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アイネク

石岡×御手洗 というか 石岡→←←←←←←←御手洗
現在、占星術と斜め屋敷を読み終わってる

「ここまで言えば、もうお分かりですね」

御手洗はゆったりと事件関係者一同、そして警察関係者を見渡しながら言った。
その役者の如き悠然とした態度に誰もが魅入られていた。
いや、彼は今まさに舞台に立つ一人の俳優であったといってもいい。
もちろん彼が主役だ。彼が主役でそして後は全て舞台演出。全てが助演であり、彼を引き立てるための道具に成り下がっていた。
「あの日、あの時、あの場所において…この犯行をなすことができたのは、彼しか居ない。そう、足に怪我を負って車椅子に乗っていた彼以外にはね」
そう言って彼は悪魔的とも言える魅力を持った微笑みを浮かべた。
そんな彼に女性陣が一斉にうっとりとした表情を浮かべるのを尻目に…
「ほかに何かご質問は?……無いようでしたらこれ…で………」
彼の電池がいきなり切れてしまった。
私はさっと血の気が引いていくのを感じた。
一同が怪訝に御手洗を見やる中、彼はぐったりとうなだれて動かなくなってしまっている。
私は慌てて立ち上がると、「すみません、彼は今回の推理の為に昨晩はほとんど寝ていなくて」と言い訳をし、そして御手洗がおかしなことを言わないようにと一同から彼を隠しつつ彼の口元を手で覆った。

