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だってぼくらは死地で生きてる

にょドイツ 時代不明
イギリスが初めてにょドイツと対面

パーティ会場の入り口あたりがにわかにざわついた。
婦人の相手をしていたホスト国であるイギリスは、彼女に一言断りざわめきを振り返った。だが、ここからでは人が邪魔で騒ぎの中心を見渡す事ができない。
騒ぎの元に近づこうとしたイギリスだが、ふと同じように人混みを見透かそうとしているフランスを見つけrると彼に近づいた。
波打つ長めの髪を赤いリボンで後にまとめたフランスは、まるで育ちのいい貴族のぼんぼんのようだ。
つい先ほどまで麗しき女性たちに囲まれていたフランスは、イギリスに気付くとニコリと微笑んで軽く手を上げた。
そして、
「よぅ、イギリス。なかなか盛況じゃないか。料理も旨い。…それで、これはうちのコックを雇ったのか?」
小憎らしいことをいう。
だがそれは真実でもあった。
イギリスは苦々しく頷き、すぐに「あの騒ぎは」と話を転じた。
「プロイセンが来てる」
「プロイセン?」
プロイセンが来たくらいで何故騒ぎになるのかわからない。確かにプロイセンは見た目だけはいい男だが、人を寄せ付けないところがある。
つまり注目は浴びるが騒がれない男、それがプロイセンなのだ。
首を傾ぐイギリスにフランスは「まぁ見てみろよ」と言って、イギリスの腕を引き自分が立っていた位置に立たせた。
するとそこからは騒ぎの中心が見えた。
着飾った人々の中に頭ひとつ飛び出ているのは、白金の髪の男。
確かにプロイセンがいる。
しかし…
「あぁ?」
何も変わったところはないじゃないかと口を開きかけたイギリスの顎が落ちた。
「お、おい」
「あ、もしかしてイギリスは初めてだっけ?“彼女”見るの」
によによと笑う男。その視線を感じていながら、イギリスは“彼女”から視線を離すことが出来なかった。
“彼女”は、イギリスがこれまで見てきた女性の中で、間違いなく一番の女だった。
薄いピンクのドレスは少し時代遅れともとれる質素なもの。
しかしそれを補って余りある素材の良さ。
小さな頭に長めの手足、白い肌にチューリップのような唇、ほんのり色づいた頬…とその頬に影を落とす長いまつげ、澄んだ青い瞳は好戦的にすら見える強い光を放っている。もちろん顔の造形は言うまでもなく整っている。
思わず喉がなるような女とはまさに彼女の事だろう。
彼女を前にしたらヴィーナスだって、裸足で逃げ出すに違いない。
見惚れるイギリスを見て、フランスは気持ちの悪い笑みを深めた。
「驚いたか?」
「…あ、あぁ」
返事をするイギリスの声はかすれていた。
それに気づいて咳をするイギリス。しかし赤くそまった頬が如実に彼の内心を映し出している。彼は完全に彼女に呑まれていた。
「あいつの女…なのか?」
「どう思う?」
「どうって…」
エスコートをしているところを見れば、彼の連れであることは間違いない。
「…とうとう出来たのか、本命。そういや…近頃入れ込んでいるやつがいるとかいってたか」
それは当人(プロイセン)からの情報ではなく、主に隣に立つ男からの情報だ。
「そうそう、あのプーちゃんがメロッメロの相手」
ドロドロに甘やかしているという相手。
どんな相手だろうかと気にならなかったといえば嘘になるが、わざわざ顔を見るほどの興味はわかなかった。なんとなく美人なんだろう(プロイセンは面食いな気がする)とは思っていたが、これはイギリスの予想以上だった。
しかも腹の立つことに、二人が並んでいる姿はとても絵になっている。
もっとも王子とお姫様というには男は剣呑だし、女のほうはあまりに美しすぎる。普通王子ってのはもっと柔らかな表情をしているものだし、お姫様ってものはちょっと脳みそが足りない感じがするものだ。
「見てみろよ、プーちゃんの緩みきった顔」
「…の割りに隙がねぇ」
「そりゃぁ、あんだけのいい女だ。少しでも隙を見せたらすぐに他の男が声をかけるだろうからなぁ」
「お前とかな」
「いやいや、お前とかだろ」
嫌味はあっさりと切り返され、イギリスは不本意にも言葉に詰まった。
「なぁに?惚れちゃった?」
「な、な、んなわけねぇだろうが!!」
「だぁよねぇ~、まさか、イギリスが“人の”に手を出すなんてことはしねぇよなぁ~?」
「あ、あ、当たり前だろ!!!」
「いやぁ~それにしてもプロイセンにはもったいないとおもわねぇ?」
「う…そ、それはまぁ…そう…かもしれねぇけど」
「いや、絶対もったいねぇって。彼女には絶対俺のような男のほうが似合うね」
「は、はぁ?なにいってんだ?」
ぎょっとしてイギリスが振り返ると、フランスはいつの間に手にしていたのかバラの花の鼻の香りを嗅いでいた。
「おい、冗談だよな」
「ん?何が」
「お前、あの戦争狂の女に手を出すってのか?」
正気じゃない。
そんな目を向けるイギリスにフランスは口角を上げる。
「どうしてだ?いい女なら欲しくなる。そりゃお前もだろう?」
「…馬鹿を言うな。俺はそこまで飢えちゃいねぇよ」
それがプロイセンの女となればなおさらだ。
彼女に興味が無いといえば嘘になるし惜しいとも思うが、国民の命をかけるほどじゃない。
彼とおっぱじめる気はさらさらない。
だがフランスはそうは思わないのか…
「そっちこそ“馬鹿を言うな”よ。お前、美味そうだと思えば節操なしじゃないか、俺のことは言えないはずだぜ?」
…いや、彼はイギリスを挑発したいくてたまらないらしい。
「あぁ?」
一体何のことを言っているのかイギリスには見に覚えがなかった。
イギリスは…まぁ眉毛はあれだが…女に苦労したことはない。節操なしに女を漁ったことなど一度としてないと言い切れる。
イギリスは文句をいってやろうと口を開きかけたが…

