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割と本気の

石岡×御手洗×石岡
現在、占星術と斜め屋敷を読み終わってる

御手洗という男は、とにかく気分にムラのある男だ。
大きな波での躁状態とうつ状態を繰り返すのはもちろんとして、短い周期においてもそれは顕著に現れる。
例えば落語についてのべつ幕なしにしゃべっていたかと思うと、ふと黙りこみノックアウトされたボクサーのようにうなだれて何を話しかけても唖のように黙りこんで一言もしゃべらなくなる。
決して付き合い安い人間とは言えない…が、だからといって友人が少ないわけじゃない。…と、いって頻繁に出入りしているのは私以外には居ない。
ということはつまり、程良く距離をおいて接したい人間…と思われているのかもしれない。

その日、私が御手洗君の所に出向くと、彼は少し躁になっているようだった。
話を聞けば昨夜は徹夜をしていたらしい。
「ちょっと素晴らしい考えを思いついてね、それについての考察をしていたら朝が来ていたってわけさ!」
彼は踊るように両手を広げステップを踏んだ。
「君は知っているかい?夜空が少しずつ朝に侵食される瞬間を!あの黄色!実にすばらしいよね!」
「そう、それは素晴らしいね。君の機嫌麗しいようで僕も嬉しいよ」
こりゃマズイ時にやってきたな…と思いながら、私はこのまま帰ろうかどうしよようか迷った。
だが、満面の笑みを向けられてそれをするほどに私は神経が強くはないので、「コーヒーを入れようか」と言ってみた。
すると彼は「そんなもの!くずかごに捨てておけ!」と言って、私の傍にやってくると「抱き!」と口にして僕に抱きついてきた。
「ちょ…おいおい、御手洗君?」
唖然とする私にも彼はお構いなしだ。
ぐりぐりと頭を肩口に押し付けてくる。
私と彼は身長も体格もほとんど変わらないが、ぐいぐいと体を押し付けられて私はたたらを踏んでしまった。
そしてソファに座り込むと彼は向かい合わせに私の足に座った。
おいおい、なんだこのバカップルみたいな姿勢は…。
呆れていると、彼は私の首にしがみつき直し、「今日という一日のはじめに君に会えて僕はとても幸せだ!」と耳元で叫んだ。
御手洗の声で私の繊細な耳はキーーンとした。
「君は?君はどうだい?幸せかい?」
「え、あ、まぁ幸せじゃないかな。とりあえず、もう少し声のボリュームを落としてくれれば、もっと幸せかな」
「そうかい!それは重畳だね!」
彼は大声でそういって体を離すと満面の笑みを見せた。
躁状態の時の彼はよく笑う。面白くもない冗談にケタケタ笑い、自分の頭脳の素晴らしさに酔って笑い、何も無いのに笑ってる。
だけど、この時の笑みはいつものものとは少し違ったように思える。
何がどういう風に違うとは一言では言えないのだが、なんだか違った。
まぁよくわからないのだが。
凡人の頭ではよくわからないのだが。
よって全く気にもしないのだが。
「聞いてくれたまえ、石岡君」
「ん?なんだい?御手洗君」
「僕はね、君に告白をしようとおもう」
「告白?」
そりゃ穏やかじゃない。
一体どんな犯罪を告白をされるのかとドキドキしていると、御手洗が手を伸ばして私の胸に触れた。
「心臓がドキドキしているね!」
「そりゃ、するさ」
「それは期待してくれているってことでいいのかい?」
「期待?期待はわからないが、緊張はしているね」
「そうかい!それは応えないといけないね」
まぁどうでもいいが、そろそろ重いので降りてくれないだろうかと考えていると、「実はね」と御手洗は罪の告白よろしく声を潜めて口を開いた。
「君は知らなかったかもしれないが、僕は君が好きなんだ」
「………」
私はなんと反応しようもなく、とりあえず「へぇ。」と言った。
それは御手洗の予想した反応とは違ったようで、彼はあれっというように首をかしげた。
「…僕は君に好きだといったんだけど」
そして恐る恐るというようにもう一度言った。
「うん、それは聞いたよ」
「それで?」
「それで?…まぁ、嫌われているとは思ってなかったから良かったんじゃないかな」
ついでに言えば、僕だって彼のことは好きだ。
嫌いだったらわざわざ彼の住処に暇さえあれば足を運ぶことはしないだろう。
…いや、ものすごく物好きなら、嫌いな人間への嫌がらせをしに毎日足を運ぶ…という人間もいるかもしれないが、残念ながら僕はその手の人間じゃない。
「まぁとにかく」
「なんだい?」
「そろそろどいてくれないか?君はその分じゃ昨夜はお風呂にだって入っていないだろう」
「え、うん。そういえば入っていないかな」
「よし、ならば風呂の準備をしよう。それと夕べは何か食べたのかい?…いや、いいどうせ食べてはいないだろう。お湯を入れる間に何か作るから…」
そういうと彼は僕の上から降りて、ソファにちょこんと座った。
そして不満そうな顔で僕を見る。
「なんだい」
折角私が気を回してやっているというのに、なんでそんな不満な顔をするのだ。
私の顔が不機嫌に歪んだのが、人の機嫌には鈍感な彼にも伝わったらしい。御手洗は犬が水を切るように首をぶるぶると振った。
そこまで首を振らなくてもいいだろうに。
彼は頭がくらくらしたのかソファの背に頭をのっけてぐったりとした。
どうやら一時の躁状態が去ってしまったらしい。
やれやれと私は首を振り(もちろん犬のように…ではない)、「御手洗君、寝るのはご飯を食べて、お風呂に入ってからにしてくれ」と声をかけた。

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