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君には難しすぎる話

桂島×吉祥院
読み返さない 微妙

吉祥院先輩はぼくの事をチビで短小などというが、自分ではそうは思っていない。
いや吉祥院先輩(185もある)に比べればチビと言われて仕方がないかもしれないが、これでも日本人男性の平均身長くらいはある。短小については…まぁ他人と比べるものでもないのでなんとも言えないが…付き合っていた彼女(残念ながら過去形だ)に小さいなんて言われた事はないしまず普通だと思う(彼氏が短小だとして、それを彼女が当人に指摘するとは思えないが)。
まぁとにかくぼくは吉祥院先輩が言うほどちびではないし、それに…先輩が言うほど無能でもない…はずだ。うん、一応これでも同期の中では順調に出世しているのだ。
ただもちろんこれは世間一般を基準にした話で、吉祥院先輩に比べたらちびだし短小(見たことはないが体格を見比べる限り)かもしれないし、無能である…と認めたくはないが認めざるを得ない。
ただ生活能力だけを比べるなら、完全にぼくが彼を凌駕している。
彼は家事についてはてんでだめで、この間なんか玄関のたたきにカップ麺の空き殻が転がっていたくらいだ。まったくぼくが定期的に訪ねていないと、彼の部屋はあっという間にゴミ屋敷に変わっているはずだ。
ついでに性格がまた…なんというか独特で、ぼくはぼく以外の人間が彼と親しく交流しているのを見たことがない。
いや、何も友人がいないというのではない。彼はあのルックスだ。それに唸るほど金を持っている。近寄ってくる人間など腐るほどいるし、学生時代の友人がいないでもないらしい。
だが彼の性格のなせるわざか…彼と“親しく”している人間はぼく一人だ。
ぼくとしては、もう一人くらい犠牲者を選んでもらって、同病相憐れみたいところであるのだが…。

 ※

「おい!桂島!いつまで片付けてるんだ!」
「はいはい、あと少しですから待っててくださいよ」
「それにさっきからブツブツ言いやがって、気持ちが悪い!そんなだからもてないんだ」
おや、口に出ていたのか。
聞かれていたかと吉祥院先輩を振りかえるが、話の内容までを聞かれていた様子ではない。
「別にもてないわけじゃないですから、ご心配なく」
内心ほっとしながら言い返すと、吉祥院先輩は形のよい眉をひょいと上げて驚いたような顔を作った。
「冗談はよせよ、桂島。お前がモテるわけないだろうチビで短小のくせに」
また言われた。
ぼくは雑誌を本棚に入れながら「本当ですよ」と言ってやった。
「交通課の子とちょっといい感じなんです」
これは本当だ。
思わず顔がデレッとするのも仕方がない。
「まぁ美人って美人じゃないんですけど、事件で詰めて午前様なんかの時によく差し入れをくれるんですよ」
「そんなの誰にもだろう」
「ま、そうなんですけど、俺にはちょっと雰囲気違うっていうかぁ、そんなのわかるじゃないですか」
上目に見つめる眼差しとか、はにかんだ笑顔とか…。
「近頃、同僚にもからかわれてるんですよね~。とうとうお前にも春が来たか…なんて…いたっ!」
突然後頭部に何かが投げつけられた。
振り返ると怒りの形相をした先輩が、手を前に出していた。
どうやら彼がなにかを投げたらしい。
なにを?
それはもちろん俺の足元に落ちている“CDケース”をだろう。
「なにをするんですか!」
「うるせぇ!桂島のくせにくだらねぇこと話してるからだろうが!」
「くだらないって…後輩の春くらい喜んでくれても…」
「うるさい!チビで短小の癖に俺様に意見するな!」
これには少しムッとした。
なんなんだ、せっかく人が休日を潰してまで掃除にきてやってるというのに…!
ぼくは文句をいってやろうと口を開きかけたが……やめた。
彼は昔からぼくが自分以外に興味を持つのをすごくいやがるのを思い出したからだ。
お気に入りのおもちゃを取られる子供の気持ちなのだろうか。
可愛いところもある。
まぁぼくはおもちゃではなく、彼のものでもないのだが。
それでもなんだか胸がくすぐったい。
「なんだ急ににやにやしやがって気持ちが悪い!」
「はいはい」
「おい、桂島!流すな!俺様は本気で言ってるんだぞ!おい!」
吉祥院先輩は地団駄を踏んだ。
今時珍しい腹の立て方をする人だ。
呆れると同時に、また可愛いと思ってしまった。
身長が180もある男を…だ。自分の正気を疑ってしまう。
だが近頃流行りのギャップ萌えという奴なのかもしれない。
「なんだよ!おい!無視をするなんて生意気だぞ!チビで短小のくせに!」
「なんですか、先輩、お腹でも空いたんですか?」
「お前、俺を馬鹿にしているだろう!!!」
「あーもぅ、じゃぁなんなんですか。後少しで掃除終わりますから、もう少し待っててください」
そう言うと彼は、馬鹿だのチビだの短小だの言いながらプリプリ怒って向こうの部屋に戻ってしまった。