「まぁた喧嘩かよ、飽きねぇな」

タイミング良く邪魔が入った。
相手は言わずもがな。先ほどまで話題にのぼっていた人物の片割れ、後ろにはイギリスの心を一瞬で盗み取った女性もしっかりとついている。
「よぉ、プーちゃん」
「…」
軽く手を挙げるフランスと、その横でチラリとプロイセンの後ろに視線をやったイギリス。
“彼女”と目があった瞬間、チカッと音をしたのをイギリスはたしかに聞いた。
じっと見つめる…が、それはすぐにプロイセンによって遮られる。
彼の方を見ると、彼はなんとも好戦的な目でイギリスを見ていた。
「…別にとって食いやしねぇぞ」
「ハッ、どうだかな、お前の悪食は有名だからな」
「またか…」
イギリスはチッと舌打ちをする。
「俺がいつ人の女に手を出したっていうんだ?」
よってたかって人を色狂いみたいに言いやがって。
悪態をつくイギリスを見てプロイセンは目を丸くし、フランスはクククッと愉快そうに肩を震わせた。
「じゃぁイギリス、お前、彼女には手を出さないってちかえるか?」
「は、はぁ?なんでそんな話になんだよ!」
「さっきの言葉じゃぁ、そういうことになんない?それにプーちゃんもイギリスが誓ってくれるならこれほど力強いことはないよねぇ」
「ん…?あ、あぁ」
なるほど。
プロイセンは小さくつぶやき、先ほどとは違う種類の笑みを見せた。
「確かにそうだな、お前がそう誓えるなら頼もしいなぁ。彼女ともぜひとも仲良くしてやって欲しいところだぜ」
ニヤニヤとするプロイセン。
何か…はめられているような気がする。
ニヨニヨとしたフランスの笑いも、プロイセンのおもしろがるような目の光も…。
「ま、俺は手を出すけどね~」
「おい、フランス、てめぇいい加減にしねぇとその髭引っこ抜くぞ」
「まぁまぁ、それよりどうよ、イギリス」
フランスに促されイギリスはよくわからぬままに「わかったよ」と了承する。
とにかく誓えば、接触は自由ってことだろう。それにプロイセンよりも自分の方が絶対にいい男だ。口説かないとはいったが、向こうが揺れる分は知ったことではない。
そう思ったイギリスだったが…

「紹介するぜ、イギリス。こっちが俺達の希望、ドイツだ」

そう紹介された途端、ぽかんと口を開けてしまった。
そんな…人じゃなかったのか?
彼女じゃなかったのか?
聞く前に、彼らの言った“悪食”の意味を理解し、そして…

「誓ったんだから、手ぇだすんじゃねぇぞ」

まんまと不可侵条約を結ばれた。
フランスが腹を抱えて笑う隣でイギリスは悔しそうに顔を歪めたが、ドイツと紹介された彼女が不思議そうにこちらに見ているのに気づくと、紳士としての最後の矜持でなんとか微笑を浮かべてみせた。

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