 *

あのあとどう繕ったのか自分でも曖昧だが、とりあえず私はなんとか彼を都内に取っていたホテルの部屋に引っ張り込むことに成功したらしい。
彼はあれから一切口を聞いておらず、拗ねたような表情で今は窓際の椅子に座っている。
私はなんだかどっと疲れてしまって、気づけばぼんやりとベッドに座って彼のことを見ていた。
彼の奇天烈な行動をフォローするのにも疲れるが、あぁいう重要な場面でいきなり電池が切れられるともっと疲れるのだということを私は今日はじめて身をもって体感した。
あぁ、全く大変な目にあった。
…なんだかよくは覚えていないけれど。
「御手洗君」
返事なんて無いとわかっていたが、案の定彼はなんの反応も示さなかった。
私は小さくため息をついてテレビの横にある小さな冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出し、またベッドに戻ってそれを開けた。
エビアン。フランスから送られてきた水はキンと冷えてきて、とても美味しい。
身体が求めるままにゴクゴクと半分ほどまでも飲んで、
「うわっ!!!」
驚いた。
いつのまにか、すぐ横に御手洗がいたことに。
「な、な、なんなんだ!驚くじゃないか!」
驚きすぎて水をこぼしてしまった。
手で口元を拭おうとすると、ぬぼっと立っていた御手洗の手が素早く私の手首を掴んだ。
「なんだい?」
見上げると随分と不機嫌そうな顔の御手洗。
眉間にぐっと皺を寄せて目を細めて私を見ている。
「水が飲みたかったのか?それならまだ冷蔵庫に…」
ある。
そう言おうとしたのだが、それは御手洗が半身を折り曲げ私の口の端をベロリと舐めたことによって遮られた。
「は?」
一瞬何をされたのかわからなかったが、だんだん理解が進むにつれ私の顔は青くなったり赤くなったりした…と思う。
「な、な、な、君は何をするんだ!」
そして怒鳴ると、今度は抱きしめられた。
カチンっと私は固まって…あ、と思いだした。
……そうだった。彼は完全におかしくなっているのだった。
こんな時に彼に常識的な態度を要求するのは無駄だし(普段でも…まぁほとんどが無駄に終わるのだが)、説教をしたところで何を言っているのか理解すらしてくれないだろう。
つまり、今の彼は猫だ!犬だ!手乗り文鳥だ!
まぁ、そういうものだと思えばいいのだ。そう自分を納得させると、妙に気持ちが落ち着いて御手洗に抱きしめられている現状も、別に何でもないものに変わった。
今日は随分な働きをしたし、彼は結構頑張っていたし…緊張の糸と共にいろんな糸も一緒に切れてしまったんだろう。
そう思うと、なんだか彼にひどく私は同情的な気分になった。
だから彼の背に手を回し、ぽんぽんとあやすようにしてやった。
「大丈夫かい?御手洗君」
「……」
「まぁなんだ。君は…今日は結構頑張っていたからね」
昨夜遅くに事件現場に入り、それから寝ずに捜査して、朝方関係者に話を聞いて、また調べまわって…つい先程の夕方に解決してみせたのだ。
しかもあんなに複雑怪奇な事件を。
私など事件や人間の関係性を理解するのに必死で、トリックに手をつける余裕すらなかったというのに、彼は私が混乱している間にスパゲティのように絡み合った事件を簡単に紐解いてしまった。
彼の頭は一体どんなふうになっているんだろうと私は感心を通り越して呆れていたのだが……、まぁそう完璧には作られていないということであろう。
しかもこんな参り方をするなんて。
写真にでもとってけば、後でからかってやれるかもしれない…と思いつつ、もし仮にここにカメラがあっても自分が彼の弱った姿など撮影しないであろうことを私は自覚している。
彼にはいつだって自信満々の彼でいて欲しい。
弱った御手洗潔など、御手洗潔ではない。
…いや、そうじゃない。
もしかしたら私は、弱った彼がすがりつく私…というやつに浸っているだけなのかもしれない。
それとも…?
何も言わない私を御手洗は不満に思ったのかもしれない。彼は私の腕の中で身動ぎし、ゆっくり…恐る恐ると顔を上げた。
整った顔立ちにはある種の不安が浮かび上がっている。
「どうした?もう平気か?」
にっこりと微笑んで見せると、彼は「いや」と小さくつぶやいてまた肩口に顔を埋めた。
事件解決から2時間あまり。唖になった彼がようやく喋った一言だ。
彼の声や言葉なんて腐るほど聞いている私だが、今は気持ちが少し引きずられているせいか、彼の一言に胸がぎゅっと引き絞られたような気持ちになった。
思わず彼の身体をきつく抱きしめると、彼はまた身動ぎし「僕は…」と呟いた。
「僕はね、石岡君」
意外とはっきりとした口調だ。
「うん」
「僕はね、君が好きだよ」
「うん」
それは彼が近頃事あるごとに口にするセリフだった。
「僕は君が好きだよ」
「うん」
嫌われているとは思っていないが、しかし面と向かってはっきりと言われると照れるセリフ。
「だから、君が好きだよ」
「うん」
聞く方はかなり照れるのだが、彼は全く平気であるらしく今のように何度も何度も繰り返す。
「君が好きなんだ」
「ありがとう」
くつくつ笑うと、彼は「なんでわかってくれないんだろうね」と悲しげに言った。
「わかっているよ」
「わかってない」
「だから君は僕が好きだって話だろう?」
「そうだけど…」
彼は不満そうにつぶやき、また身体を起こすと、今度は私の顔をじっと見て「君が好きだよ」と同じセリフを繰り返した。
同じセリフ。
なのに。
「え?」
その時になって初めて、私は彼の言っている言葉の意味に気づいた。
「御手洗君、もしかして、君、僕の事が好きだって言った?」
友達という意味じゃなくて、僕の事が好きだって言った?
彼の顔をまじまじと見ながら聞くと、彼はハッとしたような顔をし、それからくしゃっと泣きそうな顔をしてコクンと頷いた。
彼はまた私に抱きついてきたが、私の脳みそは負荷に耐えられずフリーズ状態だったので、その事をほとんど意識出来なかった。
だって…好き?好きって…好きって…。
今のアレは、友人に対するものではなかった。お気に入りとかいう意味でもなかった。
あれは、あれは違う。絶対に違う。
今までとは全く違う…いや、今まで?
もしかして、彼は…
「あー………」
プシュっと頭で音がしたような気がした。
完全に容量オーバーだ。私の頭は負荷に耐え切れず、ブルーバック状態。
それによく考えたら、御手洗だけじゃなくて私だって昨日からずっと駆け回っていたのだ。
そろそろ私の電池も限界というもの。
ばたんと後ろに倒れこむと、御手洗も一緒に倒れこんできた。
重い。
が、それすらもうどうでも良くなって目を閉じた。
事件のせいで徹夜したせいか、ベッドに横になり目を閉じた途端、急激な眠気に襲われた私は「とりあえず、この話は起きてからにしよう」といって、まどろみに身を委ねた。
「君が好きだよ」
飽きもせずに繰り返す彼の重みを心地よく感じながら。

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