 *

15分ほどがたち、片付けを終えた後リビングに戻ると、吉祥院先輩は一人でビールを飲んでいた。
雰囲気からしてどうやらまだ機嫌が悪いらしい。
このまま帰ってしまいたい欲求に駆られるが…まさか黙って帰るわけにもいかない。
「先輩、掃除おわりましたよー」
声を掛けると、振り返った先輩にギロリと睨まれる。
「な、なんですかぁ」
「お前、ちょっとそこに座れ」
そういって吉祥院先輩が指さしたのは、ラグの上だった。
「はぁ…」
仕方なくそちらに腰を降ろすと、すかさず「正座!」と言われた。
…なにが悲しくて他人の家を掃除してやった挙句正座なんだ。そう思いつつも、此処で逆らうと先輩がヒステリーを起こしそうなので、おとなしく正座をする。
「で、反省したのかよ、お前」
「反省?何がですか?」
「何がって、さっきの話だよ!さっきの!」
「さっき…ですか?」
とっさに何の話かわからずポカンとしていると、先輩の拳がポカッと落ちてきた。
「何をぼうっとしてるんだ!だからお前はモテないんだ!」
キーっとなった先輩のセリフで、あぁ…と納得した。
「婦人警官の話ですか?」
「それ以外になんの話があるんだよ!」
「はぁ…」
今日は虫の居所が悪いらしい。
これじゃ、夜は寿司とってやるぞ!なんてセリフもきっと流れてしまったんだろう。
まぁ最初からあまり期待はしていなかったが…。
「何、ため息ついてるんだよ!桂島のくせに生意気だぞ!」
「は…すみません」
「大体、お前はチビで短小で無能なんだから!女にもてるわけがねぇってなんでわからねぇんだよ!だからすぐに騙されるんだよ!俺が何度もいってるだろう?」
「な、別に騙されたことなんて…」
「あるじゃねぇか!お前、俺が知らないとでも思ってるの?お前が大学の時つきあってた美…「わーわーわー!!!」」
「な、なんで知ってるんですか!」
「ふふん、俺様が知らないことなんて無いんだよ!」
自慢げに腕を組み、鼻高々といった様子の吉祥院先輩に俺はげっそりとする。
しかし、本当にどこから情報を仕入れてきたのか…。吉祥院先輩恐るべし…である。
「わかってんのか?!」
「でも…今回は大丈夫ですよ!だって、すっごく良い人なんですから!」
「お前の良い人ってのは信用ならねぇんだよ!」
「なんでそんなこというんですか~」
「いうんですか~じゃねぇよ、この馬鹿!お前なんか絶対にあて馬にされてるんだからな!調子にのってんじゃねぇぞ」
「あ、あて馬って…!」
「間違いない!この吉祥院慶彦の冴えわたる推理によると、絶対に間違いないね!」
「そんな…ありえないですよ!」
…といいつつ…実は、吉祥院先輩の言葉を聞いて思い出したことがある。
それは直接聞いた話ではないのだが、“彼女、こないだまでXXと仲良かったじゃん、なんでまた”みたいなうわさ話。
あんまり気にしてはなかったが、こうなると俄然気になる…というか、あて馬説が有力に聞こえてきた。
「どうだ、やっぱり当たりだろう!」
「ち、違いますよ!」
そう言いつつ、自分の声が先程よりも随分弱気になっているのがわかった。
自分でわかるくらいだから、吉祥院先輩だって当然の如く気づいて得意そうな顔をしている。
「ふん、わかったなら感謝しろよ!拝んでくれてもいいぜ、頭を床に擦りつけて!」
「そ、そんなことしませんよ!」
「ならオムライスつくれ、俺はお腹がすいてるんだよ!」
「もう…なんなんですか」
がっくりと肩が落ちる俺に比べ、先輩は実に楽しそうだ。
「まったくお前は俺の世話だけみてりゃいいんだよ。無駄な色気なんか出さずにさぁ」
「っていうか、世話見られている自覚あったんですか…」
それはちょっと驚きだとぽつりと言うと、「あぁ?」と凄まれて慌てて「すんません!」と頭を下げた。
「とにかくオムライスつくれよ、オムライスー。ちょーおなかすいたんですけどー…」
「なんなんですかぁ…その少し前の女子高生みたいな喋り方…」
「ほっとけ!さっさとつくれ!オムライス製造マシーン!」
ひどい言い草だ…。
しかし、先輩の機嫌は治ったようだし…まぁいいとしよう。
…というか、俺はまた失恋なのか…?
なんというか…先輩と知り合ってからというもの、女運河極端に悪いような気がする。
100歩譲って…チビで短小…だとしても…顔はそう…悪くはないと思うんだけどなぁ…。
もちろん、吉祥院先輩の足元にも及ばない。けど、ぼくだって“かっこいい”とか言われたことだってあるんだ。…ま…先輩と一緒にいるようになってからは一度もないけれど…。
「また何ブツブツ言ってんだよ!さっさと作れよ!オムライス!言っとくけど、スペインの国旗つけねぇとマジ許さねぇからな!」
「はぁ?スペインの国旗ってなんか難しい国章みたいなのついてませんでしたか?」
「いいから作れってんだよ!」
「はいはい…」
ほんと人使い荒い…。

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