。
「おいおい、しっかりしてくれよ旦那さん」
からかうと彼は「おう」と言った。
「で、でも、あれや。忙しい時は、ベビーシッターを雇うのもええかもしれん」
「はぁ?お前、俺がいるのに他の女を家に呼ぶのかよ」
「え、あー…うん、あかん?」
「ダメだね。俺が人を自分のテリトリーに入れるのが好きじゃないことくらい知っているだろう?」
「ん、あぁ、そやね」
俺が部屋に入れたことのある友人なんて、数えるほどしかいない。
それも何らかの用事があることが大前提であり、アリスのように入り浸る奴なんて一人も居ない。
それにしても、良く考えなくてもこれは変だ。
同性ですらめったに部屋に入れないというのに、アリスという男は完全に入り浸っている。一応異性だということくらいはわかっているらしく、泊まることはないが、それでも俺のベッドでよく昼寝をしている。
今では慣れっこになってしまったが、慣れっこになってしまったという事態には未だに驚きを覚える。
周りの人間は俺達がつるんでいるのを見て「何故」と不思議に思っているようだが、何を隠そう俺こそが「何故」と最大級の疑問を持っているのだ。
「やったら俺はがんばらんといかんなぁ~。君はなんの職業につくかしらんけど、優秀やから朝早くから夜遅くまで働きそうやからなぁ~」
「家事をしてくれるのか?旦那さん」
「んー、がんばらんとあかんなぁ~。朝から朝食作って、君のお弁当作って、君を送り出した後子ども達を起こして、幼稚園に連れて行って…」
うんざりするようなスケジュールを彼はさも楽しそうに語る。
「帰ったら俺は昼すぎまで眠る。そして昼すぎに一人でカップ麺を食べて、子ども達を迎えに行って、子ども達の面倒を見ながら執筆活動をする。そして夕食を作って、子供らに食べさして…」
「幸せそうな処悪いが、掃除や買い物の時間が抜けてるぜ」
「あ、そうか」
彼は困った顔をし、「主夫は大変や」と呟いた。
そうしてしばらくあぁだこうだと言っていたが、どうにも上手く折り合いがつかないらしく、「奥さん」と俺に向かって言った。
「なぁ、やっぱり、君、定時には帰ってくれへん?」
「なんだよ、いきなり弱気になったな」
「やって、子ども三人もいてると大変なんやもん」
アリスは家事につかれた主婦のようにため息を付いた。
おいおい、いつのまに俺は子どもを三人も生むことになったんだと呆れつつ、三人の子どもに囲まれるアリスというものは案外想像に容易いと思った。
「女の子が一人で、わんぱく坊主が二人やで」
「へぇ」
「育メン作家」
ぽつり、とアリスはつぶやき、その言葉が気に入ったのかご満悦に笑った。
「今をときめく育メン作家として、インタビューうけんねん」
彼は育メン作家になりきって、『お仕事はいつなされてるんですか?』とか『お子さんに絵本の朗読なんかもなさってるんですか?』とか自分でインタビューして自分で答えている。
はたから見れば変な奴だが、幸せそうなので放って置く。
「休日はピクニックいこな。河原でバーベキューもええな。夏はもちろんキャンプやで。ほんで、冬には望遠鏡担いで天体観測や」
海水浴に動物園、水族館、植物園、遊園地、アウトレットモールに野球観戦…と、呆れるほどにアリスの口からはぽんぽんと言葉が飛び出てくる。
「旦那さん、俺の稼ぎだけじゃそれは無理ってもんだぜ」
「はは、安心せい、奥さん。俺がミリオンセラー作家になったる」
ミステリだけじゃなく、育メン作家としての執筆もあるんやで。
彼は本当の事のように言った。
「もちろん家かて建てるよ」
「ローズガーデンのあるような?」
「そうやね」
俺の言葉にアリスは幸せそうに目を細めた。
「ええね。新興住宅を考えとったけど、イギリスの牧歌的な家もええかもしれん。ターシャ・テューダーのような」
今は亡き有名な園芸家の名を挙げるアリス。だが…
「ターシャは確かアメリカ人じゃなかったか?」
「細かいことはええねん」
「はいはい」
「で、な?ええと思わん?」
「結婚か?」
「そう、俺との結婚」
俺はアリスの言葉にしばらく考え、「そうだな」と返した。
その時、俺は本当にそう思ったのだ。彼の言う理想の結婚生活が本当にあるのならば、それも悪くないと。
アリスは俺の答えを聞くと本当に嬉しそうに笑って「ほんなら、君を応募者第一号にしたるわ」と偉そうに言った。
「ほかに応募者が出てくればいいんだがな」
「ふん。俺は別に君だけかて構わへんけど」
彼は平気な顔をして言う。
それはプロポーズか?と聞きたかったが、彼には全くそのつもりはないだろう。
アリスという男はそんな男で、そんな男だからこそ俺は彼を気に入っていたりするのだ。
「まぁ、他に候補者がいなけりゃ考えてやるよ」
俺が言うと、彼は「ありがとう」と満足そうに笑った。

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