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数秘術

石岡×御手洗
現在、占星術と斜め屋敷を読み終わってる

彼は僕の事を変態だ、変わり者だ、奇人だというけれど、僕にとっては彼こそが変態で、変わり者で奇人だと思う。
言い方が悪いなら、神秘と言い換えてもいい。
彼は僕にとっての神秘だ。
そういうとなんだかとてもロマンチックだと思うけれど、ロマンなんてもので腹は膨れないのでやっぱりやめた。

 *

ここしばらく石岡君の顔を見ていないな…と気づいた僕は久しぶりに彼の部屋に出向くことにした。
彼が少し前に『人様の家を訪ねる時には、手土産の一つでも持って行かなきゃ』みたいなことを言っていたから、駅前で『ずんだ餅』まで買ってみた。
まったく!なんて用意周到な僕だろう。
きっと石岡君は感動して、僕に惚れ直してくれるに違いない。
ほくほくとしながら彼の部屋をノックし、返事もまたずに部屋に入った僕は、しかしそこで真顔に戻った。
「なんだい!これは!」
一体いつの間にこの部屋は僕の部屋になってしまったんだ?!
え?言っている意味がわからない?!
つまりこういうことだ。玄関先だというのに、何故か毛布が転がっている。その先にはぐしゃぐしゃの新聞があって、その向こうには洗濯物が山をつくってて、本がちらかってたり、スリッパがひっくり返ったりしている。
「強盗にでもあったのかな」
でも彼の家に何か盗るようなものはあったかな?そんなことを思いながら、散らかったものを蹴散らし中に入ると彼の商売道具である大型のパソコンの前に彼を見つけた。
彼のそれはいわゆる液晶タブレットというやつで、かなり大型だ。
その画面の前に立った彼は、冬だというのにTシャツに短パン姿だった。
思わず「かっこいいなー」と言ってしまうと、石岡君は振り返って「そうだろう!」と言った。
僕がやってきたことには気づいていなかったはずなのに、全く驚いてもいない。
本当にかっこいいなぁ。僕は心からもう一度称賛の声を上げた。
彼は僕のところに姿を見せなかった数日の間、ずっと制作にかかりっきりだったのだろう。
前に見た時よりも少し痩せ、無精髭が伸びていた。髪も寝起きみたいにボサボサだ。
それもまたカッコイイなぁと僕は思ってしまった。
「ねぇ、何を描いているのか見てもいいかい?」
「うーん、今はまだダメだね」
「ダメなのかい?」
「まだ完成じゃないからね。見せられる段階じゃないよ」
「へぇ」
素直に感心したのだが「くだらないプロ意識だと思っているだろう!」と噛み付かれてしまった。
そんなことはまったくないのに。
しょんぼりとしてしまったが、今の彼には僕を慰めてくれる精神的な余裕はないようだ。
フンっと鼻をひとつ鳴らすと創作活動に戻ってしまった。
僕は悲しい気持ちになったが、手に持った『ずんだ餅』を思い出して気を撮り直した。
僕は散らかったテーブルの上を手で一掃きすると、袋の中からずんだ餅を取り出してたべた。
中にはよっつのずんだ餅が入っている。二人で二つずつ食べる予定だったけれど、美味しいので僕が全部食べてしまっても問題ないだろう。
彼は今創作活動に夢中のようだし、お餅なんか食べさせたら喉につまらせてしまうかもしれないからね。
僕は彼のことが好きだから、簡単に死んでもらっては困るのだ。
だからといってもがき苦しんで死んでもらおうなんて事は思っていないから、その点にかんしては安心してもらいたい。

 *

気づいたら眠っていたようだ。
大きくあくびをしながら伸びをして、石岡君を振り返ると…彼は両手をバタバタさせながら踊っていた。
「なんだい!それは!」
なんだかすごく楽しそうじゃないか!
声を上げると、石岡君は振り返ってVサインをした。
「かっこいいなぁ」
「それよりようやく完成したよ!」
「何が?」
「何がってイラストさ!これはとある作家の本のノベルズ版の表紙になる予定なんだよ!」
「へぇ」
「へぇって感動が薄いなぁ。君は友達甲斐がないやつだ!」
「そんなことはないよ」
「じゃぁもっと感動してくれてもいいじゃないか」
「僕があまり感情的な人間じゃないは知っているだろう?」
「そうだったかな?」
石岡君は不思議そうに首を傾げた。
多分、これまでほとんど寝ずに頑張ってきたのと、ようやく創作が終わったことでちょっと変になってるんだとは思うけれど…。
「まぁとにかく、僕はすごく喜んでいるよ。君の創作が上手くいったようで」
「そうかい、それはありがとう」
そういって彼は作品を僕に見せてくれるのかとおもいきや、さっさとパソコンの電源を切ってしまった。
そして「とりあえず僕は寝ることにするよ」と言った。
「君は適当に過ごしていてくれ。もちろん散らかさないように」
散らかさないように?
彼はこの現状をちゃんと把握しているのだろうか。いやそれよりも…。
「客をほうっておくのかい?!」
なんて薄情なやつなんだ!
なんて非常識なんだ!
君はいつだって僕に人付き合いがなっていないっていうけれど、君だって相当じゃないか!
そう声高らかに非難をすると、寝室に足を向けていた彼は僕を振り返り至極もっともなことを聞いたというように頷いた。
「だけどねぇ御手洗君、僕はもう52時間以上眠っていなくて眠くてたまらないんだ」
「だからって僕を放置していい理由にはならないね!」
嘘だ。本当は理由にはなると思う。けれどそんなのは認められないから、理由にはさせてやらないのだ。
僕の言葉に彼は困ったように首を傾げた。
「だったら僕はどうすればいいのだろう」
「どうすれば?それは君自身が考えることだね」
「うーん…まぁとにかく…ちゃんと埋め合わせはさせてもらうつもりだよ。それでもだめ?」
「埋め合わせってなんだい?」
「うーん、それは、うーん…」
「なんなんだい!?言っておくけど、僕は今川焼きやどら焼きじゃぁつられないからね!」
そうやって追い詰めてやると、彼はますます困ったような顔をした。
僕はそんな彼に随分といい気分を味わっていたのだが、

「わかった。起きたら、君が気が済むまでたっぷりと可愛がることにする!」

と力強く言われて、一瞬僕の思考能力はゼロになってしまった。
そして気がつくと、彼は寝室に入っていてパタンと扉が閉じるところだった。
「なんだい可愛がるって?」
全く意味がわからない。
例えば頭を撫でるとか?ハーゲンダッツをくれるとか?それともアンパンマンチョコレートでもくれるとかだろうか?
それはあまり嬉しくないなぁと思うけれど、可愛がるイコールわがままを聞いてくれるという意味にもとれると気がつくと、悪くはない提案に思えた。
いや悪くないどころかとても良い。
願ってもないと言ってもいい。
僕の機嫌はすこぶる良くなった。
彼が起きたらどんなわがままを聞いてもらおうか…そんなことを考えながら、彼が寝室から出てくるまでアフリカのヤオ族の踊りを踊り続けるくらいには。

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